「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」と思われやすいのだが。
最近読んだサッカー本のなかで、興奮しながら読み切った作品。
『なぜボランチはムダなパスを出すのか?』
まず、タイトルがいい。
サッカーを観る者がうすうす感じている「ぼんやりした疑問」に答えてくれる内容である。
つまり「一見ムダに見えるような1本のパスに、じつはものすごく意味があるとしたら・・・?」ということを解き明かしてくれるのである。
この本を読んで、まだまだ自分はサッカーを分かっていなかったな、と痛感した。
そこに尽きる。
そして、ますます「生でサッカー観たい欲」が高まった。
とくにこの本は、日本を代表するボランチである遠藤保仁について、本人ではなく、同じピッチでプレーをしたことのあるストライカー(播戸さん)やサイドバック(駒野)からの証言をもとに構成していき、結果的に「遠藤の本当の凄さ」が浮き彫りになっていくという、まるで良質のドキュメンタリー映画をみているかのような面白さがある。
なのでこの本を読んだ影響で、ますます遠藤のプレーに注目したくなる。今のガンバの状況は最悪ではあるが、それでもやはり万博競技場へ行きたい、遠藤を出来るだけ観たい、となってくる。
「ボランチは動きすぎてはいけない、全力で走りすぎない」
「わざと遅いパスを出すべきときがある」
「“攻め”のバックパス、というのがある」
「サイドチェンジが有効であるとは限らない」
といったことが自分にとって目からウロコとなったポイントである。もちろん正解というものはないのだが、今まで観ていたサッカーを、さらに別の角度から観てみようと思わせる内容に満ちていて、いやはやサッカーって奥深いよな、とつくづく感じる。
ちなみにこの本では遠藤のほかにバルサのシャビについてもフィーチャーしている。で、今日はたまたまチャンピオンズリーグの試合でひさしぶりにバルセロナの試合をちょっと観る機会があった。
普段から彼らの試合を観ている人にとっては「常識でしょ」と思われるかもしれないが、あらためてシャビに注目しつづけて観ていると、この本でも語られているように、シャビが首をふって周囲を確認する頻度の高さに正直驚いた。
ボールが自分のところに来ないとき、そしてパスを受ける直前でももちろん、シャビはとにかく周囲を見まくる。気持ち悪いぐらいに頭を動かしている。
この本から引用すると、「普通の選手は自分がパスを受けたときに、相手に取られないようにするために首を振る。しかし、シャビはそのはるか上をいく。自分の周囲の数メートルだけでなく、ピッチ全体を見渡し、見方・相手の位置関係を“最新情報”に逐一アップデートしているのだ。(中略)だから、まるで“1秒先の未来”が見えていたかのようなパスを出せるのだ」ということだ。この「ピッチ上の情報をアップデートしていく」という捉え方が面白いと思う。実際に今日観たシャビのプレーぶりは、この文章通り、「そこまで首を振らなくても別にいいんじゃないか」と思うぐらいにキョロキョロしていた。
バルセロナのサッカーを観るときは、ついついその華麗なパス回しに集中したくなるが、ぜひ今度はグッとガマンしてシャビの首の振り方だけを見続けてみてほしい。
逆にいうと、「ではなぜ、他の選手も同じぐらい周りを見ようとしないのか?」ということだ。シャビのテクニックは簡単にマネできそうにないだろうけど、シャビと同じぐらい首を振って周りを見ることは、実践できそうな気もするのだがどうだろうか・・・って、ぜんぜんサッカーをプレーしない私が言うのもなんだが。
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