日本×モロッコ、そして宮本恒靖の解説について
あらためてブログに書こうと思うと、なかなか難しい気分になってくる。
さんざん、ニュースもネットも、もはや言い尽くされている感覚にとらわれるので、あえてここで私なんぞがあらためて書くことはあるのかどうか。
まず思ったのは、ニューカッスルのスタジアムのことだ。
セント・ジェームズ・パークというスタジアムで日本代表が試合をしたことが、とてもグッときた・・・多くのサッカーファンにこのスタジアムの情景が届けられたことに。
だいいち、普段ニューカッスル・ユナイテッドが試合をする場合は、いつも超満員でチケット入手も困難と伝え聞く。それが五輪だとこのスタジアムの中に入って試合を堪能できるなんて、とてもうらやましく思えた。もっと羨ましいのはU-23の選手たちだ。ここで試合ができたわけだから。どうかこの芝の感触、そして純粋にサッカーが好きなニューカッスルの人々(たぶん、観た感じけっこう客席は入っていたと思う)から投げかけられた歓声のことを、生涯忘れないでいてほしいと思う(そしてこの日のノルウェー人レフェリーの『流しっぷり』も、まさにイングランドサッカーっぽく感じた)。
そんななか、劇的な永井のゴールでモロッコから勝ちを収めた試合となったわけだが、ゲーム開始から重量級のフォワードめがけて縦に早いサッカーをしかけてきたあたり、これはスペインよりも手強い感じがあった。しかも相手キーパーが調子良く、どうなるやら・・・とハラハラしつつも、どこかでこのチームは大崩れしない気分もしていた。たぶんその要因のひとつは、この日の解説を務めた宮本恒靖のおかげではないかという気がしてきた。
とにかく宮本は、現役時代のピッチ上でも、そして解説者としても冷静沈着で、選手だけじゃなくテレビの前のサッカーファンをも落ち着かせてくれる(笑)。つまり、これこそがやはり、ディフェンスリーダーとして代表を率いてきた人のもつ「実感」みたいなものなのだなと思った。や、だからといって同じDFとして松木安太郎の解説を批判するつもりもない(笑)。あれはあれで「芸」として捉えておきたいし、松木安太郎はなんだかんだ、一般視聴者を意識して、選手名を呼ぶときに背番号を一緒に合わせて語ろうとする努力(『今のドリブルいいですねー、17番清武!』みたいな)が伺えたりして、サッカーの熱情をストレートに伝えようとしている姿勢が私は嫌いじゃない。
ともあれ、宮本の解説のおかげで、冷静な気分で「そうか、いまDFラインが押し込められているのか」となり、やがて宮本が「鈴木大輔はアムラバトの重さと強さに慣れてきた」ということで、こちらも「そ、そうか。それならいいぞ」となっていく。宮本が「ボランチはもっと前線に出てサポートを」と言えば、あ、これは扇原をやんわりと批判しているのだなと思えたし、コーナーキックのチャンスのときに宮本が「ニアサイドが空いている」といえば、その空いたニアに吉田マヤが飛び込んで惜しいシーンを作ったりと、まるで宮本恒靖が神様のようにつぶやき続けながら、選手およびテレビ視聴者の双方が、その試合の流れを冷静に租借し、みんなでボールを追いかけているかのようだった。毎回私はブログで書いているかもしれないが、とにかく宮本解説は絶妙なのである。ディフェンス目線で、リアルな指摘がことごとく経験に裏打ちされていて説得力がある。さすがである。やはりこういう選手がナショナルチームのディフェンスを統率しておいてほしいと思った。自分はサッカー選手ではないにせよ。
と同時に、たぶん宮本は、そうした解説を通して、サッカー少年少女たちに「守備の面白さと奥深さ」を伝えようとしているのかな、とも思えてくる。ついぞサッカーは前のほうのポジションが華かもしれないが、ここぞというところの「守りの愉しさ」を宮本は特に若いプレーヤー向けに語っている気もする。
というわけで、終始宮本のおかげで、ハラハラしつつもどこかで確信をもって冷静に見続けることができた試合となった。スペイン戦のこともあり相手から警戒されていたであろう永井をあえて2列目に配置しておいて、最初から飛ばすのではなく後半ここぞということでワントップに配置し「永井シフト」にして、案の定そこで先制点を奪ったらすぐに杉本健勇を入れてまた永井を2列目に戻すという、手堅い采配。そして忘れてはならないのは権田をはじめとするディフェンス陣の奮闘。なんだかんだこのチームは権田なのである。
なにより試合後のインタビューで吉田マヤが「国内の(Jリーグの)レベルは低くないと示せた」と素晴らしいコメント(フジテレビのみがこの生放送のインタビューを流していた)。
私が言う資格はほとんどないのだが、やはりもっとサッカーファンにはJリーグを観て欲しいし、スカパーだけじゃなくて地上波でもっとJリーグの映像が流れることを望みたい。案外近いところに素晴らしいサッカーが街中に転がっている、のだ。
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