今年3度目の美作へ、湯郷ベル×浦和レッズレディースの試合。
いつ来てもこの美作ラグビー・サッカー場ののどかな雰囲気は、落ち着く。
今月はなでしこリーグを毎週のように観る予定となっているが、その予定を決めた頃、まさかこの夏に「ヤングなでしこ」がこういうブレイクをするとは想像だにしていなかったわけで。
猶本、柴田、池田の3人がスタメンで、監督が彼女たちのこの夏のブレイクを意識したのかどうか分からないが、多くの観客は楽しめた布陣だったかと思う。
そして藤田のぞみはケガの回復具合が心配されたが、ベンチ入りをはたし、試合終了直前に出場して1-0のゲームを抑えにいった。ひとまず元気そうでなにより。
私を湯郷まで乗せてくれたベル・サポーター、M・フィオリオ氏がため息まじりに見守るなか、この日の湯郷はいまいちパスの通りが悪かったように思う。そしてレッズは手堅い守備からの攻勢が効いていた。
キックオフ時間がいつもより早かったのもあり、試合終了後に時間があったので、今回は「出待ち」をしてみようとなった。
思えばフィオリオ氏とは昔、F1の季節に鈴鹿で出待ちをひたすらしてきたわけで、なんだか懐かしいよなぁこの感じ、と言い合った。
もちろん、私は藤田のぞみに会えればそれはそれで嬉しいのだが、しかし長い目で考えて、いつだってこういう状況はあるわけなので、今日はひとまず「この湯郷のスタジアムで出待ちをするというのはどういうことか」、つまりケーススタディとして「なでしこリーグにおける出待ち」を体験してみることが重要であり、「会えたらラッキー」程度で、ひとまず中央ゲート付近でたくさんのファンとともに突っ立っていた。
で、やはりヤングなでしこブームのせいか、浦和の選手を目当てにしていた人が多いようで、途中で係員のおじさんが「浦和は、南側の駐車場付近に出て行きますんで」と(わざわざ)アナウンスしてくれた。なので一気に人が南側に向かっていった。
ベルサポのフィオリオ氏も、この日は浦和の選手を観たかったようなので、我々もその人の流れについていくべきか迷ったが、しかしここでフィオリオ氏は「でも、動かないほうがいいかもしれない」と直感的に言ってきた。このあたり、かつての鈴鹿での出待ちの「カン」みたいなものを感じ、その予感を私も共有できたので、確かにもはや中央出口に留まっておこうか、となった。繰り返すが、今回は「ケーススタディ」みたいなものなのだ。
中央出口は人が一気に減り、それでも何人かはベルの関係者たちを待っていた。
結果的に、たしかに浦和の選手はスタジアムの裏口から南の駐車場へ出て行ったようであった。しかしたまに、中央出口から山郷姐さんがフラフラ出てきたり、吉良選手や柴田選手といった浦和の主力2人が重そうな用具一式を抱えて中央出口から出てきたりして、とっさに私は彼女らに「おつかれさまです!!」と声をかけることができた。用具を両手にかかえていたのでサインを頂くのはやめておこうと思い、そのまま見送ったが、その後やはり多くの人がサインを求めて囲み、それに最後まで丁寧に応じていた姿にアタマが下がる思いだった。
浦和の選手たちは我々からは見えない南の駐車場へつぎつぎバスに乗り込んでいたようで、チームのロゴ入りバスが走り去っていった(なぜ湯郷にチームバスが? このまま空港へ向かって、バスだけ回送か? あるいはバスのまま帰るのか? 謎がひとつ増えた)。
そんなわけで、ゆるやかに出待ちの時間を楽しんでいた。そして気がついたら中央入口の一番近いところに我々は立っていて、16時ぐらいまで立っていようかなどと話をしていた。
すると、係員のおじさんがおもむろに私の脇にあった長机をセットし直したかと思うと、いきなり
「特別に宮間選手のサイン会を行います」
とアナウンスした。
「え?マジで?」となった、その私の目の前の長机に、
宮間あやが、あの宮間が、入り口からやってきて、座った。
そして自然に私がポールポジションの位置になり、フィオリオ氏がその後ろにいて、そこから列が作られていった(笑)。
こういう運の良さはなんなんだろうか。
ていうかフィオリオ氏、ナイス判断だったわけだ。
トップバッターの私が浦和のタオルマフラーを身につけていたことが非常に申し訳ないが、私は極力動揺をみせずに、さも前からずっとサインしてもらうべく準備してきたかのように、スムーズに「なでしこ仕様トートバッグ」と銀色のマーカーを取り出して、宮間あやの目の前に差し出した。
彼女は持っていた黒のマジックを置いて、私のマーカーを受け取ってサインを書きはじめたが、あれ、色が・・・と思ってよくみると、インクがうまく出ず、まったく使い物にならないペンであった。
「!! あっ!! すいません~~!!」
これまで、いろいろな「出待ち」を体験してきた私としては、もっともあってはならない痛恨のミスである。よりによってこんな状況で、使えないペンを持ってきていたとは!!
でも宮間あやは、
まさにサッカーの試合のごとく、
顔色をかえることなく、
「あ、いいですよ」といって、
すみやかにズボンのポケットから、同じような銀色のマーカーを取り出して、サラサラとサイン。
いやはや。
なでしこの主将、バロンドール候補の選手に、ペンを替えさせてしまった・・・サイン書き直しさせてしまった・・・・
そんなわけで、はじめて湯郷でやった「出待ち」は、なかなかディープな体験であった。
宮間選手にはひたすら感謝。
そしてそのあと、鷺温泉館にいってダラダラ~っと温泉につかり、サッパリした気分で湯郷の温泉街を歩いて、何か食べようとなって入ったとある飲食店で、気がついたら隣の座敷ではベルの某選手たちが食事中だったりと、なんだかもう湯郷の街のこの感覚、この距離感の近さは本当に衝撃的であります。Jリーグのいう「百年構想」って、もちろん直接的にはこういう距離感のことではないのだろうけど、もはやそのエッセンスみたいなものは湯郷にいくともっとも先鋭化して実現しているんじゃないかとすら思ってしまう。「人々とサッカーが温泉とともに溶け込んでいる雰囲気」といえばいいのか。
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