セレッソ大阪と、それぞれの邂逅と
香川真司がマンチェスター・ユナイテッドで初のハットトリックを決めたその日、日本では2013年のJリーグが開幕して、はじめてセレッソ大阪の背番号8番をつけて試合にのぞんだ柿谷曜一朗が試合終了直前に貴重な決勝ゴールを奪ったのであった。
「セレッソ大阪背番号8の系譜」がこういう形でまた新しい歴史を作っていく。
そして奇しくも私はこの試合を、兵庫でサッカーをプレーしつづけ、少年時代の香川との邂逅をへて、そこからずっと香川の存在を気にかけていたというフクモトくんと一緒に観させていただく。私が持ってきたJリーグ選手名鑑を渡すと、フクモト君がページをめくってまず何よりその存在を探すべく指を止める選手たちは、それぞれ彼が当時の兵庫県における高校サッカーシーンのなかで出会ってきた対戦相手だったりする。普段私は選手の出身地についてはあまり気にとめないが、彼が指し示す選手たちのつながりでたどると、兵庫県における高校サッカーのある世代についての歴史的関係性がつながっていくのが興味深かったし、とにかくその経験そのものがうらやましく思う。
そんなわけで、フクモト君のプレーヤー的視点からの印象を聞かせてもらいながらセレッソ大阪×アルビレックス新潟の試合を楽しんだ。セレッソのシンプリシオの気の利いたプレーぶりだったり新潟の新加入田中達也の存在感に感じ入ったりしていたが、なにより飛び抜けて圧巻だったのは、セレッソ初の高卒ルーキー開幕スタメン入りという快挙を成し遂げた南野くんだった。本当に18歳かよと思える堂々とした落ち着きに、私でも分かる「この人は絶対に巧い」プレーの連発で、さすがいきなり背番号13を与えられただけはある(そしてセレッソには13番の系譜というのも確実に存在するわけで)。いやー、もうさっそくリオ五輪U-23代表が楽しみでしょうがない。気が早いが。
おそらくこの数年の実績から、セレッソ大阪の試合はことごとく欧州クラブの関係者からチェックをされていると思われるが、この試合でなぜかベンチスタートだった扇原くんについて、私の妄想では「このごろ海外移籍の噂があるので、あえて今回は彼の存在を隠したのではないか」ということだったのだが、いやはやこの日は欧州スカウトにとって結局は大収穫を与えたんじゃないかというほどの南野君、大絶賛のプレーぶり。日本にいるうちに出来る限り生で観ておきたい逸材であり、こうしてセレッソはまたさらに「やたら若い才能あふれるタレントがどんどん出てくる世界屈指の育成クラブ」として認知されていくのだろう。
ちなみにスタジアムに入る前、メイン入り口の近くで私は森島寛晃氏がちかくを歩いているのに出くわした(先日のフェリー以来だ 笑)。これもまたささやかな邂逅。
そして試合後は、フクモト君が2月にかけて行った、欧州サッカー観戦旅行の話をじっくり聞かせていただく。イタリア(そしてシチリア島)、フランス、スペインへと地道に移動していきながら、スタジアムからスタジアムへ、スタンドの熱狂から次の熱狂へと、ボールを追いかけていくかのようなめまぐるしい旅のエピソードは当然のごとくひたすら興味深かった。
名所観光は二の次で、寒かったり空腹だったりするけども、それでもスタジアムを目指し、街中にむらがるサポーターたちの熱気や、そこかしこにいる警備員のかもしだす緊張感を浴びつつ歩き続け、スタンドに続く暗い階段をのぼりきった先に目にとびこむ緑色のグラウンドの輝き、あのときの独特の強烈な高揚感を求め続けていく旅のありかた。
そんな旅の最後をしめくくったのが、サンチャゴ・ベルナベウでのレアルマドリー×マンチェスターユナイテッドのCL決勝トーナメントの大一番。彼が子どものころ一緒にプレーをしたこともある日本人選手がそこでユナイテッドの選手としてプレーをしたこと、そしてたまたまユナイテッドサポーターの中にまじって試合を観戦することになったことなど、すべてが運命的な出来事に満ちていて、そういう忘れがたい旅の話を分かち合えたことに感謝。
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