例年に比べて、今季のプレミアリーグ最終節は、優勝も降格もあらかた決まって落ち着いてしまっていて、当初はロンドンの3クラブの3位4位5位争いがもつれこんだぐらいが見どころだったはずなのだ。
しかし、サー・アレックス・ガムじいさんの勇退にともなって、彼の最後のチームがアウェイでウエストブロムに乗り込んで行う試合というのが、もうひとつの見どころとなったわけである。
これねぇ、生放送で観た人は生涯忘れられない試合になったんだろうなー、くそー、観ていないんだよなー、っていうレベルの神試合。
実は結果を知らないままハイライト番組を観てて、叫んでしまいそうになった。や、実際叫んだかもしれない。
この試合、ファーガソンの選んだ最後のスタメンに、香川が名を連ねていた。このブログではチェルシーサポーターという立場上、あまりマンチェスターユナイテッドにおける香川のことについて積極的に書くことはないのだが、今回については書かせてもらいたい。素直にこれは、日本人としてうれしかった。こんなかたちでファーギーに最後の最後で「ありがとう」という気持ちにさせてもらえるとは。
さらに後半69分、2-5でリードしていた状況で、香川に交代して、引退を表明していたポール・スコールズが入った。ここでスコールズを迎える役割を担った香川の姿も印象的だが、とにかくこのセーフティーなスコアのなかで、スコールズにとっても最後の花道を飾る用意がととのった。
しかし、ここからサッカーの神様はすごいことをやらかすわけだ。
とにかく驚いた。のこり10分でウエストブロムが3点決めて追いついた。
ルカク(レンタル元はチェルシー!)がハットトリック。86分、最後の最後で頭で押し込む。
いやもうこのゴール決まった瞬間にカメラが切り替わったときのサー・アレックスの表情が。
なんとも言えない、あの表情が。
27年間ずっとユナイテッドを率いてきた名将の、最後の最後の試合で、5-5で追いつかれるという、その信じがたい出来事に直面した、あの表情が。
「サッカーって、何なんだろうね」っていう、素朴な、それでいて永遠に引き継がれる「究極の問いかけ」が、それこそ27年分の凝縮された想いとなって、あの表情に込められていたかのようで。
ルカクのゴールが決まって、ガムかみながら、ちょっと目をそらして視線が泳いでいた、あの表情。
「サー・アレックスの最後の試合は、勝てなかった」という、このことの意味。
私はそれでこそユナイテッド、っていう気がしている。
つまり今回の試合は、1999年チャンピオンズリーグ決勝の「ロスタイムの奇跡の逆転」とまったく同等の、神様から託された「サッカーにおける永遠の教訓」を逆のパターンで示してくれた出来事だと思えてくるわけだ。
「サッカーって何なんだろうね」って、ホントそういう気持ちになる。いったいどうやったらこういうことになるのか。答えはないし、そしてこれからも追求される問いかけである。
図らずも、私はようやく最後の最後で、サー・アレックスに、「おつかれさま」と肩をたたきたい気分になれた。勝ち続けることも偉大だが(ゆえに、いつまでも憎たらしいけれど)、このような「偉大な教訓」を2つも見せてくれたことにも、敬意を表したいわけだ。
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チェルシーについては、エバートンになんとか勝って、無事に3位。ベニテス監督への感謝のバナーもスタンドで掲げられていて、結果的にハッピーエンドになっていった。や、それでもなお、横浜でもベニテスへブーイングしていた私の事実は変わらないのであるが・・・
こちらの試合でも最後の最後でパウロ・フェレイラが途中出場していたり、こうしてサポーターから拍手される舞台を整えるような選手交代の仕方は素敵だ。勝利も大事だが、こういうのは嫌いじゃない。本当にフェレイラには心から感謝したい。よく今までガマンしてチェルシーに残ってくれた。惜しむらくはもう一度モウリーニョ監督のもとで闘ってほしかったが(って、モウさんどうなるんだろうかね)。
なんだか私の場合は、すぐに試合のことを忘れるために、結局シーズンの振り返りをしようと思ってもなかなか記憶があいまいでうまくまとめられない。(わりと最近そこで悩んでいる)
アザールの衝撃的なデビューから、オスカルとマタがフィットして、監督が替わって、クラブW杯でのダヴィド・ルイスの気迫が伝わるプレーぶりに感動したり、テリーとランパードのこれからにヒヤヒヤしつつ・・・という印象で(あと、トーレスがやたら難しいシュートしか決めやがらないこととか)、そんなこんなでチェルシーFCのみなさんも今シーズンご苦労さまでした。出来うる限り最大の仕事を果たしましたよ。欧州CLにつづくEL連覇は初めてのことらしいので、これは永遠に誇れますね。ぜひこの夏はじっくり休んでください。
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