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2013年9月 4日

今さらながら、『ジャイキリ』のこと

本当に、今さらではあるが、『ジャイアントキリング』のことについて書かせていただく。

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2010年のワールドカップのときに、スカパーの情報番組で連日「パッカくん」が登場しているあたりからずっと気になっていて、うすうすこのマンガの面白さは伝わってきていて、それでも「マンガはハマると怖い」という昔ながらの臆病な部分が顔を出してはズルズルと年月が過ぎていき、そして昨年の秋頃からついに手を出してしまった。それでも「一週間に一冊ずつ」のペースを守りきり(笑)、最近ようやく最新刊に追いついた次第である。

このマンガは、もちろん達海監督というキャラクターを軸に据えて読めるけれども、本当の意味での主人公および主題となるテーマは、絶対的に「サッカークラブそのもの」だということがすごい。

「地域におけるサッカークラブとは何か」というテーマと、
「サッカーを通して人はいかに成長するか」というテーマがこのマンガを支えていて、「そうそう、こういうサッカー漫画が読みたかった!!」という気分である。

や、もう、私なぞが改めて書く必要がないほどにメジャー級に人気のある作品なんだけど、そういうことだ。

単にサッカー選手や監督だけじゃなく、彼らをとりまくスタッフ、フロント陣、サポーター、取材記者、カメラマン、スポンサー、地域の市井の人びとなど、多様な人びとの目線に立って、それぞれの物語を語り得るようなストーリー構成をとっているあたりが最高に楽しい。ひとつのボールを追うことに、これほどまで多面的な視野から熱く表現されうるサッカーマンガとしては、もうこれ以上のものは存在できないんじゃないかと思わせるほど。

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とくにグッとくるのは、このマンガにおける「観客席のサポーターの描き込みっぷり」である。だいたいスポーツマンガにおける観客ってテキトーに書いても別に問題はないはずなんだが、ジャイキリにおいては実際のJリーグの観客席にたいする取材を相当行っているのがよく分かるほどに、それぞれのサポーターの姿にバリエーションと表情があり、身につけている応援グッズとかゲーフラとかのディテールなど、じっくり観ていると本当によく描き分けられている。まさに一人一人にとっての「ETUとの物語」がそこから垣間見られるような感覚があって、それがまたいっそうリアリティを高めていて、それほどまでにやはりこのマンガは「サッカークラブ」がメインの存在として描かれていくのである。

決してサッカークラブはモノを言わないし、その存在が主体的に動きを見せることはないにせよ、このマンガを全体的に包むテーマやモチーフとしての「クラブ」の存在感。
そしてそれは当然ながら「Jリーグ賛歌」でもあるし、「百年構想」を考えるうえでのとても入りやすい「参考図書」でもあるわけで、もっとJリーグもよりいっそうこのマンガとコラボしてほしいものだ(いつかマスコットのパッカくんに出会ったらすごいテンションあがるだろう)。

そういう意味で、誰にもしばられず、自由人でありたい気風があるはずの達海があえて監督就任に際してETUのクラブハウスの一室を住居にするという設定も、その真意は現時点ではよくわからないが(ひょっとしたらジャイキリの関連書籍のなかでは解明されていたりするのかもしれないが、まだチェックしていない)、興味深いのである。それは達海にとっての「ホームスタジアム」としての、まさに「ホーム」の感覚を描いているようにも思えるし、そして達海の過去に起因する、そのクラブをとりまく地域の人びとにたいする複雑な気持ちの反映がその設定に描写されているとも受け止めることができるし、さらに言うと「一人の選手はクラブ以上の存在にはなり得ない」という、現実的にFCバルセロナなどを語るうえでたびたびでてくる問題のことなども想起させたりするし、別の見方では「単に面倒くさいから、いろいろ便利なクラブハウスに住んじゃっただけだろう?」とか、いろいろ考えると面白いのである。

そんなこんなで、これからこのマンガがどのような展開を見せるのか、楽しみで仕方ないのである。

<ついでに>

Giant3

過去にアディダスとのコラボ商品でこのようなトラックジャケットも出ていたようだが、第2巻あたりで達海や松ちゃんが着ていたこれの白色バージョンも作ってくれたらとっても嬉しい。

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