夜の公園で、未来のネイマールとボールを蹴った話
友人達が、近所の公園でボールを蹴りましょうと誘ってくれた。
こうして何気なくボールが蹴れる機会を(まったく普段サッカーをしていない人でも)作っていけるようにしたい、というのはかねてから考えていたことであり、二つ返事でオッケーした。
普段めったに運動をすることがない生活を送っているオトナ4人が夜の公園に集まり、本当に単純に「恐る恐るボールを蹴ってみて遊ぶだけ」という、なんともヘナチョコな状況を繰り広げていた。ちなみにボールは、この日はじめて封をあけた新品のものだった。
あらためて簡単なパス回しをしていても、日頃サッカーを「観る」うえでも非常に得るものがあった。いかにトラップが難しいか、いかにグラウンダーでくるボールをダイレクトで蹴るのが難しいか、そして何より、90分走り続けたうえで、最後まできっちりボールを蹴ることのできるプロ選手の体力がいかにすごいか、ということをワールドカップ前にあらためて肌感覚で体験できる機会となったのはよかった。
そうやってすぐに息のあがったオトナたちがダラダラと公園のすみっこで休んでいると、同じ公園でボールを蹴っていた中学生の2人に声をかけられ、試合をしましょうと言われた。
普通に生活していて、子どもたちから一緒に遊ぼうと言われることなんてありえないのだが、サッカーボールを持っているだけで、こういう状況が成立する。突然のことにオトナたちのほうがドギマギしていたように思う(笑)。
こうして、オトナ4人対中学生2人の即席試合がはじまった。
そしてこの中学生のNくんがむちゃくちゃ上手な子で、「ネイマールが好き」と言うだけあって、雰囲気もネイマールっぽい感じで、我々は試合をしているというよりも、その見事な足技とスピードに翻弄されながら、ただひたすら「スゲー!!」と関心するばかりであった。
そうしているうちに、たぶんいつも中学生の子たちとこの公園で遊んでいるのであろう地元の小学生ぐらいの子どもたちが、どこからともなく5人ほど加勢に駆けつけてきて、それがなんだか可笑しくて笑えてきた。昭和のマンガみたいな展開。
で、そこで話し合いの末、この素人オトナチームへNくんに加わってもらい、それで試合をすることに。
オトナたち、ひたすらNくんの名前を連呼して彼にボールを集めていく。
メッシやネイマールなど、一人で突破できる選手を味方にすることの気持ちを味わう。もう、ひたすら彼に頼る頼る(笑)
相手の子どもたちも、ガチでサッカーをプレーしている子たちのようで、バルサだったりレアルだったりのユニフォームを着て、背番号をみるとネイマールだったりクリスチアーノ・ロナウドだったりの名前が入っているので、僕らも「ロナウド!」とか呼んであげると、子どもたちもよりいっそうテンション高く真剣なまなざしでボールを追いかけていくのが印象的だった。
そして私はいつのまにか「ヘタクソなジダン」と呼ばれ・・・(笑)
試合が終わって(我々が負けた)、すっかり遅くなったので子どもたちを急いで帰らせる。
つい私は子どもたちに「年を取ったら体が動かなくなるから、今のうちに思いっきりサッカーを楽しんで!」と肩を叩いて声をかけていた。
「おれたち、オトナを相手に勝ったんやでー!」と家族や友人に自慢してくれたら嬉しい。
ネイマールなNくんは、よく聞けば京都のクラブチーム、ASラランジャに所属してプレーをしているとのこと。そりゃあガチで上手なわけだ。それでも自分のプレーぶりを鼻にかける雰囲気もなく、謙虚で礼儀正しい少年であり、我々オトナたちはすっかりNくんのファンになっていたので、自転車に乗って帰っていくNくんに向かって、私は衝動的に(例のマラソンの応援のように)彼の名前をコールして送り出した(←近所迷惑な話 笑)。
我々オトナ4人は、Nくんにとって最初のサポーター集団になったのかもしれない(笑)
普段そこまでサッカーを観ない友人は、こうしてラランジャというクラブチームのことをはじめて知り、Nくんの行く末も応援したくなる気持ちになっていた。これこそがJリーグのいう「百年構想」の芽生えみたいなものかもしれない。地元のチームで育つ子どもたちが大きな舞台へ挑戦していくプロセスをみんなで見守っていける環境づくりがJリーグの目指すところであり、そのワクワク感や面白さをリアリティをもって実感することができた出来事だった。
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