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2017年12月14日

横断幕と暮らす日々(その4)

車の外は大雨。風が強まってきた。

十月最後の日曜日、朝から淡路島の五色台にきていた。

スマホのアプリで雨雲レーダーをみる。真っ赤な雨雲がやってきている。

台風が近づいてきている。




こんな日にやるのか、試合。

湯郷ベルは皇后杯の一回戦を迎えていた。

この日までの展開を説明すると、ベルはオルカ鴨川を津山で迎え勝ち点3をもぎとった。ただし藤田のぞみはベンチ入りしなかった。
(さらにいうとこの日の個人的ハイライトは、ホームゲーム恒例の選手からのサインボールの投げ入れであった。偶然にも藤田のぞみが放ったボールが私の目の前にうまく飛んできて、まさか来るまいと油断してデジカメなんかを手にしていた私は見事に取り損ね、あえなく前方の人に渡ってしまったことだった)

リーグ最終戦は勝つか引き分けで2部リーグの残留が決まるという試合となり、相手は同じ岡山の吉備国際大学シャルム。そしてこういう日に限って私は仕事で行けず、そしてこういう日に限って後半から藤田のぞみが久しぶりに試合に出たようで、その姿を見届けたかったと、この日行けなかったことを悔やんでいた。この試合にベルは勝ち、なんとか無事に残留を果たしたので、現地にいるであろうサポーターの方々の安心した様子を想像していた。

そうして3週ほど空いて、今度は皇后杯に向けての戦いがはじまった。初戦は宮城県の聖和学園高校との試合となり、台風の襲来と完全にマッチアップしてしまい、それでもこの女子サッカーの業界は、当然のように日程を消化するべく、試合が行われるに至った。9月に来たばかりの五色台は、あの日とはうって変わって暴風雨が吹きすさぶ、寒く冷たい場所となっていた。

例によってM・フィオリオ氏の運転により朝早く現場に到着した。ひどくなる雨をただ眺め、横断幕の掲出が行われるまでは一歩も車の外に出るつもりはなかった。
ただフィオリオ氏は横断幕の責任者でもあるので、いまの状況やこれからの予定を確認するためにレインコートに着替えて競技場の事務所のほうへ向かって行った。私は車内に残り、グッタリとなっていて眠りかけていた。駐車場にはちらほらとサポーターの乗る車が増えてきて、例の「アンチ銀河系おじさん」も車から出てレインコート姿で事務所のほうへ歩いていくのが見えた。やがてベルの選手を乗せたバスが到着したこともうかがえた。

 申し訳ないがこの豪雨ではギリギリまで車内に留まっていたかった。ボンネットに跳ねる雨音は心地よいけれども、ワイパーが止まっているせいもあり、窓ガラスの向こうの景色には、このあとここでサッカーが行われることが非現実的なことのように思わされる。

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 すると選手バスのお迎えから戻ってきたフィオリオ氏からの報告。











「のんちゃんが、来てない!!」


 うわははははははははは。


 笑うしかない。

 ていうか、もう、この状況慣れた(笑)

 いやはや。




 ますます車の外に出る意欲を失っていったわけだが、前回のこの五色台でもそうだったように、のんちゃんがいないからといって「フジタノゾミ横断幕」を出さないわけにもいかない。私がここに来ているのは横断幕を掲げるためである。開き直り、レインポンチョを取りだして、けたたましい雨の音が続く世界に突っ込んでいく。

 メインスタンドの屋根部分から数名で手分けして横断幕の束を手に持って、さっそく水浸しになっている泥だらけのゴール裏にたどり着く。横断幕を地面に置くわけにもいかないが、幸いゴール裏に手すりがあったのでひとまずそこにひっかけて、1枚ずつ金網に寄せてロープでくくっていくことになった。

 しかし、突風にあおられて作業がまったくスムーズにいかない。横殴りの暴風雨、そして手元の冷たさがさらにロープの扱いを難しくしていく。

 笑える状況でもあり、必死でもあり、この状況がなんだかだんだん「軍事訓練か!?」とすら思えてきた。容赦なく風、風、風にあおられ、土砂降りの雨、雨、雨に打ち付けられ、そして地面はどこまでもグチャグチャ。それでも急いですべての横断幕を金網に縛り付けていく。

 最もつらいのは、大切な横断幕がさっそく雨水にさらされていくことだ。試合のあと持って帰ってすぐ乾かさないといけないことも思うと、仕事が増えることの気の重さが、雨水を含んだぶんだけのしかかってくる。

 フジタノゾミ横断幕もサポーターのみなさんの協力を得て無事に掲示。やむことのない雨のなか、レインポンチョを着込んだ状態から苦労してスマホを取り出して写真に収める。

Img2740




 

 そうしてメインスタンドのわずかな「屋根ありゾーン」に戻る。とはいえ横殴りの風雨はすべての場所に入り込んでくる。その狭いエリアのなかに立ち入り禁止コーンがおかれ、そのなかで選手たちがアップをしていた。そのすぐ脇に我々もたたずみ、このひどい天候についての印象を語り合ったり、選手のアップの様子を見守っていたりするのだが、あまりにも至近距離でアップをしていると、真正面で向き合うのも気が引けるため、サポーターたちも背を向けていたりする。

R0049130



 ピッチ内ウォームアップを経て試合がはじまるが、雨風がさらに激しくなり、もはやこれはボールを扱うことのできる環境ではなかった。そうなるともはやサッカーというより気持ちの勝負みたいなところであり、高校生相手に激しく当たってボールを奪い取り、ゴールに襲いかかるベルの姿があった。しかし水浸しのピッチなのでボールが思うように動かせない。もどかしいなか先制点をあげて、そのまま前半終了。

 しかし後半になるとなぜか押し込まれる時間帯が多くなり、そうこうしているうちに失点。そうなるとこの状況下では、なでしこリーグのチームであろうが高校生のチームであろうが、ボールがまともに動かない以上、完全に五分五分の分からない試合になっていく。
 そして嵐はやむことなく、ピッチの上も観客席も等しく風雨は打ち付け、私は人生でこれほどまでに「もう早く試合終わってくれ」と思ったことはない。この状況で試合をやることはあり得ないと本気で思いながら、「ひょっとしたらこの試合は落とすかもしれない」と感じていた・・・が、その後セットプレーからの展開で立て続けに2点を入れ、なんとか自力の差をみせて決着をつけた。暴風雨にむかってガッツポーズをともにした周囲のサポーターたちの安堵感たるや!

 聖和学園の選手たちへのエール交換などが行われ、それぞれの健闘をたたえつつ。ただ今日だけはこの時間をともにした観客席すべての人に、本当にお疲れさまと言いたかった。何がここで行われていて、どうして我々はここにたたずみ続けたのだろうか・・・(そして、のんちゃんはいない 笑)そういう放心状態だけが残った感じ。

(そして狂気の沙汰はさらに続き、雨で泥沼のようになったピッチが休まる間もなく、このあと第二試合でバニーズ京都SC対ニッパツ横浜FCシーガルズの試合が行われたのであった・・・)

 片づけも早々に、「では次は福井で!」といって各々が帰る。次はINAC神戸との試合が決まった・・・福井県で。

(つづく)

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