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2022年3月12日

いまチェルシーのファンとして言いたいこと

220312

 ロシアのウクライナ侵攻に伴い「オリガルヒ」と呼ばれる大富豪の資産について英国政府は資産凍結や渡航禁止措置の制裁を取ることになり、チェルシーFCのオーナーもその対象となった。日本の片隅にいる私はただでさえ年度末でクソ忙しい日常のなかで、はやく収まってほしいと願う戦争のニュースとともにまったくクラブの状況が追い切れていないなかで、焦燥感を覚えつつ今、この文章を書いている。状況は刻々と変わるだろうから、このブログで正確な情報を提供することは難しいことを前提でおつき合いいただきたい。

 自分の知る限り、まず最初にアブラモビッチがチェルシーの所有権を手放して、他の管理団体に運営権を渡すと発表したのだけれども、今回の政府の制裁により、自由にクラブを売却できなくなって、かつチケットやグッズ販売、選手契約とかの営業的な活動ができなくなる、とのこと。さすがに試合はできるように政府から「特別ライセンス」が付与されて、チームとしての活動はできるものの、そもそも「商売」の部分が取り上げられたらクラブは今後どうなるんだ、というのが現時点での話(合ってる?)。

 ところでちょっと話がそれるが最初のアブラモビッチの発表のときのニュースであらためて知ったのだが、クラブ側がアブラモビッチにたいして莫大な負債があって、その返済もチャラにしますみたいな意向が報じられていた。でもこれって会計上では世の中で普通にあることなんだろうか。クラブは利子をつけてオーナーにお金を返しつつ、オーナーは自分の利益をクラブに再投資し続けていたり、さらにお金をクラブに貸し付けているわけで、そもそもこういうお金の流れってセーフなんだろうかとフト思ったり。会計的なことにまったく疎いので詳しい人に教えてもらいたいのだが。

 で、そもそもアブラモビッチ氏がどういう経緯で大富豪になっていったかとかの話を引いてきて、もともとがダーティーなお金で成り上がり、そういうお金でチェルシーというクラブが強くなっていったのだから、チェルシーファンは自らのアイデンティティに苦しんでいるだろうみたいな論評もネットでみた。これについては「はぁ、そうですか」としか言えない。もし仮にアブラモビッチに買収されたあとの2003年以降のすべてのタイトルが「無価値」なものにされたりトロフィーが没収されたとしても、サッカーの現場において存在した、幾多のリアルな出来事は不変であり、「勝ったり負けたりの楽しさや記憶」までを奪われる筋合いはまったくない。2012年のCL準決勝でバルセロナ相手に決めたトーレスのゴールを思い起こすたび、あの無人のゴールへ転がっていくボールの軌跡には70億円相当に見合う価値があったのだと腑に落ち、たとえあれがダーティーなカネであろうが、あのときの強烈な快楽の共有、そして腹の底からの
「ざまぁーーみろ!!」
の背徳的なまでの爆発的な感情の吐露、それはサポーターたちにとって永遠のものなのである。
 
 さて2003年にアブラモビッチがチェルシーを買収した際に、アーセナルのベンゲル監督が「彼らは宝くじに当たったようなものだ」とコメントしたことを覚えているだろうか。当時私はなぜかその発言が印象に残っていて、その頃からはじまるチェルシーの豪華な補強の数々を目にするたびに、ベンゲルの言葉を繰り返し思い起こすこととなった。なるほど、そうか、これは宝くじに大当たりしたようなものなのだという認識は、そのあともずっとあった。

 なので私が以前このブログで「あなたがチェルシーのサポーターにならないほうがいい10の理由」という記事(こちら)を書いたとき、

このあたりのスリリングさは今後も続いてくだろうし、ある日突然、アブラモビッチがチームから手を引いて大混乱に陥って、崖から一気に転がり落ちていく危険性もあるわけで、そういう日がくることを・・・実は心のどこかで「怖いものみたさ」で期待してしまう自分もいたりする。

このように書いたのは、私のなかでずっと「いまは宝くじに当たって散財している状態」としてチェルシーを応援してきたことに由来している。そう、いつかは宝くじの当選金も尽きてしまう日がくるだろう、そういう思いがずっとあった。

 ただし、(1)このような事態がきっかけとなってクラブの経営危機が起こるとは想像していなかったことと、(2)よりによってこのタイミングかよ、というのが私の今の気分である。まず(2)については、つい先月このクラブは世界最高峰の栄誉に浴したばかりであり、どうせ世界中のサッカーファンやマスコミからはすぐに忘れられるだろうから大声で言っておくが、現時点では「地球上で最も優れたサッカークラブはチェルシーFCです」と断言してもこの1年ぐらいはまったく差し支えない状態なのである。そんなクラブがたった一ヶ月そこらの間にグッズ売場までもが閉鎖させられるような仕打ちを受けているのであり、この圧倒的な落差を劇的なまでに仕立て上げられるストーリーが、将来このクラブの歴史を振り返るときに繰り返し語られるのかと思うと正直ゲンナリする。

 そして(1)については、これは国際情勢を把握していないとなんともいえない複雑な事態であり、何かを言うことに難しさを覚えるが、それでも今チェルシーのサポーターである自分として感じていること、特に英国政府に対して言いたいのは、オーナーが制裁を受けてクラブ経営が縮小を余儀なくされたり破綻したりプレミアリーグから強制的に降格させられようが、そして我々の愛するクラブが「ダーティーなマネー」に満ちていたことを痛感させられようが、それを踏まえても今、最も目を向けて優先してほしいことは、ウクライナとロシアの民間人が無用な殺戮や刑罰に巻き込まれないようにすること、人道的支援を拡充すること、環境汚染の拡大を防ぐこと、そこに向けての政治的な働きかけを全力で追求することだ。

 私にとってサッカークラブの消滅危機は二の次だ。そして付け加えるなら、クラブは消滅できない。何があろうとも、サッカークラブの本質は壊滅させられた焦土のなかにおいても必ず芽吹いて空をめざすようになると思っている。そして当然ながらウクライナにもロシアにもチェルシーのファンがいるだろう。サッカーには、政治的指導者が固執する古くさい国民国家の枠組みなどでは到底乗り越えることができないスケールの連帯と多様性と力強さがある。そして、その気になれば国境を越えてチャントを見事に合唱できる。

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