試合/match

2018年4月 4日

横断幕と暮らす日々(その7):口で笑って、目で詫びる

 いきなり昭和歌謡の話になるが、新沼謙治に『青春想譜』という曲がある。苦しい生活のなか、彼女が主人公の名前で故郷の母に宛てて送金をしたことに「出過ぎた真似をするな」と主人公が怒るのだが、そのあとの歌詞が「口で叱って/目で詫びる」と続く。私が愛聴するザ・コレクターズのポッドキャスト「池袋交差点24時」で、ここの歌詞が素晴らしいと絶賛されていて、それで私もこの曲のことを知ったのである。

 で、オルカ鴨川がリーグ2戦目に湯郷ベルと試合をしたこの日のことを振り返ると、この「口で叱って、目で詫びる」のフレーズが思い出されてきたのである・・・ただし、さしずめそれは「口で笑って、目で詫びる」というような、原曲の機微からはほど遠い風情ではあるが・・・

 

 なでしこ2部リーグの日程を誰が組んだか知らないが、はじめてオルカ鴨川のホームスタジアムでの開幕戦を観に行ったすぐあとに、この湯郷でのアウェイ戦が設定されたことには少し感謝したい気持ちであった。慣れ親しんだ「いわばホーム」にすぐに戻ってくることで、鴨川の洗礼を浴びた直後の私は、フィオリオ氏がいつものように運転してくれる岡山への高速道路ですら、「ちょっと近所」に移動するような感覚であり、ひとつの大冒険が終わったあとの、なんともいえない安心感につつまれていた。

 

 ただし、現実的には湯郷ベルのサポーターとしてのフィオリオ氏が乗せている男は、いわば「今日の敵」のサポーターになるのである。それを頭では分かっているのだが、湯郷へいくことの心地よさを隠せなかったのも確かだ。ましてや本来なら乗せてもらっているお返しに、数日前見てきたばかりのオルカのチーム状況などを彼に報告することもできたはずなのだが、この前の私は藤田のぞみ以外の選手のプレーをちゃんと観ておらず、かつ、サッカーの試合を生で観るときにしばしば採用する、「特定の選手の動きを軸にして目線を定めながら、あたかもピッチ上の選手が『首ふり』をするときのように、周辺部分およびボールの行き先を瞬間的に追いかけて、目線を行ったりきたりさせる見方」(私はこれを『リベログランデ方式』と勝手に呼んでいる)を実践していたので、全体的なオルカのチーム状況を語れるようになるにはまだまだ時間がかかりそうなのであった。「のんちゃんのことしか観てないし、まだオルカを1試合しか観ていないから~」と、笑って応えつつ、目で詫びた。

 

 現地に着くと、よく見かけるベルのサポーターさんたちが列に並んでいて、朝10時に横断幕の掲出が予定されていた。実は昨シーズンの日程の関係で、美作のホームスタジアム(通称ラサスタ)で横断幕を張るのは初めてだった。そして私は「いつもの人たち」とは別方向に向かって、アウェイゴール裏のほうへ横断幕を出さないといけない。そしてどうやらこの10時の時点では私だけがオルカ側で作業をしなければならなかった。このスタジアムでの横断幕掲出は「メインスタンド側に近いほうから掲示する」ということだったと思い出し、このような形でフジタノゾミ横断幕を張った。

 

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 結果的には、このあと試合開始前になってオルカサポーターの方々がやってきて、横断幕は増えたので事なきを得たが、この時点では藤田のぞみだけの横断幕が静かに掲げられているだけなので、「果たしてこれでよいのだろうか」といたく不安になっていた。そうして心許なく紐をくくりつけていると、背後からベルのスタッフの人がやってきて「おつかれさまです、今日はよろしくお願いします」と言われたので、その場で私はオルカのサポーターとして応対しないといけなくなり、「たった2試合目なんですけどね」とは口には出さず、にこやかに会話を交わして、目で詫びた。

 

 ちなみにこちらの横断幕が張り終わること、振り返ると反対サイドでは多くのベルサポーターが協力してたくさんの横断幕を手際よく掲示していて、私はこの日どうしても近づいて写真に撮りたかった横断幕があったのでベル側ゴール裏に走っていった。そしてうっかり、足を踏み入れてはいけないアップ用のスペースをショートカットしてしまい、その場にいたサポーターのみなさんに注意され(それは試合中に客席から一斉に発せられる「オフサイド!」のかけ声のようだった)、これについては目で詫びるどころじゃなくて、しっかりお詫びしたい。

 試合は藤田のぞみが2試合連続のスタメン出場。序盤にベルのミスやフリーキックでオルカが2点をリードする展開に。ただし前半のうちにユメのゴラッソが決まり、後半にはカンゴールで2点差を追いついて、その後もベルが猛攻を続けて引き分けで終わるという試合だった(ベル側の記述に馴れ馴れしさが出てしまうのは仕方がない)。去年のベルの試合ではあまり感じられなかった「攻める姿勢」が随所に見られた印象だが、それだけオルカ側の後半の出来映えが苦しく、藤田のぞみもなんとかバランスを取ろうと苦心していたように見えた。リードを守りきれなかったことに守備的MFのアンカーポジションの彼女としては負けに等しい内容だったかもしれない。

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出待ちのときは、ベルとアウェイ側はそれぞれ別の出口となっていて、ベルの様子を気にしつつひたすらアウェイ側で待っていた。この日は前回と違って晴天だったので、ちょうど買ったばかりの背番号8番のユニフォームにサインをもらおうと待っていた。オルカの他の選手たちのことも少しずつ顔と名前を識別できるように、目で詫びつつ「おつかれさまでした」を言い続け、いざ藤田のぞみが登場したら、やはり最もファンからのサイン攻めにあっていて、なかなかバスにたどり着けない様子。一瞬やめようかとも思ったが、とにかく天候が良かったので、いい条件下でサインを書いてもらおうと勇気を出して本人に声をかけ、しかも私はサインに添えて書いてほしい言葉として、松江の方言「だんだん」(ありがとうの意)を追記してもらうことに成功した(しかものんちゃんご本人から「だんだん」の正しい発音を教えてもらった)。悔しい試合でお疲れのところ、本当にありがとうのんちゃん、ということで、この日いちばん、目で詫びた。

 

 オルカの選手を乗せたバスを見送ったあと、「だんだんサイン」をいただいたことの達成感と放心状態ゆえ、よろよろとベルのファンサービス現場にたどり着いたときは、こちらもそろそろ時間切れがスタッフによってアナウンスされようとしていたところだった。自分がこの日はオルカ側の人間であったこともあり、そして「よく考えたら今後しばらく湯郷には来ない」ということをあまりこのとき認識できていなかった私は、ここで手を抜いてひたすら「だんだんサイン」のことを振り返ってボーッと突っ立っていた・・・ここでがんばって労いの声をかけておくべきベルの選手の姿を探さなかったことは、これも目で詫びるどころの問題ではなく、今となっては後悔するばかりである。

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↑向かいの「みまさかアリーナ」のなかにこのようなビッグフラッグ寄せ書きコーナーがあって、つい魔が差して、男子日本代表と関係なく「Allez!! フジタノゾミ!!」と、これのどこかの場所に小さく書いたのは私です。

 

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2018年3月23日

横断幕と暮らす日々(その6) 鴨川から鴨川へ

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 買ってからまだ一度も使う機会がなかった長靴を履いて、朝5時に家を出た。
 長靴のまま新幹線に乗り、特急に乗り換え、11時ごろに安房鴨川駅に着く。

 実際に味わっても、その「遠さ」をあまり感じなかったのは、もうすでにさんざんこの距離を覚悟しつづけていたからだろう。

 雨風が強く、そして冬に逆戻りしたかのような寒さのなか、駅に着いたのはスタジアムで横断幕掲出の受付が始まっていた頃合いだった。運良く駅前からすぐタクシーに乗ることができ、行き先を告げると、運転手さんはこの日にこの地でサッカーの試合があることを知らなかった。道ばたには「1部昇格!」の文字が書かれたオルカ鴨川FCの広報看板が多数立っていて、そこに気づいた運転手さんは「この試合に勝てば1部昇格なんですか?」と無邪気な質問をしてきたので、一通りの状況説明を試みた。

 やがて運転手さんは「(このために)京都から来たんですか!?」とそれなりに驚いてくれた。運命の導きによって私は鴨川の流れる街から、鴨川と呼ばれる海辺にやってきて、そうして鴨川市陸上競技場にたどり着いた。

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 受付で横断幕掲出の許可証をもらい、ゴール裏の芝生エリアに行くと、すでにほとんどの横断幕が設置されていた。幸いまだスペースがあったので、急いで掲げさせていただく・・・ただし冷たい雨と風が強く、昨年の淡路島での台風を思わせる感覚があった。でもあのときは、私の周りに湯郷ベルのサポーターさんたち・・・ほとんどの名前も知らず、でも顔はよく見る人たち・・・がいて、一緒になって突風を受けつつ、暴れる横断幕を押さえて雨に打たれながら少しずつ紐をくくりつけていった。あのときの状況に似たものを、自分はそのときひとりで感じていた。同じ頃、湯郷ベルは、アウェイで愛媛FCとの開幕戦を迎えていた。

 こうしてあらたなフィールドで、藤田のぞみを応援していくことになり、そして少しずつ自分もこの新しいチームに親しんでいこうとしている。2部リーグ開幕戦、相手はASハリマアルビオン(湯郷ベル関連でお世話になっているアンチ銀河系さんが応援しているもうひとつのクラブでもある)。幸い先発出場の背番号8番はアンカーの位置で、見慣れた仕事場を任されていた。職人技でいくつかのボールを奪い、そして幾度となく良質のパスを前線に送っていた。足下のコンディションが悪いにも関わらず、ペース配分が良かったのか、後半の最後までスプリントの勢いが落ちることがなかったことが印象深かった。

 ただしどうしてもチームの連携がまだまだ発展途上の雰囲気で、可能性の低い前線へのロングボールと、ぎこちない展開ばかりでシュートチャンスが作れない。前半は耐えたが、後半はミスもあって立て続けに3失点。

 愛媛の山奥(マチュピチュと呼ばれているらしい)で湯郷ベルの開幕を見守っているフィオリオ氏から随時LINEが入り、ベルも3失点して完敗したとのこと。4日後の日曜日には、この両チームで試合をするわけで、ますますやりにくい状況になった。

 雨と風、季節はずれの極寒、そしてこの遠すぎる距離感の果てに、負け試合後の出待ちは寒々とした気分でいた。思ったよりも早く選手たちが出てきてくれて、この長旅のなかで唯一の“見慣れた顔”をみつけ、手短にメッセージと差し入れを渡すと、「横断幕、ありがとうございました」の返事。雨風にさらされ続けた横断幕も私自身も、この言葉ですべて報われる。

 ・・・そして、そう、この言葉を聞くと、またここに来続けることを自分のなかで奮起せねばならないのである。それは自分自身にとって、ある意味での闘いなのである。大げさかもしれないが。

 果たして何回ここを訪れることになるのだろうか。それを予見するかのように、帰りに電話で呼んだタクシーの運転手は、たまたま行きと同じ人だった。
「あー! 京都のお客さん!」

鴨川から鴨川へ。不思議な魅力を湛えたフットボーラーを追いかける旅は今年も続いていく。

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2017年12月31日

横断幕と暮らす日々(その5)

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皇后戦2回戦は福井県の丸岡で行われることが決まっていて、湯郷ベルはINAC神戸と対戦することとなった。

今回は一人で前日のあいだに福井に向かった。夜にフィオリオ氏とMさんと現地で合流し、どこかで会食することになった。

あまりこだわりなく福井駅ちかくのビジネスホテルを適当に予約していたのだが、そこに歩いていく途中、大通りに「ホテルフジタ」という名前の大きいホテルがあることを知り、私は悔しくなった。もし知っていたらこっちを選ぶべきであった。見た目や立地で想像するに今回泊まるホテルよりもかなり高そうではあるが、それでもやはり意地でもホテルフジタをチョイスすべきだった。
もはやネタでしかないのだが、ネタにならない追っかけなんてありえるだろうか。いや、あるまい。

「しまったなぁ」と苦笑しつつ、ホテルフジタのある大通りから路地に曲がり、昼間は誰も歩いていない飲み屋街のようなところに入り、自分が泊まるホテルの並ぶ通りに出た。

そこで出会った光景がこれだった。

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「!!!」


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「のんちゃん」!?(笑)

ひとりその場で静かに笑い声をあげながら(←気持ち悪かったと思う)ホテルの前を通り過ぎ、私はこの小料理屋の前にたたずみ、一通り写真を撮って、完全に自己満足ではあるが、心の中でガッツポーズをしつつ、ホテルへチェックインした。

 

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そしてすみやかに「のんちゃん」の写真をメールでフィオリオ氏に送って、この奇跡的な巡り合わせについて報告した。そうしてやがて福井駅でフィオリオ氏らと合流したとき、フィオリオ氏は今日の宴席を「のんちゃん」で行うことを提案してくれた。

私はお酒をたしなむ趣味がなく、こういうときじゃないとなかなか一人では小料理店や居酒屋には入れないので、この提案はありがたかった。

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お店を切り盛りしているのは日本海の魚を黙々とさばく大将と、その奥さんとおぼしき組み合わせ。テレビではプロ野球の日本シリーズ。期待通りの雰囲気。

そして結論からいうと、酒好きのフィオリオ氏がいうには、この「のんちゃん」は今後も福井に来たときはぜひ再訪したいと絶賛するぐらい、非常に良い料理とお酒が楽しめるお店であったのだった。

さすが、のんちゃん!!
勝手に誇らしくなる。

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↑お通しにウニが。これだけで充分満足できた。

「のんちゃん」というお店で、のんちゃんの活躍を期待しつつ、ベルをめぐる様々な話をし尽くして、満足感のうちに店を出るときに、唯一「期待と違った」ことがあったとすれば、それは「のんちゃん」という店名の由来だった。

「のんちゃん」は、奥さんやお嬢さんとかのお名前ではなく、

大将のニックネームだとのこと。

 「このおじさんが、のんちゃん・・・」

 や、まぁ、それもアリなんだが(笑)。

 奥さんも、

「さっきからお客さんたちが『のんちゃん、のんちゃん』って言うので・・・」

と、相手もいろいろと我々のトークが気になっていたご様子(笑)。

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ともあれ、皆さま福井にお越しの際はぜひ「のんちゃん」へ

そしてまた結論から述べると、この福井遠征において数少ないポジティブな想い出がこの「のんちゃん」での夜だったわけで、翌朝向かった丸岡スポーツランドサッカー場において、のんちゃんも先発した湯郷ベルは0―5でINAC神戸に大敗した。

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特に最初の失点が、「あれ? 入ってないんじゃないの!?」と観る者を動揺させるような不思議なゴールであり、目の前でそれを見ていたベルの選手たちにとってはおおいに動揺をもたらすものだったであろう。それゆえに非常に難しい入り方を求められた試合となった。その影響が前半のあいだ重たい影となりつづけて5失点につながった感じであった。後半だけをみればスコアレスで耐え忍んだわけで、なんとも最初の1点目が悔やまれる試合であった。

そして(前回の大嵐の五色台の試合を思うとなおさらに感慨深いことに)久しぶりにのんちゃんのプレーがフルタイム観られたことに一定の満足感があったものの、出待ちをしながら「あぁ、また負け試合の後に会うことになるなぁ」と、そのことばかりが気になってしまっていた。

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真剣に闘ったぶん、負けた試合・・・ましてやこの日のような徹底的な敗戦を喫したあとに、笑顔をつくってファンに応対できるような気分ではないし、その心情が素直に表に出てしまうのもまた彼女の真摯な人柄を映し出していると思う。

なので言葉をかけるのもいろいろと悩んだが、おつかれさまでした、身体気をつけてください、ということだけを述べて差し入れを渡した。
これで福井の話は終わり。

オチとしては・・・「のんちゃん」の箸袋に、明日本人に会ったらサインをもらうと意気込んでいたのは、きっと梅酒を飲み過ぎていたから・・・としておこう。

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(というわけで来年もこのブログをよろしくおねがいします。)

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2017年12月14日

横断幕と暮らす日々(その4)

車の外は大雨。風が強まってきた。

十月最後の日曜日、朝から淡路島の五色台にきていた。

スマホのアプリで雨雲レーダーをみる。真っ赤な雨雲がやってきている。

台風が近づいてきている。




こんな日にやるのか、試合。

湯郷ベルは皇后杯の一回戦を迎えていた。

この日までの展開を説明すると、ベルはオルカ鴨川を津山で迎え勝ち点3をもぎとった。ただし藤田のぞみはベンチ入りしなかった。
(さらにいうとこの日の個人的ハイライトは、ホームゲーム恒例の選手からのサインボールの投げ入れであった。偶然にも藤田のぞみが放ったボールが私の目の前にうまく飛んできて、まさか来るまいと油断してデジカメなんかを手にしていた私は見事に取り損ね、あえなく前方の人に渡ってしまったことだった)

リーグ最終戦は勝つか引き分けで2部リーグの残留が決まるという試合となり、相手は同じ岡山の吉備国際大学シャルム。そしてこういう日に限って私は仕事で行けず、そしてこういう日に限って後半から藤田のぞみが久しぶりに試合に出たようで、その姿を見届けたかったと、この日行けなかったことを悔やんでいた。この試合にベルは勝ち、なんとか無事に残留を果たしたので、現地にいるであろうサポーターの方々の安心した様子を想像していた。

そうして3週ほど空いて、今度は皇后杯に向けての戦いがはじまった。初戦は宮城県の聖和学園高校との試合となり、台風の襲来と完全にマッチアップしてしまい、それでもこの女子サッカーの業界は、当然のように日程を消化するべく、試合が行われるに至った。9月に来たばかりの五色台は、あの日とはうって変わって暴風雨が吹きすさぶ、寒く冷たい場所となっていた。

例によってM・フィオリオ氏の運転により朝早く現場に到着した。ひどくなる雨をただ眺め、横断幕の掲出が行われるまでは一歩も車の外に出るつもりはなかった。
ただフィオリオ氏は横断幕の責任者でもあるので、いまの状況やこれからの予定を確認するためにレインコートに着替えて競技場の事務所のほうへ向かって行った。私は車内に残り、グッタリとなっていて眠りかけていた。駐車場にはちらほらとサポーターの乗る車が増えてきて、例の「アンチ銀河系おじさん」も車から出てレインコート姿で事務所のほうへ歩いていくのが見えた。やがてベルの選手を乗せたバスが到着したこともうかがえた。

 申し訳ないがこの豪雨ではギリギリまで車内に留まっていたかった。ボンネットに跳ねる雨音は心地よいけれども、ワイパーが止まっているせいもあり、窓ガラスの向こうの景色には、このあとここでサッカーが行われることが非現実的なことのように思わされる。

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 すると選手バスのお迎えから戻ってきたフィオリオ氏からの報告。











「のんちゃんが、来てない!!」


 うわははははははははは。


 笑うしかない。

 ていうか、もう、この状況慣れた(笑)

 いやはや。




 ますます車の外に出る意欲を失っていったわけだが、前回のこの五色台でもそうだったように、のんちゃんがいないからといって「フジタノゾミ横断幕」を出さないわけにもいかない。私がここに来ているのは横断幕を掲げるためである。開き直り、レインポンチョを取りだして、けたたましい雨の音が続く世界に突っ込んでいく。

 メインスタンドの屋根部分から数名で手分けして横断幕の束を手に持って、さっそく水浸しになっている泥だらけのゴール裏にたどり着く。横断幕を地面に置くわけにもいかないが、幸いゴール裏に手すりがあったのでひとまずそこにひっかけて、1枚ずつ金網に寄せてロープでくくっていくことになった。

 しかし、突風にあおられて作業がまったくスムーズにいかない。横殴りの暴風雨、そして手元の冷たさがさらにロープの扱いを難しくしていく。

 笑える状況でもあり、必死でもあり、この状況がなんだかだんだん「軍事訓練か!?」とすら思えてきた。容赦なく風、風、風にあおられ、土砂降りの雨、雨、雨に打ち付けられ、そして地面はどこまでもグチャグチャ。それでも急いですべての横断幕を金網に縛り付けていく。

 最もつらいのは、大切な横断幕がさっそく雨水にさらされていくことだ。試合のあと持って帰ってすぐ乾かさないといけないことも思うと、仕事が増えることの気の重さが、雨水を含んだぶんだけのしかかってくる。

 フジタノゾミ横断幕もサポーターのみなさんの協力を得て無事に掲示。やむことのない雨のなか、レインポンチョを着込んだ状態から苦労してスマホを取り出して写真に収める。

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 そうしてメインスタンドのわずかな「屋根ありゾーン」に戻る。とはいえ横殴りの風雨はすべての場所に入り込んでくる。その狭いエリアのなかに立ち入り禁止コーンがおかれ、そのなかで選手たちがアップをしていた。そのすぐ脇に我々もたたずみ、このひどい天候についての印象を語り合ったり、選手のアップの様子を見守っていたりするのだが、あまりにも至近距離でアップをしていると、真正面で向き合うのも気が引けるため、サポーターたちも背を向けていたりする。

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 ピッチ内ウォームアップを経て試合がはじまるが、雨風がさらに激しくなり、もはやこれはボールを扱うことのできる環境ではなかった。そうなるともはやサッカーというより気持ちの勝負みたいなところであり、高校生相手に激しく当たってボールを奪い取り、ゴールに襲いかかるベルの姿があった。しかし水浸しのピッチなのでボールが思うように動かせない。もどかしいなか先制点をあげて、そのまま前半終了。

 しかし後半になるとなぜか押し込まれる時間帯が多くなり、そうこうしているうちに失点。そうなるとこの状況下では、なでしこリーグのチームであろうが高校生のチームであろうが、ボールがまともに動かない以上、完全に五分五分の分からない試合になっていく。
 そして嵐はやむことなく、ピッチの上も観客席も等しく風雨は打ち付け、私は人生でこれほどまでに「もう早く試合終わってくれ」と思ったことはない。この状況で試合をやることはあり得ないと本気で思いながら、「ひょっとしたらこの試合は落とすかもしれない」と感じていた・・・が、その後セットプレーからの展開で立て続けに2点を入れ、なんとか自力の差をみせて決着をつけた。暴風雨にむかってガッツポーズをともにした周囲のサポーターたちの安堵感たるや!

 聖和学園の選手たちへのエール交換などが行われ、それぞれの健闘をたたえつつ。ただ今日だけはこの時間をともにした観客席すべての人に、本当にお疲れさまと言いたかった。何がここで行われていて、どうして我々はここにたたずみ続けたのだろうか・・・(そして、のんちゃんはいない 笑)そういう放心状態だけが残った感じ。

(そして狂気の沙汰はさらに続き、雨で泥沼のようになったピッチが休まる間もなく、このあと第二試合でバニーズ京都SC対ニッパツ横浜FCシーガルズの試合が行われたのであった・・・)

 片づけも早々に、「では次は福井で!」といって各々が帰る。次はINAC神戸との試合が決まった・・・福井県で。

(つづく)

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2017年10月28日

横断幕と暮らす日々(その3)

 岡山にあるサッカークラブを応援しにいくということは、京都在住の自分にとって「ホームもアウェイもぜんぶアウェイ」みたいな距離感を動くことになる。そうして「毎週末が小旅行」みたいな生活感覚になっていく。

 そんななか次の試合はスペランツァ高槻との試合、会場はJ-GREEN堺。前から行ってみたかったナショナル・トレーニングセンターであり、もはや関西にあることにより電車とバスで行けるということだけで、ものすごく近所に思える。

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 しばらく何も情報がない状況だったが、数日前に藤田のぞみはチームの練習に合流しているとの知らせを受けて安心し、この日を迎えた。ケガであったのならばこの日の試合に出場できるとも思えず、そもそも堺にも来ないだろうと思いつつJ-GREEN堺にくると、チームに帯同して、練習を見守っているのんちゃんの姿を確認することができた。彼女はちゃんとチームとともに生きている、もはやその状況を確認するだけで十分だった。そして彼女が熱心に練習を見守るのと同様、これからの2時間はピッチの上の選手たちに集中し、良い試合になることを祈るのみだった。

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 そして見慣れた顔が客席に集まっていて、皆がそれぞれ自分なりのスタンスで試合を見守っている状況にも慣れつつあった。いつも私は友人のフィオリオ氏、そしてMさんとぼにたさんとであーだこーだ言いながら試合を観ているエリアに加えていただいており、そしてその近くを試合中でもウロウロしながら声援を送る「アンチ銀河系」と呼ばれるおじさんがいて、この人の軽妙な言動にフィオリオ氏らから皮肉まじりのキビしめなツッコミを入れられていたり、それでも負けじと何かにつけてからんできたりする様子をみるのも、このごろは楽しく感じられるようになった(とはいえここで具体的に事例をあげられるほどに、コアなサポーター同士が繰り出す話の中身を理解できていないことは当然多いわけだが)。

 話しかけてくる会話の内容はうまく飲み込めなくても、いつも陽気な気分であることだけは分かるこの「アンチ銀河系」おじさんは、ハリマアルビオンと湯郷ベルの両方のサポーターとして活動しているとのこと。ユニフォームの背中には背番号ではなく赤いプリント文字で「現場が1番 選手が1番」とゴシック体で力強く書かれており、そうした想いを主張する背中は選手たちのサインで埋め尽くされている。しかし「Aが1番、Bが1番」だとどちらが1番か分からないので論理的には破綻しているのだが、そういうことをいちいち気にしていたら、毎試合「現場」に現れて声援を送り続けることなんてできないのだろうと、むりやり自分を納得させている。

 

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 試合のほうは、積極的に前からプレスをかけにいく湯郷ベルが試合のペースを握り、いい時間帯をたくさん演出して3ー1で勝った(それはあたかも、何度冷たくあしらわれても果敢にいろんなネタでからんでこようとするアンチ銀河系おじさんの不屈のメンタリティを、この日のベルの選手たちが見習ったかのごとく粘り強いプレッシングを通して体現していた・・・や、ウソだけど)。負けたスペランツァはチャレンジリーグへの降格という憂き目にあってしまったが、湯郷にしろ高槻にしろ、厳しい台所事情がそのまま順位に反映されているようにも思える。

 

 そんなわけで、ひさしぶりの勝利にベル側の出待ちの現場も和やかな感じになっていて、乗るはずのバスの周辺では、もはやどこに選手がいてどこに親類がいてどこにサポーターがいるのかよくわからない状況でそこかしこに談笑の輪が広がっていて、なんだかハートフルな初秋の夜だった。そんななか私も無事にのんちゃんにお目にかかれて、この2試合ずっと渡せなかった差し入れを手渡すことができた。

 のんちゃんが不在だったこの2試合のうちに、もし早めに渡せるのであれば渡したかったものがこのときの紙袋のなかに別途入っていて、それが『旅の指さし会話帳 ブラジル』だった。というのもこの夏にブラジル人のフェフェという新加入選手がチームに合流したのである。監督の亘さんは南米生活が長いのでコミュニケーションはすぐ取れるのだろうけど(彼女のために通訳がつくような余裕はクラブにはないとも思えるし)、それでも選手間だけでフェフェとコミュニケーションを深めていくことが、低迷状態をはやく脱したいチームとしても喫緊の課題だと思えたので、我らが副キャプテンののんちゃんにこの本をぜひ渡したかったのである(そして、正式には藤田のぞみにとってこれが初めての外国人選手のチームメートとなるはずなので、そのことも含めて)。

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 類似書はたくさんあるものの、この「指さし会話帳」のシリーズは実によくできていて、手書きの文字やイラストの味わいがファニーで、使い勝手の良さと親しみやすいポップさが絶妙に組み合わさっている良書であることを知っていたので、この「ブラジル編」を差し入れのなかに入れようと思い立ったのだ。こういうのがあれば、今シーズン総ざらいにリセットされて始まって、なんとかチーム内の関係性をいいものに構築しようと苦慮してきた(と伺える)ベルの選手たちで、今度はポルトガル語になじんでフェフェとの関係性をさらに深めていってもらえたらという期待も込めさせていただいた。

(サッカー関係者必読の漫画『ジャイアントキリング』でもETUのメンバーでは1人だけ外国人選手としてブラジル人のガブリエルがシーズン途中から加わるが、なんとなくその感じも想起させる)

 

まあ、外国語の会話帳を差し入れにすることについては冒険心半分と、ちょっと恐縮する気分が半分ぐらいあった。でもそうやって、やや変わった角度から選手を応援していくことを探求してみたいと思うし、だからこそカタカナの横断幕だって作りたくなる。

 

というわけで、当日の現場で「ぜひこれを活用して!」と渡した紙袋の中にある『指さし会話帳』のことを述べたら、袋の中にある本を確認したのんちゃんは、きょとんとした表情で、たまたま近くにいたフェフェを指さして無言で微笑。

 

 いま思うと、本の題名が『指さし』だから、フェフェを指さしたのだろうか!? ・・・そのことにツッコミを入れるべきだったかと、いまはとても悔やんでいる。

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2017年9月28日

横断幕と暮らす日々(その2)

「カタカナのやつですよね?」

このセリフを何度もアタマのなかでリフレインさせつつ日常生活を過ごし、どうにか今後の試合に合わせて動けるように日程調整をしていった。次の試合は6日後の9月9日、淡路島の五色台運動公園「アスパ五色」でのハリマアルビオンとの一戦だった。どう考えてもクルマでないと行きにくい場所で、毎度のことながらフィオリオ氏の運転にお世話になる。

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 明石海峡大橋をわたり、海の青さを心地よく眺めながら、最後は高台にたどり着き、いくつかのグラウンドが併設されている運動公園についた。

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 男子大学生と思われるサッカーの試合が遠くのグラウンドで行われていて、ホイッスルの音やかけ声以外は何も聞こえない、海辺の静かな競技場。

 そこへベルの選手を乗せたバスが到着した。熱心なサポーターがバスの脇に立って、降りてくる監督・選手たちに声をかけたり荷物の搬出のルーティンを見守っていた。私にはその距離感が落ち着かないので、そうした様子を遠くから眺めていた。

 

するとそれらが終わったあとに、サポーターさんやフィオリオ氏から

「のんちゃんが来ていない」

ということを知らされた。

 

 

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 ただ不思議なほどに、私はその知らせを冷静に受け止めていた気がする。きっとそれは、藤田のぞみを応援する者としての矜持みたいなもので、「そもそもプレーが観られること自体が奇跡」だと思っている部分があるからかもしれない。一度はすべてを諦めたことなのであって、こうして「応援できる機会」という可能性が残されているのであれば、そこにまずは全力で感謝するしかないのである。

 

 それ以上のくわしい情報がないので、そこについてはひたすら気がかりではあったが、気持ちを入れ替えて予定通り横断幕も張り、「ここにはいない選手」であっても、それはそれでひとつの応援なのであると自分に言い聞かせて、競技場の周りをぼんやり歩いてみたりして試合開始までの時間をすごした。

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 試合は先週の大敗の影響が心配されたが、気持ちの入ったプレーをみせて、スコアレスドローではあったが内容は格段によかった。

 

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 試合終了直前に、この日の観客数は323人とのアナウンスがあって、ちょうど一ヶ月前の自分はロンドンにいて、チェルシーFCのプレミアリーグ開幕戦を3万人を越える観客のひとりとして観ていたことに思い至った。しかし目の前で展開されているサッカーには、単純に100分の1という観客数の比率では語り得ない激しさとひたむきさがあって、プレミアリーグであろうがなでしこリーグ2部であろうが、私にはサッカーにおける「違い」がほとんど感じられなかったし、そのどちらも、決して解けない永遠の謎としての「サッカーはいかにして守り、そしてゴールを奪うか」を示しながら、そこにあると思った。

 

 そして一ヶ月前のスタンフォード・ブリッジで、私はそこにいない元キャプテンを讃えるバナーを掲げていて、そしていまは、ここに来るはずだったかもしれない藤田のぞみというフットボーラーのことを想いながら、彼女の名前がカタカナで書かれた横断幕を、淡路島の海辺の競技場のメインスタンドから遠目に眺めていたりする。

 

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 ちなみにこの試合のあと、フィオリオ氏らは徳島までクルマで出て一泊したのち、別ルートで帰るというので、私もそれにならって夜に徳島へ移動して一泊して、翌日の朝に自分は高速バスで関西に戻ることにした。すると自分が予約した徳島のビジネスホテルのすぐ目の前に「のぞみ病院」というのがあって、このオチはどうなんだ、となった。そんな一日。

 

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↑ホテルにて。J-SPORTSオンデマンドでチェルシー×レスターの生中継が観られてよかった。

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 果たして次の試合、津山でのホームゲームには彼女は戻ってくるのだろうか。そのことばかりが気がかりだった。これがJリーグであれば、ケガ人情報などはすぐにオフィシャルの情報として発信されるが、このカテゴリーになるとなかなかそこは難しいようで、よりいっそうファンの不安をかきたてる。

 ましてや藤田のぞみの場合は「ケガによる離脱」と「それ以外の事情での離脱」の可能性をどうしても考えざるを得ないため、なおさら情報がない状況下では不安がつのる一方である。

 

 さらに憂慮すべき点は、この週末に向けて大きい台風がやってくることだった。なでしこリーグは日程消化を優先せざるを得ないので、あまり台風では中止にならないことが多い印象がある。

 

 来るかどうか分からない選手のために、台風に突っ込んでいく。

 来るかどうか分からない選手の横断幕を、暴風雨のなかで掲示しにいく(そしてずぶ濡れの横断幕を持って帰って、乾かす・・・)。

 こうしたことも、先に述べた「覚悟」のひとつであった。

 案の定、前日になって「明日の試合開始時間が台風の影響で15時から11時に変更になった」との連絡が入る。帰りは一人で高速バスに乗る予定だったので、いそいでチケットの払い戻しと新規予約に追われる。当日は朝5時にフィオリオ氏のクルマで拾ってもらい、津山市陸上競技場へ。まだ暗闇の残る高速道路に入ったとたんに、フィオリオ氏から「今日も来ないみたい」と教えてもらう。別にそれで私はあらためてショックを受けることもなく、やはり「矜持」に従ってその事実を受け入れた(と、カッコ良い感じに書きたいところだが、実際はクルマのなかでウダウダと我が身を笑い、八つ当たりをし、ボヤきまくっていたことをお伝えしておく)。

もはや横断幕を掲げるためだけに、台風の迫るスタジアムに向かっていく。酔狂のなせるワザ。それでも早朝の大阪にひろがる空模様は美しく感じられた。

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 津山市陸上競技場も初めてくる場所だった。そこに朝も早くから(台風がくる前にもかかわらず)湯郷ベルのサポーターたちは日本中どこでもいつも通り早めにやってきていて、もはやその姿勢には尊敬の念を覚える。そうして予定通り横断幕を張り出した。 

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 この日の対戦相手はリーグ優勝を狙っている日体大フィールズ。元なでしこジャパンの荒川がここで今プレーしており、随所で巧いボールキープをみせ、アグレッシヴに攻撃にからんでいた姿が印象に残る。そしてベルはここぞのところで惜しいミスが随所にみられて自ら試合を難しくしていった印象で、結果は0ー2で負け。今年まだ私はベルのゴールを観ていない。 

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 藤田のぞみがいない状態での二試合を観ているうちに、他のベルの選手たちの顔と名前と背番号にもだいぶなじんできて、なんだか「急に増えた親戚」のような感じで選手たちやサポーターのみなさんを見ている感じがしている。毎週末同じメンツで、場所を変えて顔を合わせているのだから、それは今の生活環境下で思えば、両親や姉たちよりもよく会っていることになる。

 そして忘れてはならないのは、監督はあの亘崇詞さんなのである。J-SPORTSで海外サッカーを観ている者として、応援せずにはいられない人であり(そういう意味でももっと早く現地で応援にくるべきだったのだが)、彼がいまこのクラブについてどう思っているのか、そこも強く興味をかきたてられるところである。

 

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↑台風で駅のコンビニも閉まる。

 ローテンションな気分になる試合ではあったが、この日良かったことといえば、試合のあいだ雨がほとんど降らなかったことである。横断幕も濡れずに済んだ。この日を見込んで事前にレインポンチョを買っていたが、使うこともなかったなー・・・と思いきや、最後の最後で自宅の最寄り駅に着いたときに、人生でもあまり記憶にない「いかにも台風らしい暴風雨」に見舞われ、結局そこでレインポンチョの出番となった。カバンのなかの横断幕を死守しつつ、そして心が折れないように何かを信じつつ、この週末の最後はずぶ濡れのポンチョ姿となった。 

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(つづく)たぶん。

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2017年8月21日

チェルシーの開幕戦でメッセージ・ボードをあげに行ったらマスコットのライオンにおちょくられた件など

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この夏にロンドンに行った大きな理由はもうひとつのブログに書いたのだが、タイミングよくプレミアリーグの開幕戦にも合わせられたので、前回の記事で予告したとおり、例のメッセージ・ボードを持ってチェルシー×バーンリーの試合をスタンフォード・ブリッジで観戦することができた。

まずこのボードの件について。結論からいえば、テレビ中継に乗っかることはできなかった模様。
ただ、試合前のアップの段階で、北側のチェルシーFCサイドの最前列に陣取って、他の客といっしょにアップの様子を間近で見届けながらひたすらボードを掲げていると、少なくともその前を通ったすべてのカメラマンからは、確実にボードの写真を撮影してもらえていた。

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周辺にいたサポーターも、何のボードを見せてるの?と声をかけられ、内容が分かると納得してくれた。こちらの英語力のなさゆえ、それ以上の有意義な会話を続けることは難しかったのだが。

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あとはこれね、マスコットキャラのBRIDGETちゃん(女子)。

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実はスタジアムに入る前も、彼らは周辺でいろんなサポとの写真撮影にいそしんでいて、このボードを取り出してスリーショットをスタッフさんに撮ってもらっていた。

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ほどなくこの場所でも再会。
すると私のボードを「これ貸してっ」と取り上げ、そのまま走り去っていった(笑)

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あとで戻ってきてくれたのがかわいらしかった。

そんなわけで、北側エリアはチェルシーの面々がアップしている状況がしっかり見えるし、慣れてるお客さんは試合開始ギリギリまで来ないし、最前列のお客さんから「どいてよ!」とか言われることもなく、アップの時間だけはどんなに前にいてても特に怒られない。

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というわけで、やはりボードは持って行ってよかった。

試合開始前になれば自分の席に戻ることになるわけだが、さすがに混みあう状況では長く掲げられるのはためらわれるし、ボードのメッセージ内容も試合が始まってしまえばあまり意味がないものなので、試合開始ギリギリのところで畳んで閉じておいた。

で、かつてチェルシーのスタジアムツアーでたまたま一緒になったご縁で知り合えたConsadole at Stamford Bridgeさんご夫妻から、その試合後にLINEメールで連絡が入り、私の写真をインスタグラムにあげている、熱心なジョン・テリーのファンの人がいることを見つけたようで、教えていただく。「おおっ、つまりどこかの媒体では流通しているのか!?」となった。
(ちなみにこの人、テリーの妻か?って思うぐらい、テリー一色のインスタを展開していた・・・)

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んで、帰国後にいろいろ調べてみた。
私が分かった限りでは、デイリー・メールのLIVE更新のページで、このボードのことが紹介されていた模様!

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↑トップページ。この日の模様をリアルタイム速報で伝えるページっぽい。

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↑こんな感じ。

で、有名な写真エージェントのGetty Imagesの関連で、ジョン・ワルトンさんというカメラマンが私の写真(上の2バージョン)をそこに納めてくれていた様子。

以前のクラブワールドカップのときもそうだったが、こういうご縁でたまたま自分を撮影してくれたフォトグラファーの人そのものを検索すると、いろいろ彼らの活動の様子がわかったりして、ツイッターのアカウントも持っていたりするからフォローさせてもらったりして、「自分を撮影してくれたカメラマン」という位置づけで、その後も追いかけていける楽しみが増えるのである。海外サッカー観戦の場における、こういうアピール行為の副産物といってもいいだろう。

他にもどこかでこのボードのネタが使われていたらいいなぁと願いつつ。
(一番いいのはテリー本人にこの写真が伝わることなんだが)

まぁ、すでにいない元キャプテンのネタなので、あまりオフィシャルには扱いにくいネタでもあるだろうから、難しいところではあったかなー、とも。

あと反省点としては「チェルシーのユニを着ていたほうがよかったのか?」という点であるが、実際に用意はしていたのだけど、気候的に寒かったので、長袖のままでいいか・・・となったのであった。でも今から思えば「長袖の上から着ればいいやん」と思うのだが、どういうわけか現地ではその発想にならなかった。ボード掲げることで一杯一杯だったのか。

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さて、その他の件について。

この試合は結果的に、歴史的な記録としては
・前年度チャンピオンチームが翌シーズンの開幕戦で3失点したプレミアリーグ初の試合
・前年度チャンピオンチームが翌シーズンの開幕戦で2名の退場者を出したプレミアリーグ初の試合

・・・とか、他にもあったかもしれず(場合によってはプレミアリーグではなく、100年以上にわたるイングランドのトップリーグ全体の話だったかもしれないが)、まぁいわゆる「とんでもねぇ試合」だった。

そもそも開始早々にアロンソがすぐイエローカードをもらった時点で「今日の審判って・・・」と早めに気づくべきだったし、私のいた西スタンド下段の空気感でいえば、その直後の前半10分すぎ(だったよね)に訪れる「新キャプテン、一発レッド退場」っていう状況も、どこかしら醒めた目で「あ、そうくるか」的な、なんともいえない雰囲気があった気がする。もちろん激しいブーイングもあるにはあったのだが、私としてはこんな早々にさっそく試合がガタガタになるのはどうかと思えるので、もうちょっと審判さん空気読んでよー、てか周囲のサポもわりと大人しく受け入れるわけ、このジャッジ?(まぁ、たしかに危ないタックルだったけども!?) という気持ちではあった。

 なにより若手でいきなり開幕スタメンに抜擢され、試合前のアップで緊張感が隠しきれなかった感じのボガくんが、この退場のせいですぐにベンチに下げられてしまったのが実に可哀相でしたよ・・・新キャプテン、ケイヒルの苦すぎる船出となってしまい、それはそれで見応えはあったんだけども。

 あとケイヒル退場の思わぬ副産物というべきか、代わりにクリステンセンくんが穴埋めをすることになり、まさかこんな早くに生観戦の場でクリステンセンを観ることができるなんて、という気分。

 まぁ、試合はこんな調子でずっと審判のジャッジにイライラさせられっぱなしの展開。こういうとき近くに声がやたら大きいサポーターが延々ヤジっててちょっとうるさい、っていうこともよくあるが、幸いこの日の西スタンドはそんなにヒドくなく、もしかしたら一番ハッスルしていたのは、私の目の前に座っていたラテン系の女の子だったかもしれない。

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狭い座席スペースのなかでもムダのない動きでダイナミックに腕を振り回し続けて審判のジャッジにあらゆる文句を叫び続けていた彼女の姿をみるにつけ、こういうパッションに乏しい私なんぞはいたく感銘を受けていた。

 で、周知の通りこの試合では後半途中になって新加入のFWモラタが登場し、よけいなプレーでイエロー2枚目をくらったファブレガスが退場して9人になった状況となっても果敢にゴールをめざし、モラタの1ゴール1アシスト(と言っていい絶妙な落としを、ダヴィド・ルイスがうまく蹴り込んだ。しびれた)で2ー3まで追い上げた。なのでスタジアムの雰囲気も一転してノリノリな感じになり、タイムアップまで躍動感がみなぎる良い感じであった。まぁ、前半の時点で帰りたくなるような試合を、ここまで楽しくひっぱっていけたのはよかったし、決して悲観してはなかった感じ(だってアザールとかいなかったもんね、っていう言い訳)。

そして試合後に最後までピッチにとどまり、悔しさをかみしめつつ、まんべんなく客席に向かって拍手をつづけていたアスピリクエタ、本当に評判通りの人格者だな~キミは。

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 そして毎回感心するのが、終わったあとの客ハケの良さ。あっという間にスタンドからいなくなり、近所のパブやら歩き帰り組やらで散り散りになり、ちょっとスタジアムのショップをみて(グッズのバリエーションが乏しい印象は変わらず)、そしてフルアム・ブロードウェイの駅まで歩いて駅ナカのドラッグストアとかでちょっと買い物してから改札を通ったら、まったく混雑を感じることなく地下鉄に乗って帰れたレベルだった。

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↑ウイリアム・ヒルと提携が始まったようで、スタジアム内でブックメイカーを賭けることができた(記憶ではかつて西スタンドにはブースが無かった気がする)。結果はこちらも惨敗・・・何せ、「ケーヒルがゴールを決める」に賭けてたりする(笑)

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2017年3月 9日

「奇跡を見逃したことを忘れないようにする」

CLの試合日程も最近は工夫されて、ベスト16でも1日に2試合だけやるような感じになっている。そうして今朝も、最初から観るのではなく、あくまでもいつも通り起きる時間帯にテレビをスカパーにあわせ、後半からの様子を、あたかもラジオをきくように、適当に眺めていた。どちらの試合を主にチェックするかについては、まだ点差がつまっているドルトムントとベンフィカのほうを選んだ。

たまにもうひとつの試合を見ていて、バルセロナが勢いよく得点をあげていて、しかしここにきて痛恨のアウェイゴールを許してしまい、その時点で私はチャンネルを戻したのだ。

もうひとつのほうも、気がつけばドルトムントが得点を重ねていて、そして残り20分ぐらいで香川が投入されていて、そちらのほうをずっとテレビでつけながら、歯を磨いたりしていた。

CLの放送終了後にはいつものように、過去のセリエAの名選手によるゴール集が流れていた記憶がある(この映像にでてくるジダンのプレーは、いつみても本当に華麗で見事だ)。
このとき、いつもはもうひとつの試合についてもハイライトを確認するのだが、なぜかこの朝はそのままテレビを消して家を出た。

それがこの今朝のすべてだった。

こうして、わずか紙一重のところ、テレビのチャンネルのひとつ裏側で、私は「奇跡」を見逃したのである。

サッカーの神様がいるとしたら、人類にいくつかの教訓を残すものと私は信じている。そう思える試合のひとつであろう。1999年のCL決勝のマンチェスターユナイテッドの大逆転劇に並ぶほどの。
しかも今回はその点差をはるかに上回る、文字通りの奇跡的な逆転劇、もはや奇跡という言葉でしか言い表せないのがくやしいほどの、とてつもない歴史的瞬間が、奇しくも1999年と同じカンプノウで起きていたのである。第一戦0-4から、ホームでアウェイゴール1点を奪われた状況での6-1のミラクル、二戦合計6-5。バルセロナ、勝ち上がり。あの0-4を受けたあとのルイスエンリケ監督退任表明から、いったいこの展開を誰が予期していたか。

というわけで、私はこのゲームを見逃したことをずっと悔しい気持ちで覚え続けることになる。昨年のレスターも奇跡だろうし、今回のことも、それはたしかにこの世に存在した奇跡であり、サッカーという物事の姿を借りてもたらされた奇跡なんだろうと思う。

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2016年11月 3日

モウリーニョのユナイテッドに4-0で勝ったことについて

 大阪マラソン応援企画の予告記事を出しているあいだに、プレミアリーグではチェルシーがホームでモウリーニョ監督のユナイテッドに4ー0で勝つという、クラブの歴史にとってのひとつのハイライトとして語り継がれるであろう試合があった。

 スタンフォード・ブリッジではモウリーニョ監督にたいして「あなたはもうスペシャル・ワンではない」というチャントも歌われたらしいけれども、でも多くのチェルシーサポーターにとっては今でも畏敬の念を抱かずにはいられない人物であろうし、だからこそ今このクラブが全力をかけて倒すべき相手でもあった。とはいえ4ー0は出来過ぎの部分もあり、相手チームにはウェイン・ルーニーがいなかったのも大きかった。開始早々のペドロの先制点は、マルコス・アロンソの(移籍時から期待していた通りの)精度の高いラストパスに感嘆させられた、まさに芸術的シーンだった。

 そしてこの歴史的な結果をあらためて振り返るに、ひとつ私が強く感じ入る部分があるとすれば、それは「モウリーニョ監督のユナイテッドに勝ったこと」ということよりもむしろ、「ジョン・テリー抜きで勝ったこと」のほうに、より重心を置きたいわけである。この試合の歴史的意味があるとすれば、そこじゃないかと思えるのだ。21世紀初頭のチェルシーを語る上で、今回の試合がひとつのポイントになるとすれば、僕らの視点のなかに、赤いチームを率いて戻ってきたモウリーニョの憮然とした表情と、そしてジョン・テリーがベンチでこの勝利を見守っていたこと、このことをできるだけ忘れないでおきたいのである。「歴史」というのはこうして静かにゆっくりと何かを変えていくのだということを。

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2016年9月10日

さっそくのマンチェスター・ダービー感想

最近のこのブログでは観た試合のことをあえて書かなくなったのだけど、今シーズンのプレミアリーグを語るうえでは最も重要な試合なので、マンチェスター・ダービーを観ながら感想をメモったことを以下列挙。(すぐ試合のこと忘れるから自分のためのメモとしても)

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モウリーニョの着こなしになんとなく違和感。

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シルバうまいな。アグエロ不在が残念。

数年前からこのカードお客さんの雰囲気あまりそんな殺伐としていないのが気になる。

本当に申し訳ないけど、イヘアナチョってどうしてもストライカーの名前じゃない気がする。

あと、それいうとノリートも、日本人的には神社でお参りしている気分を喚起させて、ストライカーっぽくない。

でも結果的にタテポンでデブルイネのゴールで決まるという「イングランド臭さ」丸出しのゴールだったのがウケましたよ。モウリーニョ×ペップの「緻密な戦術家による名将対決」とか、結局はアラダイス監督のタテポンサッカーに屈してしまうかのような。

自分の手元にきたスローインのボールをすぐに返さなくてルーニーにイラッとさせたグアルディオラ監督、このへんの駆け引きはさすがに修羅場をたくさん経験した元・選手としての凄みだったり「一枚上手感」があるんだよなぁ。

ムヒタリアンをみると一瞬「あれ、ディ・マリア」と思ってしまう傾向。

2点目のときもそうだけど、なんで簡単にバイタルエリアに入らせてしまうのか赤デビル守備陣、らしくない。

イエローもらった無茶なタックルはともかく、シルバはやはりすごい。守備もきっちりするし、攻撃時の味方のサポートの位置どりとか細やかな配慮を感じる。こういう人がいる職場は働きやすいはずだ。

GKブラボ起用さっそく失敗か、ジョーハートそんな悪くないと思うんだけどねぇ、という赤デビル1点目。

前半アディショナルもブラボのタイミング中途半端な飛び出しでピンチに。もしかしてブラボにも、前に指揮したチームのキーパーと同じような動きをグアルディオラが要求していたら・・・と想像すると、それは酷なリクエストですよ。

後半。
ラッシュフォードみたいな若造を入れてさっそく流れが変わる、っていうのも、マンチェスターダービーにおいては、なんとなく腑に落ちない気分でいるの僕だけじゃないですよね(ていうか、やっぱりここはマタじゃないんだ 笑)。

「高みの見物」という言葉と似たような意味で「高みから見るクラッテンバーグのジャッジ」は、悪趣味な笑みを浮かべて楽しめる感。
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ポグバは良いんだけど個人技の披露で留まっている感じ。

69分、ラッシュフォードのがんばりをイブラが阻止。

最後まで攻撃的選手を投じるモウリーニョ。こういう展開になるとはなー。

てか、前を向いたシルバとデブライネのパス交換がことごとく成功している印象。なぜここを止められないか(それだけ、二人のボールの受け方が巧いんだろうけど)。

ちょっとグダグダしたアディショナルタイムを経て1-2でタイムアップ。

いや今年のシティは強そうだけど、キーパーが穴だということを示しているな。まぁ一戦だけ観て断言してもあれですが。

いきなりのビッグマッチ、観やすい時間帯で助かった。純粋に楽しみましたよ。次のシティのホーム戦がまた楽しみに。

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