『幻のサッカー王国』 宇都宮徹壱
1998年W杯の直前までにおける、旧ユーゴ連邦をめぐるサッカー探訪の旅行記。本職のジャーナリストではなく、何かに突き動かされるように仕事を辞めて写真家としてやっていこうという、その勢いだけで飛び込んだバルカン半島で、著者が観て聞いたことだけを記録している。著者自身も言っていることだが、まったく当てのない旅行においても、自らの運命に忠実でいると、実にいろいろな「必然性」が、偶然を装って、運命を彩ってくれている。サッカーに対する愛や人々に対する尊厳だけを賭けた決死の旅は、その真摯さに応じた、美しい運命を与えてくれている。
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