フィリップ・トルシエ 『情熱』 NHK出版、2001年
今だから読もうトルシエ本、というフレーズを思いつくが、単にいままで面倒だから読んでいなかっただけ・・・。で、この監督は、自分の考えていることを忠実に実行に移すということにかけて、広い意味でのマネージメント力が優れていたなぁと改めて実感。そして何より印象深かったのは、細かい采配においても、そこに「メッセージ性」を与えることを心がけていたということである(中山ゴンを途中で投入して場を盛り上げた後に、柳沢がPKを取るも、あえてそこではゴンにPKを蹴らせた、など)。また、積極的に若い選手たちの異文化交流を求め、それぞれの文化に生きる人間の内面的成長をもサッカー選手に求めたトルシエの考え方は、(かつ、ダバディ君という、非常に多文化主義的な哲学を背景に持つ人物が通訳・アシスタントにつくという幸運も含めて)2000年代の最初の時期における日本サッカーにとって、非常に幸運な出会いだったと思える。つまり、現在海外でプレーする日本人選手にとっては、海外移籍への第一歩として「国際経験としての『トルシエ』という異文化」との「対決」を求められていた、という点で、私はトルシエの時代が、どういわれようとも、まさに「成功」だったのではと考えるのである。
ただ、ひとつツッコミを入れると、確かにトルシエが手がけたチームは数々の実績を残してきたが、あの1999年、五輪予選と同時期にあったと記憶する南米選手権、コパ・アメリカにおける、招待参加の日本代表チームのお粗末な試合については、この本の中では、まったく何一つ触れられていないということである・・・そのことがかえって、「あぁ、トルシエにとってもさすがにこのことは思い出したくもないんだろうなぁ」ということがよく分かる(笑)。
さて、こうなると、同時期にトルシエの傍らにいた、現U23監督の山本昌邦によるトルシエ批判本を次に読まないといけないわけで(笑)、これは「後のお楽しみ」的に取ってあった本である。
ちなみに、個人的にも、トルシエは私にとって「節目で出会った人」だった。時は1998年、鈴鹿サーキット・・・(笑)
あるチームの招きで訪れていた代表監督就任直後のトルシエ氏と、サーキットホテル前で偶然すれ違ったのであった。今思えば、F1ファンから本格的なサッカーファンになっていくタイミングにおいて、非常に象徴的な場所で出会っていたなぁと思う。
Comments
山本昌邦のトルシエ批評は実に冷静かつ的を得ていると思います。その本自体は読んだことないが、なんかの雑誌で昌邦さんの批評を目にしましたので。
Posted by: とよ | 2004.03.03 15:17
へ~、こう表示されるんや(笑)
Posted by: とよ | 2004.03.03 15:19
初コメントありがと~なるほど、こういう感じになるのかぁ(笑)
Posted by: たてーし | 2004.03.04 00:34