「ヴィッセル神戸の夢を語ろう」に参加して
今シーズンから楽天などのネットショッピングを展開しているクリムゾン・グループに経営権が譲渡されたヴィッセル神戸が、サポーターや一般市民を募ってミーティングを行うということで、後輩Tくんに連れて行ってもらった。これこそ私にとって、さらにはハウにとっても最も大事な「現場に行っていろいろ考えよう」シリーズの一環である。こうしてヴィッセルのサポーターのフリをしながら、私はひとりのJリーグファンとして真剣に臨んだ。
今シーズンからクリムゾングループという一企業がサッカークラブの運営に手を出したことから、そこで行われたプレゼンは、それはそれは見事なビジネスモデルであった。補強をし、選手層を充実させて、試合に勝てば、お客さんが増え、それで収益もあがり、さらに投資が可能となり、選手が充実し・・・という成功のサイクルを示し、これからは神戸だけでなく全国区の人気を経て、夢は世界に通用するクラブチームにしていく、ということだ。
その発想、あたりまえすぎて、ちっとも面白くなかった・・・
そもそもスポーツチームの運営は、ビジネスモデルがそのまま適合できるものかどうかというのが微妙な問題だと思える。どんなに良質の製品(選手スタッフ、設備など)を取り揃えても、スポーツである以上、負け続けるときは負け続ける。そして最も重要なのは、負け続けても、それでも一定数のサポーターは、なんとスタジアムに通い続けるのである。この現象を、ビジネスモデルでは説明できないのである。サッカーという現象は、そういう不可思議な要因に満ち溢れすぎているのだ。そして僕が本当に知りたいのは、成功のサイクルではなく「負け続けるサイクル」にハマってしまった場合、つまりのところ、仮に今後100年間、ヴィッセル神戸が赤字続きになったとして、そこで営利を追求していく企業としては、どのような対応を示せるのかということである。
そして、「これからは全国区、世界規模の人気チームに」という「目標」は、インターネット利用を主軸に商売している会社がやる以上、あまりにも当然すぎる発想で、そこにも歯がゆさを感じずにはいられなかった。そうじゃなくて、だからこそ「今、この神戸というローカル」に対して、企業はどのようにスタンスを取るのかということが、いまいち掴めなかった。地元より県外で人気のあるクラブチームなんていうものが出来上がってしまってもいいのだろうか。そう思うと、地域密着を旗印とした「百年構想」を唱えるJリーグ傘下のチームにおいて経営を担う親会社がネット販売で成長したという事実が、なんとも皮肉に思えてきてしょうがなかった。 ネット時代のビジネス戦略は、果たしてローカルなスポーツ文化をどこまで活性化できるのか、これはすごい実験でもあるのだ。
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