住まいと家族をめぐる物語
西川祐子先生の「住まいと家族をめぐる物語 ―男の家、女の家、性別のない部屋」が、先日集英社新書から発売になりました。
「身近な住まいと街に刻まれた140年の日本近・現代史」が帯のコピーです。
敗戦から数えて、全国で住戸数がはじめて世帯数を上回ったのが1975年だそうです。まさに僕はその頃に生まれた世代であるのですが、この本を通して、住居をめぐる一番大きい意味での「歴史」を振り返ると、自分の記憶にはない高度成長時代における、いわゆる「ガンバリズム」というものの、なんとも言いがたい、微妙な「畏敬の念」と、そして同時にある種の「恐怖」を覚えずにはいられません。そしてそれは結局、この本で最後に言われているように、「戦争がもたらした廃墟に住まいが新築され、街の復興があり、そして国家の再建がなされるといつのまにか再び戦争が始まるというストーリーが繰り返される」ことへの恐怖に通じるものがあるわけです。
恐怖、というか、そこから宿ってくる、ある種の「怒り」に似た気持ち。最終章の「住むことは生きること」を読むにつけ、西川先生もまた、同じような感情を内に湛えながら、僕らに講義を続けているのだろうか、と思うのでした。
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