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2004.10.28

人生五度目の『危機』

今日はこのネタしかあるまい。
家に帰ると、アマゾン・コムから、先日セール価格で買った1枚のCDが届いていた。

プログレッシヴ・ロックバンド、YESの『Close to the Edge (危機)』(1972年)。
全3曲。
1曲目、表題曲「危機」。20分を越える大曲。このジャンル特有の構築美、卓越した演奏技術、圧倒的な存在感、それらすべてが揃った英国70年代プログレ・ロックのひとつの到達点。
2曲目、「And You And I(同志)」。ライヴでも定番の、イエスの神秘的音楽世界を存分に発揮した名曲。ギタリスト、スティーヴ・ハウの名演が堪能できる。
3曲目、「シベリアン・カートゥル」。個人的に、YESで最も好きな曲。極寒の地を吹き付ける風のようなギターリフ、夜空にまたたく星屑のようなベースライン。そしてなんともいえない「懐かしさ」がこみ上げてくる、不思議な雰囲気を放つ曲。

間違いなくイエスの代表作といえば、この『危機』である。そして、私はこのアルバムが大好きなのである。ピンクフロイドの『原子心母』と並んで、私の人生における最重要アルバムのひとつである、といってもいい。

そのアルバムを、今日買った。
そして私は、この『危機』を、いままで、4回ほど買っている・・・。

<一回目>高校一年の頃、僕にイエスというバンドの存在を教えてくれたクラスメートのH君から、「いらなくなった」という理由で、物々交換かそれとも現金支払いで買い取ったのが最初だ。思えばH君は、別に「プログレ」というジャンルがあることを知っていたわけではなく、単にひとつのロックグループとして「イエス」というバンドがある、という程度で僕に勧めてくれたのだが、まさかその後私がイエスを通して、プログレという地獄のジャンルを突き進むことになろうとは、想像もしていなかっただろう。
<二回目>高校二年の頃、当時はまだ知識も浅かったので、ある日CD屋の輸入盤コーナーでみつけた『危機』が、どうやら自分が持っている盤とくらべて、CDの背中の部分のロゴのフォントが違ったり、なにやら「デジタル・リマスター」という銀色のシールが貼ってあったりするだけで「これは、もしかしてとんでもなく別物に近いブツかもしれない!」と思ってしまい、エイヤっと買ってしまう。ただ、その後開封することなく放置していたままだったので、何を思ったのか、仲良かった先輩の元彼女さんに、卒業祝いとしてこの輸入盤の『危機』をラッピングしてプレゼントした。・・・今思えば、90年代の中ごろに、17歳の野郎が18歳の女子高生にイエスの『危機』をプレゼントするという事態は、なんともいえない感動と恥ずかしさを覚えざるを得ない。・・・しかも卒業というハレの日になんで“危機”やねん!!  いや、でも、当時は、そう、当時は、この作品が、ホントーーーに、そのへんの音楽に比べて、格段にカッコ良いものだと信じていたし、その妙なテンションと勢いがあったからこそ、プログレを同年代に普及させるべく、僕は「HOWE」なんて名前のフリーペーパーを作ってみようと思ったわけだから・・・(笑)
<三回目>このアルバムのジャケットがとっても好きなので、ついに中古レコードを買って、部屋に飾った。ロジャー・ディーンの作品史の中でも異例なまでにシンプルかつ、ダイナミックなデザインで、しかも音楽の雰囲気にこれほどマッチしたアートワークはそうそうない。
<四回目>この手の業界ではよくあることだが、「紙ジャケ再発」が行われた。つまり、当時のレコード盤+ケースの再現をやってしまうわけである。しかもCDの音質もリマスタリングで格段に向上。『危機』のクライマックスの、あのパイプオルガンの高音部が、まるで昨日録音したかのような、超クリアーな音で、天空まで響き渡るかのようなサウンドづくりが見事に反映されており、確かに「よみがえった」感じがするのである。
close2.JPG
紙ジャケ。

close1.JPG
レコード盤の見開きイラストも完全再現。ちなみに、以前『ニュースステーション』のオープニングCGで使われていたモチーフは、どうみてもこの絵が元ネタであろうというのは、ファンの間で通説となっている。

というわけで、これまでに私は、まったく同じアルバムを4回も買っていた。
そして、今回、5回目の購入になってしまった。なぜか。

イエスのこれまでの全作品に、それぞれ「ボーナス・トラック」が追加され、再発されたからである。

おい。

なんだそれ。

というわけで、『危機』のボーナストラックは4曲。しかもそのうち2曲は、『同志』と、『シベリアン・カートゥル』の「試作品」状態のテイクが収録されている。これを知ったときの私は、非常にうろたえた。なんてこった!! と。
だいたい、私はこの作品を聞き続けて10年ぐらいになる。でもよく考えたら、リアルタイムでこの作品に出会い、聞き込んできたファンも確実にいるわけで、その人たちにとったら、約30年近く、この『危機』を聴いていたことになる。
その人にとっては、30年間ずっと、『危機』は3曲で終了するアルバムであった。それが、なぜか30年後に、気が付けば7曲の作品になっているのである。どういう気分なんだろう。

で、結論から書くと、2曲の「試作品バージョン」は、「おおおおおおおおおお!!!??」であった。
なんか、「気持ち悪さ」と「面白さ」がごっちゃになった気分で、とっても、とっても、興味深い体験であった。
たとえて言えば、自分の家に実は屋根裏部屋があって、実はすごく使い勝手がよかった、あるいは、すでに誰かがその屋根裏部屋に住んでいた気分。そう、ちょっとした不気味さと恐ろしさと好奇心が混じった感じだ。

プログレが面白いのは、やたらと作りこまれている楽曲が多いので、何度聴いても「答えがみつからない」感じがすることだ。だから何度でも真剣に聴こうという気分になる。
そうして、今まで僕は3曲入りの『危機』と向かい合ってきたし、そのつど感動し、『シベリアン・カートゥル』の、「カートゥル」って結局どういう意味なのか、誰に聞いても何を見ても未だに調べが付かないし、ラストらへんの展開を聞くたびに、ちょっとした「ハイ状態」になってしまうし、なんでいつもそんな気分になるんだろう、と謎だらけの作品で、まだまだこれからも味わい続けられる作品だと思っていた。
それが、それがですよ、このボーナストラックによって、『同志』と『シベリアン・カートゥル』が、まったく違った存在として、追加収録されているわけで、なんだか「実はあなたには双子の兄弟がいるんだよ」と告白されたかのような「えーー! どうしよう!!」感でいっぱいになる。それほどまでに、このボーナストラック、聴き応えがあるし、「謎」がさらに増して、ファンにはたまらないわけである。

うう・・・こんな楽しいの聴くと、またしても過去の作品、ことごとく買い直したくなってしまう・・・それだけは避けたい・・・

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Comments

あかん、興味わいてきた。やめてくれ。

Posted by: isaac | 2004.10.28 11:11

 「カートゥル」って”Quartre”じゃないの?
 仏語の「4」。
 音楽で四連音符とか四重奏とかの意味があるみたいだが?

Posted by: らくだ | 2004.10.28 11:12

isaacさん>僕も書きながら、自分自身辛くなりかけていました(笑)でもこうやって「ハウGTR」関連での文章を読んで、プログレを聴きたくなる人がいれば、それこそ思うツボなわけですねぇ。ビバ・プログレ。

らくださん>カートゥルは、KHATRU、というスペルなんですね。いまいちよくわからないのです。歌詞カードを読んでも、そこだけ和訳されてなかったりする(笑)でも微妙に四連音符とか関係あったりしてね。

Posted by: タテーシ | 2004.10.28 23:38

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