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2005.01.19

あらためて、スーパーカーの解散について 2

はぁ。溜息はつきない。

公式ホームページには、解散声明のほかに、メンバーそれぞれのコメントも発表されている。
わかってはいるんだけど、やはり男子三人のコメントは、とてもあっさりしている。なにより今日までのスーパーカーの「言語的側面」をすべて担ってきたジュンジくんの、あまりにシンプルなメッセージには、その裏で途方もない苦闘があったのだろうことを想像させる。
でも、でも、やっぱりジュンジくんには、もうすこし「説明責任」があるんじゃないかな、と思うのは、ファンからの勝手なワガママでしかないのだろうか。

さて、そんな状況だからこそ、フルカワミキのメッセージの分量の多さが、かえって印象的である。ミキちゃんのキャラを思えば、ここでこそ「あっさりと、おゆるりと」締めくくってもおかしくはないのだが、一晩たって改めて読むと、この最後の最後で語られる文章の厚さ、ここにこそ私はスーパーカーのスーパーカーたるゆえんを見出している。

つまり、本当の意味での「説明責任」は、実はフルカワミキにこそ託されるべきだった、そしてそのことを何よりもフルカワミキ本人が痛いほど感じていた、その証拠がこの文章だと思えるのだ。
と同時に、私個人として、最もスーパーカーにシンパシーを感じる部分が、やはりこの、最後の最後までまとわりついた、「ミキちゃんにとってのスーパーカーへの説明責任」だったりもするのだ。

なぜなら、スーパーカーというバンドは、ミキちゃんの「衝動的行動=クマの絵を描いた【メンバー急募】の紙を楽器店に貼った」(これが“募集”という言葉ではなく“急募”という点にこだわりがあったことを本人は後に語っている)ことから、すべてが始まったという、「とびきりステキな運命の起点のうえで走り出した奇跡」だったわけだから。

最近、私はあらゆるアーティスト的行為において、この「とにかく行動すること」にまつわる「マジック」にこだわっている。とにかく動く、そうすれば何かが開かれる、そこにひろがる創造性の発露・・・。
青森の女子高生は、とにかく動いた。やがて何かがつながり、そしてひとつのバンドが走り出した。

そしてミキちゃんは、解散声明のコメントにこう記す。
「田舎で4人の出合いは奇跡、マジック、といわれる事があります。確かにそう思うし、大事で最高な出来事です。でも、そのマジックはバンド活動において幻想的で曖昧なものだけではないと思っています。」

やや文意を取るのが難しいが、いずれにせよ私はここに、「行動した人にとっての、リアルな実感」を感じる。もはやそこには、ただ無邪気に「マジック」だなんて思っていられる部分はない、ぐらいの勢いだ。
「マジックだ」と思うのは、あくまでも、外野の私たちなのかもしれない。でもそのおかげで、私はスーパーカーの、その存在すべてに「マジック」を見出させてもらった。だからこそ、強烈なシンパシーを感じたのだと思っている。

ミキちゃんはこうも書く。
「目的は音楽。この途方も無い暇を、なんだかわからないエネルギーを、どうにかしたい、なんか鳴らしたい!という衝動。」
「これからの私の活動において、スーパーカーが、どんな時にどういう事をして来て、どんなバンドだったのか、自分はどういう事をやってきたのか・・・証明していくことも、重要な目的の一つになります。」

この一文を書いてくれたことで、私は救われた気がした。そう、それはあたかも「マジックのタネあかし」のようなものだ。あのミキちゃんが、ここまでストレートに書いてくれたのだ。立派な「説明」だった。そしてその説明責任を、本人はひしひしと感じていたのだろう。自らが、このバンドにおける数奇な運命の起点になっていたという事実を前にして。

「途方も無い暇」。そこから、「とにかく動いた」あなたのその勇気、決意、表現力。そこに僕は最大限の感謝を示したい・・・ここまで素敵なロックバンドを生み出した、その「衝動」に。今はただひたすら。感謝。

spcr
デビューシングルの歌詞カードより。なぜか昔からとても感じ入る画像。

↓絶版になる前にぜひ!楽譜だけじゃなくメンバーのインタビューなど、わりと読み物として初期スーパーカーのあのなんともいえない「終わりのない、果てを漂う青春っぽさ」を感じるうえで貴重な記録。

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