『道は開ける』をあらためて読む 第7章
第7章 「カブト虫に打ち倒されるな」
この章の最初に、この本でも有数の劇的な事例が挙げられている。これもまた戦争時代の、日本軍とのからみになってくるのがいかにも時代を物語っているのであるが、それはともかく、潜水艦に乗り込んだある兵士が、運悪く出くわした日本軍によって爆弾を投下されつづけた15時間における絶体絶命の極限状態を耐え続けるなかで、過去に犯した自分の愚行や、日常生活上の悩みを想起しつづけるなかで、いかにそれらが取るに足らないことであったか、ということを悟り、もしふたたび生きて太陽や星を拝むことができたら、もう決して悩まないことを誓った、という話である。
ディズレリィの言、「人生は短すぎる。小事にこだわっていられない」
この言をうけて、アンドレ・モロワの言、「この言葉は私の苦難に満ちた多くの試練に際して、いつでも心の支えとなった。私たちはしばしば、忘れてもかまわないことがらのために、自分自身を台無しにする・・・私たちがこの地球上に生きるのは、わずか数年にすぎない。それなのに、一年もすれば皆から忘れられてしまう不平不満を悩みながら、かけがえのない多くの時間を無駄にする。もう、ごめんだ。私たちの人生を、価値ある活動、感覚、偉大な思想、真実の愛、永久の事業のために捧げよう。とにかく、小事にこだわるには人生はあまりにも短すぎる。」
こうしていかに些細な悩み事で、多くのトラブルが起きたかを実際の事件などを挙げて紹介されているが、最後に自然の事例が紹介される。コロラド州にある樹齢400年の木が、数え切れないほどの雪崩や暴風雨や落雷にあっても耐え続けたのであるが、最後はカブト虫の大群が押し寄せ、徐々に樹皮をやぶって侵入したことによって、徐々に木の生命力を破壊してしまったという。人間の指でつぶせる小さな虫のために、この巨木が倒されたという、この事実に対して、私たちはこの木に似ていないだろうか、とカーネギーは問いかける。
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