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2005.10.24

自転車

なにげない言葉でも、ちょっとしたはずみで耳に残るときがある。

さっき、近くを歩いていたときに、通りがかりの自転車から聴こえてきた一瞬の、セリフ。
後ろに乗っている幼稚園児らしき男の子が、お母さんに向かって、

「“さむい”って言ったらブレザー着んの?」

それだけ。リスニング終了。

たしかに、最近めっきり寒くなってきましたな。
先日お邪魔させていただいた「宇治橋通り文化フェスタ」は、つまりのところ、今年最初に「冬への覚悟」を体感することとなったイベントでもあった。去年の感覚とはまったく違っていたので、カーディガンを羽織っていくという決断は大正解だった。

さて、「“さむい”って言ったらブレザー着んの?」。
そうですね、きっと着ることになるんだろうな。冬の制服が、きっとブレザーなんだろう。

ところで、「“さむい”って言ったら」の、「さむい」と言う、その主体は誰なんだろう。今日は歩きながらそこまで考えてみた。

そのボク自身が「さむい!」と訴えることなのかもしれない。そうすればブレザーをお母さんが用意する季節なんだろう。

あるいは、「さむい」というのは、お母さんか、それとも幼稚園の先生か。ちょっと寒くなったからって、衣替えの準備を着々と進めるんだろうね。オトナはいつだって子どもに対してはオーバーリアクションなんだ。

周りの友だちが口々に「さむい!」と言うかもしれない。そろそろ他の友だちが幼稚園にブレザー姿で現われる頃かもしれない。「周りの子たちがブレザーなんだから、あなたもブレザーを着なさい」といわれて、本当はまだ涼しいぐらいなのに、ブレザーを無理やり着させられるのがイヤだったりするのかな? そしていまこの箇所を書きながら、僕は小学校五年生の春の、ある出来事を急に思い出して、なんとも切ない気持ちになってきたよ。そのことを今度あらためてブログに書けたらいいんだけど。

「さむい」と発するのは、もしかしたら「天気予報のおじさん」なのかもしれない。テレビも、いつだって君のことをたんまりと驚かそうとして張り切っているからね。お互い気をつけたいところだよ。


きっと、あの男の子にとっては、季節が巡ること、そして変わりゆく肌感覚、空気の変化、お日様の照り方の微妙なズレ、そんなようなものを、自分以外の誰かと「ことば」を使って分かち合うことに、まだ目新しい不思議さや新鮮味を感じているんじゃないかと思う。

そして、君はこれからも、冬がくるたびに、「さむい」っていう、そのタイミングをはかりながら、一日一日らせん状の営みを繰り返していく。そうして、いろんな言葉で「さむい」と表現するようになったり、誰かに聴こえるように、あるいは誰にも聴こえないように、その言葉を並べてみたりもするようになるんだろう。

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Comments

でも、本当にさむいのは、現代社会。
痛感しています。

Posted by: xin.s | 2005.10.25 03:15

xin.s>コメントありがとう。風の吹きすさぶような気持ち(笑) そうやね・・・でもって阪神の調子も寒い!?

ボチボチと、自分のやり方で球を打ち返して生きてきたいです。

Posted by: タテーシ | 2005.10.25 22:56

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