もし月がなかったら
前にも書いたことがあるが、天文学について見聞きする行為を、私は「天文学セラピー」と勝手に呼んでいる。
このまえも、スカパーで「もし月がなかったら」というドキュメンタリーがあったので、思わずイントロのほうは立ったまま観ていたり。
月の成り立ちについては謎だらけのようで、決定的な学説はないらしいのだが、ひとつ確かなことは、「月と地球の距離は、毎年4cmずつ離れていっている」ことらしい。
月の引力のおかげで、地球の地軸は安定しているらしいのだ。
でももし月がどんどん地球から遠ざかれば、そのぶん地球の回転軸がおかしくなって、いままで普通に回転していた地球が、ランダムな方向へ、むちゃくちゃに回転することになる。
そうなると、北極や南極の氷は速攻で溶けたりして地球上が水没することは、中学生でも想像しやすいだろう。それに留まらず、人間の予想を上回るとんでもない気象状況になって、たぶん人間が住み続けることなんてできやしないだろう。
このことは、SFの話ではなく、実際に、現実に今もなお、「月が毎年4cmずつ地球から離れている」という観測結果が示している「マジでリアルな話」なのだから、いつかきっと、何万年後ぐらいには、起こり得るわけだ。
と、まぁ、そういう途方もない話を、いろんな天文学者たちがコメントするわけだが、思うに彼らは普段からそういう話に浸っている影響で、日常の悩み事なんて、「ほんとーーーに、どうでもいい、些細なこと」ぐらいのレベルで捉えているんじゃないのか、それはきっとかなり幸せなことなんじゃないか、と私は昔からそう推測している。
なので、できれば大学とかで『天文学を学ぶ学生』と『そうじゃない学生』の2グループに、心理テストを実施して、心の病に対する耐性度とかを比べてみたら、ぜったいに有意差が算出されるんじゃないのか、とにらんでいる。
(ちなみに、私はこのごろ、心理学は別として、天文学と文化人類学は、“自分自身をちょっと幸せにするコツを習得できる学問”ではないかと力説しているのである。)
ともあれ。
宇宙のはなし、ヤバイっすね。
どのみち、なにをしても、なんにも残らないことは「確定」しているっぽい。
よく「永遠に残るもの」なんて概念を僕らは使うけども、そもそも地球とか太陽系そのものが消滅したら、そんな「考え方」すらも、跡形もなく消えてしまうわけだ。およよ。
そう思うと・・・なんなんだ、この「すがすがしさ」は。
ヘタしたら、単なる「ニヒリズム」になるのかもしれないのだけど、
でもそうではなく、「なら、いまここで地球があって、生きている我々に降りかかっている、どーしよーもないほどの偶然とか奇跡」に対して、ただひたすら感謝したくなる。これが私にとっての天文学セラピーなのだ。
Comments
あ、この話おもしろいな。こーゆーの大好き。
わかるわかる、それ。
宇宙のことを考えるとき、義父母とモメてたりする自分がすごくちっぽけに思えます(笑)。
Posted by: Yuri Meine | 2006.07.19 16:50
Yuri Meine>ほんと、自分のあまりのちっぽけさ加減と、「いつかは何もかもなくなる」感は、ちょっとだけ、いつもの日常やいつもの人たちに対して、別の角度からの感情をもたらすというか・・・
Posted by: タテーシ | 2006.07.19 22:55