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2006.10.10

東北大学の思い出、もしくはくだらないイタズラのはなし

今日はたまたま、学生さんと東北大学の話になった。
私もかつて1度だけ、東北大学のキャンパスに行ったことがあった。
「緑の多い、環境の良い場所にあるよねぇ」とか
「夏にいったんだけど、さすがに涼しくて、クーラー設備がなかった」とか、
それなりの思い出を語っていたのだが、
「東北大学」ときくと、脳裏には別の思い出が浮かんでくるのであった。

東北大学に行ったのは、大学4回生の夏休みが始まったばかりの頃だった。
あるアメリカの心理学者が、東北大学で開かれる学会に招かれて記念講演をするというので、当時その人の著作が好きだった私は、同級生のオカK氏とともに仙台まで夜行バスで行ったのだった。

当時はそういう熱心な学生だったのだ。
ただ一方では、妙な学生でもあった。

というのも。
仙台にいく直前、私は、ある事情により、母校の大学で、ちょっとした「イタズラ」を仕掛けていたのだった。


そのイタズラを実施するまでの経緯はこうだった。

当時、大学4回生で進学希望だった私は、当然母校の大学院を最重要選択肢のひとつとして考えていた。
しかし、我々はその大学における一期生であったため、まだこの時点では母校の大学院が存在していなかった。
グラウンドをつぶして建設されゆく、なにやらよくわからない建物を眺めながら、「あぁ、ここに大学院ができるのだな」ということは想像できていた。
しかし、それ以上の情報は、この時点では何ももたらされていなかった。

たしかに、大学そのものも、そのスタートにいたるまでは、私が受験生だった秋の時点でも「文部省からの認可申請中」だったために、その存在が謎のままだった。(だから私は、本当にこの未知なる大学が開学するのかという疑念を払拭すべく、実際に建設中のキャンパスを確認しにいったほどだ。こちらの記事参照)

あの頃と同じように、この新たな大学院も、「認可申請中」などの理由により、依然として謎のベールにつつまれていた。
なのでそのへんの事務的な事情はよくわかっていたつもりなのであるが、粛々と出来上がりつつある新しい建物を眺めながら、同じように大学院進学を考えていた友人たちからも、「ちょっとぐらい何か学生に説明があってもいいんじゃないか」というムードがあったのである。なにせ、4回生の夏休み前だ。みんながナーバスになってしかるべき時期だった。

で。

私のいた学科では、必修科目として、「観察実習」というものがあった。
これは、心理学に関係する職場施設を訪問し、そのときの見学をもとにレポートを書くというものだった。
実習希望者を募るために学内に設けられた掲示板には、いつもひとつの実習先につき、1枚のチラシが貼りだされ、定員分の空欄スペースが設けられていた。実習に参加するためには、その「実習先のお知らせチラシ」の空欄に、自分の名前を記入するという、今思えばアナログなシステムだった。

これらの事情により、私はある思いつきを実行にうつしてみた。

私は、あまり人が出入りしない時間帯を見計らって、定規を持ってその掲示板に向かった。
そして、「実習先のお知らせチラシ」における、文字の大きさやフォントの種類、そして文字の間隔や行幅のスペースなど、あらゆる箇所を定規で測りまくり、その情報をもとに、実習先のお知らせチラシとまったく同じフォーマットの文書を、ワープロで作ったのである。(フリーペーパーを作るスキルというものは、こういうときに活かされるわけである)

こうして、私はその「自作フォーマット」に、実習先として母校の大学院の名前を書き、実施日を「2000年4月(予定)」とし、そして「定員:未定」として(実際、最も我々が現実的に知りたかったのは、大学院の入学定員だった)、「ダミーの実習先お知らせチラシ」を作ったわけである。
ひょっとしたら、誰かが「実習希望者」のところに、名前を書いてくれるかもしれない。
この行為を通して、私は、母校の大学院についての情報がなかなか公表されないことへのいらだちを、自分なりに表現したつもりであった。

ただ、あまりに本物とそっくりな文書が完成したため、多少のイタズラ感を出すために、あえて普通の紙ではなく、イエローカードを連想させる黄色い紙(ていうか、『ハウ』を作ったときにあまった紙)に印刷した。
そして、またしても人のいない時間を狙って、そのダミーチラシを掲示板に貼って、逃げたわけである。
(ちなみに:そのときは想像もできなかったが、奇しくも数年後に私は公共空間における『落書き/グラフィティ』を研究対象とすることとなった。そういう現象に関心を寄せる理由は、きっとこのへんにも原因の一端があるのだろうか)

こうして、そのニセチラシがどうなったか、確認する間もなく、急きょ仙台にいくことになったのであった。

東北大学にきて、お目当ての心理学者の講演会を聞くべく、大教室に座った我々の目の前に、うちの大学の助手の先生が現れた。
遠くまできて、よく知った顔に出会うとうれしくなり、我々は講演会が始まるまで、ずっと談笑をしていた。

そしてそのうち、助手の先生は、「そういえばね、最近こんなことがあったのよー」と、例のイタズラのことについて語り始めた。

最初は、平静を装って聴いていたつもりだったが、

なんだか、

いかにも、

その先生は、
私のほうをニヤニヤしながら、
事の顛末を語っていたので・・・





すいません。


わたしが、やりました。

Woodgate203_1

と、正直に自白した。


「あ~、やっぱりぃ~?」

と、いわれた。

なんでも、あのチラシを貼った直後、すぐにそのチラシはある先生に見つかってしまい、
助手の先生を交えて、「誰がやったんだろうか」という話になったのだが、
ほどなくして「まぁ、たぶんタテーシだろう」ということで落ち着いた、というのである。

Woodgate


「なぜだ・・・なぜオレだと分かったんだ・・・」

そんな私を、助手の先生は、まるで当てモノが当選したかのようにうれしそうな表情で眺めていたのであった。

というわけで、
「江戸のカタキを長崎で討つ」というコトバがあるが、
まさに
「京のイタズラが仙台でバレる」
という状況になったのであった。

その直後に講演をはじめたアメリカの心理学者の印象よりも、あのときの助手の先生の笑顔のほうが印象的だったのは言うまでもない。

なので、
「東北大学」と聞くと、まっさきに思い出すのは、そんなマヌケ・エピソードなのである。






こうして書くと、普通なら「あぁ、あの頃はバカだったなぁ」とか、
「若いって無邪気ねぇ」とか思うんだろうけど。
でもよく考えてみると、
今でも、私は、そういう人っぽい気がする。

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Comments

かなり笑かしてもらいました(^皿^)
あーおもれぇ。
すごいなぁ。見事に見透かされるなんて。
誰にも見抜けなくて、ちゃんと空欄に名前が入ってて、学校に帰ってきたらビックリ、どうしよう!ってエピソードも読んでみたかったです。

Posted by: Yuri Meine | 2006.10.11 14:14

まぁ、「夏休みに入ってしまった」というタイミングで実施した、というのも痛い要因ですね(笑)>Yuri Meine

Posted by: HOWE | 2006.10.11 23:02

ちょっと見たかったな。
白ならすぐに見つからなかったかも。

Posted by: num | 2006.10.12 10:50

そうですね、あそこで黄色の紙にしてしまったのが、あの当時の私の限界だったんでしょうね。
今なら、白でいきます、きっと(笑)>num

Posted by: HOWE | 2006.10.12 22:44

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