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2007.07.18

辞書のひきかた

英和辞書を触るたびに思い出すことがある。

高校時代のことだ。
S先生という英語教師がいた。見た目は昭和のオヤジなのだが、英語においてはダントツにすごいという名物先生だった。その落ち着いたオヤジ風情とは裏腹に、妥協を許さぬ熱血指導により、場合によっては拒否反応を示したくなるほどの激しい「発音練習」の指導などが有名だった。

で、
仲の良かった先輩がS先生の授業を受けていたのだが、ある日の授業内容に「辞書の引き方を練習する」というものがあったことを教えてくれた。

それは、「辞書の持ち方」とか「ページのめくり方」とか、そういったことをレクチャーしていたようで、何度も手元で辞書をパラパラめくる練習をさせられたというのである。
つまり野球の素振りみたいなことを、あの熱血的指導によって教授していたわけである。

ただ、先輩はその「辞書の引き方」について「なんだかよくわからなかった」みたいな感じだったので、そのときは「秘儀」についての詳細を理解するまでには至らなかったのだった。
S先生は地元教育界でも屈指の英語の達人らしいという噂もあって、私は「きっと自分ではまったく思いもよらない方法で、すばやく目的の語をみつけるような辞書のページのめくり方とか、何らかのコツがあるんだろう・・・それはぜひ自分もマスターしたい!」と思い続けた。

しかし自分も進級し、S先生の授業を受けるようになったのだが、ついぞそういう「辞書の引き方講座」は行われなかったのである。

私が甘いなぁと思うのは、それならそうと、自主的に辞書を携えて、S先生に個人的に「辞書の引き方のコツを教えてくれ」と頼みに行けばよかったのだ。
でも当時の私は今よりももっとシャイなヤツだったから、そういう発想にはならなかったんだろう。
なによりS先生の授業は、緊張感あふれる殺伐とした雰囲気だった印象しかなかったので、ただひたすら「怖い先生」というイメージしかなかったのもある。

ただここまで書いて思い出したが、そういう勉強についての質問はできなかったくせに、私はS先生に個人的に、当時ハマりつつあったプログレ・バンド「YES」の名曲、「シベリアン・カートゥル」の「カートゥル」というコトバの意味を質問しにいったことがある(どんな辞書にも載っていなかった言葉だった)。
「だったらなんでもっと勉強についての質問にいかなかったのか」と今となってはあきれてしまう。

なので、いまだに私は英和辞書のページをめくるときに、「いったいS先生はどうやってページをめくっていたのか」ということを心のどこかで自問しているのである。

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Comments

ああ。
恐怖の、サークル状に並べられた机の教室で
私は50分間ひたすら「55(fifty five)」の発音を練習させられたのを思い出しました。

辞書の引き方、私も教わっていない気がします。
ページをめくるだけの練習なんて、「自分の身と一体化させろ」っいうことだったのかな。

英和辞典じゃなくても、
あなたの活動をみていると、
先生が伝えたかったことは充分伝わっているのでは、
と思えますです。いや、ほんと。

Posted by: なおぴよ | 2007.07.19 at 21:56

なおぴよ>同時代を生きた戦友のコメントに救われる思いがします(笑)
しかしフィフティーファイブ50分間って・・・(笑)
僕はほとんど授業内容覚えていないんですねぇ。だから何かを学び取った手ごたえに乏しくて。今でこそ、「もっと関わっておきたかった人だったなぁ」と思います。不思議なキャラでした。

Posted by: HOWE | 2007.07.19 at 22:21

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