18年前の発言をめぐって
いまから18年前、1989年のプロ野球日本シリーズは近鉄と巨人で争われたのだが、近鉄が3連勝して優勝に王手をかけたとき、近鉄のピッチャーの加藤哲郎は試合後のインタビューで「巨人はロッテより弱い」と発言し、それにキレた巨人がその後4連勝して優勝した。
選手のコメントひとつで、シリーズ全体の流れも変わっていったかのような、この「加藤発言」は当時かなりインパクトのある話題だった。
さて、そんな加藤哲郎氏はいま、焼肉店などを手がける会社の社長さんをやっているらしい。そして(なぜか)産経新聞の関西版の夕刊に、この数日、連載で加藤氏へのインタビュー記事が掲載されていた。これがなかなか興味深かったのである。
話題は当然、あの18年前の「加藤発言」になるのだが、実は加藤氏は「それに近いニュアンスは言ったが、巨人はロッテより弱い、とは言ってない」らしい。加藤氏によると、記者の側から「パリーグの最下位のチーム(ロッテ)と比べて巨人はどうか」という質問がでて、それに対して、加藤氏は「ロッテに失礼だから比較はできない。巨人の投手はすごいが、打線はたいしたことない。ロッテとどうかと聞かれたら、ロッテ打線のほうが怖い」という感じで答えたというのだ。
で、ここがマスコミの怖いところであり愚かなところでもあるのだが、この加藤氏の最後の言葉だけをとらえて、翌日の一面に「巨人はロッテより弱い」と報じられてしまったという。
おかげでブチ切れた巨人ナインおよびファンたちは奮起し、加藤氏は4戦目以降ヤジの嵐にあい、そしてチームがまさかの4連敗を喫して優勝を逃したあとも「負けたのはお前のせいだ」という批判にさらされることになった。
ただ本人は当時もさほど影響は受けなかったという。
いま加藤氏は飲食店を経営し、最近は「猛牛軍団」という、古巣のバファローズの愛称にちなんだ店名の焼肉店を展開している。いまは存在しない近鉄バファローズのファンだった人が集まる店として賑わっているようだ。
で、この記事のインタビューで
「今でもあの発言については言われるんじゃないですか」
との問いに、彼はこう答えた。
「ひとつの話題としてはね。ぼく自身にそういうイメージをもってらっしゃる方が多いと思うんで、それはそれでいいかなあと。
今でこそ、焼肉店の名刺代わりに使わせてもらってます。
『巨人はロッテより弱い』にちなんで
『焼肉は寿司より美味い』ってね。」
ひさしぶりに新聞を読んでウケたな。
やるなぁ、加藤哲郎。■■■■
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