タルコフスキーごっこ
予定を変更して、
今年最後の記事は「タルコフスキーごっこ」について書いてみたい。
旧ソ連の映画監督、アンドレイ・タルコフスキーの作品は、どれも詩的で叙情的とも表される、独特の映像美が特徴とされている。
私は『ノスタルジア』という映画に特別な思い入れがある。ほかに『惑星ソラリス』や『サクリファイス』も観たことがある。
そしてたしかに、繊細で芸術性の高い映像美はすばらしいものがあるが、一方で、非常に難解で、不可思議で、長ったらしいシーンなどもあり、かなりの「クセ」もある。
ひろくタルコフスキーの遺した作品を知ってもらうためにも、その「クセ」を乗り越えて(我慢して)、みなさんにも親しんでもらいたい・・・と思う私は、ここでひとつの提案をしたい。それが「タルコフスキーごっこ」である。
「タルコフスキーごっこ」とは、日常生活において、誰もが自然に、タルコフスキー作品の映像美や俳優の演技を自らの実体験のなかで模擬体験できる遊びなのである。
この遊びは以下のようなプロセスをたどる。順番どおりに行ってもいいし、別個に実践してもいい。
* 長袖、長ズボンやロングスカート、そしてロングコートなどのかさばる防寒服があればなおよろしい。できるだけ重ね着をして、自然の豊富な場所を散策する
* 野外において、湖や川のほとりを歩いてみる、そこで湿地帯や、水たまりなどがあれば、すかさずそこへいく。「何かがそこにある」という雰囲気で、迷わずに、かつゆっくりと歩く
* 安全を確認したら、水たまりや水流のあるところに、服のまま進入する。場合によっては、あえて水たまりや泥のうえで転んでみたり、坐ってみたりする。
* 服がずぶ濡れになったとしても、まったく意に介しないように努める。クールな表情を保つことが大事。
* ときおり、何かにおびえるように、一点をみつめたまま硬直してみる。
* そうして、服が濡れたまま徘徊を続けて、飽きてきたら、タバコに火をつけたり、焚き火をしてみたり、薪を燃やしたりしてみたりする。『ノスタルジア』のラストシーンみたいにロウソクに火を灯して、誰もいないプールや温泉施設を端から端まで火を消さないように歩くのもいいが、安全上問題があるのでそういう行為は避けること
というのが、おおまかな「タルコフスキーごっこ」である。
ためしにYoutubeでタルコフスキーを検索したら、いろいろ映画のワンシーンがでてくるが、適当に見繕った『惑星ソラリス』のシーン(こちら)などをみても、たった7分のあいだにも、上記のようなプロセスが余すところなく描かれていることがわかる。
「服のままずぶ濡れ」、そして「燃やす」という、この「水と風と火と大地」の組み合わせを表現することが彼の映像美の基軸をなしていると思われる。
だから一方で、大雨の日に服が思いっきり濡れたり、道行く自動車に水をかけられたりした際には、「あぁ、今自分はタルコフスキー状態だ」とつぶやいて、映画のワンシーンのように、クールに歩き続けてもいいだろう。
(実際に私はそうしている)
というわけで、2007年の締めくくりとしてタルコフスキーについて語らせていただいた。
今年もたくさんの記事を書いた。読んでいただき、ひたすら感謝したい。
来年もなにとぞ、よろしくお願いします。■■■■
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