スタジオボイス 2008年07月号 Vol.391『本は消えない!』
スタジオボイス 2008年07月号
「本は消えない! インターネット以降の本当に面白い雑誌/本の作り方」
音楽におけるインディーズの台頭が示唆するように、出版社という枠組を必要とせず、発達したDIYとネット環境を駆使し、発行部数は1,000部にも満たないようなジンやリトルプレス、同人誌などがにわかに盛り上がっている。「雑誌はつまらない・・・」、「必要な情報はネットで十分・・・」と語られる昨今において、消費や流行などに迎合せず、作りたいものを作るという根源的な表現欲求を体現するこれらの誌面は、(編重、偏愛はあれ)圧倒的にクリエイティヴである。そして、これらの小さな点を結ぶことで見えてくる"何か"があるはずだ。本特集は、先鋭化するリトルプレスやジンの最前線を巡り、有名人をダシにして、単なる情報の集積に始終し、「編集」という妙技を失いかけた雑誌をもう一度再考し、インターネット以降の"本当に"面白く、刺激的な雑誌や本、そして作り方を探るものである。
と、いうわけで、スタジオボイスの最新号の特集は、自分にとってダイレクトすぎる内容となっており、驚きと焦りのなかで読み進めているところ。
ぼやぼやしているうちに、スタジオボイスまでミニコミ・ZINE特集を組んでくる時代になってしまった。
自分が『HOWE』を作りはじめた高校生ぐらいのとき、たまに書店で立ち読みする「スタジオボイス」に出てくる内容は、てんで難しくて、遠い遠い世界の出来事を語っているようなものであったが、いつの間にか「自分の立ち位置」が、スタジオボイス的なもののなかに入り込んでいたのである。そのことを認識した。
奇しくもこのブログのサイドバーに掲げている、イレギュラー・リズム・アサイラムと、Lilmagさんが、ともにこの特集号における「専門店が選ぶジン&ミニコミ・レビュー」の選者にもなっている。そしてLilmagさんが取り上げた10冊のうちの1冊が、よりによって『stolen sharpie revolution』(Alex Wrekk著)であった。このミニコミこそ、私をシアトル・ポートランドの旅に向かわせたオオモトの原因であり、そのことについて、遅々とミニコミをつくっているわけである。私個人としては、楽しんで作業をしているわけであるが、一方で、早くいろんな人にミニコミを届けたいという気持ちもあり、そこへきてスタジオボイスまでこんなネタを紹介するのかと思うと、どこかで焦りがでるのは正直なところだ。
なので、特集の表題にあるような、「作り方」そのものについては、そんなに示唆するところはないのだが、現時点で日本語で読める良質なミニコミ・ジン・カルチャーの紹介に触れれば、「ああああー、自分も作ってみよう!」とか「わかった、わかった、作りますよ、ワタシも、さっさと!!」となる、まさにDIY/パンク文化の原初的反応を喚起させる仕掛けに満ちた内容である。
そして、
Lilmagの野中モモさんが特集の鼎談において、プロフィールのなかで書いてある
「弱そうだけど広い意味でパンクでありたい」
というのは、この特集号を総括できる宣言だと思う。
まさに同感。
執拗に私がそこにこだわるのは、まさに秋葉原で通り魔事件が起こったりすることに対するやるせなさにもガッチリ結びつく、社会批判的心情と個人的な嘆きについての、ちょっとした補助線を示しておきたいからだ。補助線というか、急ごしらえの足場というか、不安定な結び目というか。
「パンクに学べ」というのは、ちょっと前までは冗談半分で言っていたフシがあるが、最近では、本気で語り伝えないといけないものではないかと感じつつあったので(秋葉原の事件があってなおさら)、このLilmagさんの発言に激しくうなずいた次第である。
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Comments
僕も買いました!
48、49Pの対談の最後「みんなが語らないことを語るだけで面白い本はできる!」の前の行「そういうのは“新しい”ではなくて“ある”んだよ。」ってのがなんとなくグッときました
Posted by: shidou | 2008.06.11 23:28
shidou>おー、読んでましたか! そこに注目するか! と、興味深いです。「そこに『ある』」んですね、きっと。見落としがちなところに。何かが。
Posted by: HOWE | 2008.06.12 23:10