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2008.11.13

カウチ・サーフィン、カウチ・サーファー、そして旅行業界の未来

BBCワールドのニュースをみていたら、「カウチ・サーフィン」なる聞きなれない言葉についての特集があった。

これはヒトコトで言うと、インターネットにおけるミクシィのようなソーシャル・ネットワーキング・サービスの仕組みが発達した結果生じた、「世界中の人たちの自宅に泊まらせてもらおうぜプロジェクト」である。

日本語のウィキペディアでもまだ単語としては検索にあがってこない。
こちらのサイトではかなり詳しく解説されている。引用すると、

「カウチサーフィン」というウェブサイト。非利益組織が運営するサイトで、1999年に発足し会員数は42万人を超え増加中だ。世界中のカウチ(登録ホストのソファー)を寝場所に、旅人がサーフィンする(登録ゲストが旅をする)というコンセプトで、誰でもメンバーになれる。カウチ使用料も登録料も発生しない。もう、これからして「昔のもてなしの心」大復活劇なんだけど、誰だって、知らない家に泊まったり、知らない人を寝泊まりさせるのは不安なもの。昔と違うのは、えへん、インターネットによる保全力がアップしたことだ。

 特筆すべきなのは、信頼も築くために、個々のページにはメール回答率、他のメンバーがその人に会った感想を残す照合システムがあり、メンバーなら誰でも参照でき、その上で接触できること。いわゆる「アブない人」は自動的にサバイバルできない仕組みになっているのであーる。
 旅をしたいと思ったら、その国のメンバーで自分と合いそうな人を探し、 旅の目的、予定滞在日数などを含め、メールで連絡を取りあい、どこに何日お世話になるかを決定する。どんな人かはあらかじめ分かっているから、会話もスムーズ。

サイトには「世界中にタダの宿泊所を設けるのが目的ではなく、家と心を開き、異文化が生む、幅広い知識の共有を助けることが主な目的。旅のスタイルだけでなく、個々の世界とのつながり方を変えたい」とある。

まったく知らなかったので、ちょっと驚いた。と同時に「なるほど、こういう仕組みがあったか」と思った。
なにが素敵かというと、タダで泊まれる仕組みを非営利で、インターネットの草の根のところからビルドアップしていくやり方で作り上げたこと以上に、最後のところにあるように「人と世界の関わり方も変容させうる可能性」を捉えていることだ。(あぁ、まさにメディア文明論者のマーシャル・マクルーハンが生きていたら、見せてあげたい)

 ネット経由で誰でもタダで世界中と電話ができるSkypeと同じで、当然ながら、こういった新しい仕組みが、いわゆる民放テレビとか新聞とか雑誌とかの「主流メディア」では、絶対に報じられることはないだろう。旅行会社にとってみたら、こんな迷惑な話はない。広告主の不利益になるような、こうした革新的な試みは確実に無視され続ける。(だからこそ、この日のニュースでBBCがこんな危ういテーマを紹介したことには敬意を表する。ちなみにこの特集でBBCの特派員は、カウチサーフィンを利用して東京の学生さんの下宿に泊まってみたりしていた。なぜに東京。実はひそやかに日本でも流行っているのか?)

だからこそ、こういう新しい試みについては、クチコミで、あるいはこうしたネットを通じて、まさに人と人とのかかわりのなかで広まっていくことになる。そりゃあ自分たちの身の回りでも旅行業界の恩恵で暮らしている仲間はいるんだけど、それでもこういう流れを無視して拝金主義に突っ走ることなんて、もはやできないんじゃないか。従来の経済的通念は、ますます予測不可能で、あやうくなるかもしれないが、そういう混乱のなかで、確実に何らかの新しい価値観は、ワールド・ワイド・ウェブのように、いろんな方向性で拡張していっている、そう期待したい。

でもって、当然ながら思うことは、「うちの大学でカウチサーフィンのことを紹介したら、かなり面白いんじゃないか」ということだ。実際にトライしたがる学生は多いだろうし。なんなら大学がホストになったっていいんじゃないか。世界中からやたらバックパッカーが集まってくるキャンパス。世界に飛び出すだけじゃなく、世界を自分たちの身近に引き寄せる仕組みだ。

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