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2009.06.16

『トンネル・ヴィジョン』

キース・ロウという作家の小説『トンネル・ヴィジョン』を読む。
帯に大きく「ロンドン地下鉄全駅制覇!」とあったので、思わず手に取った次第である。

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小説の筋としては、結婚式を2日後にひかえた「地下鉄オタク」の主人公が、友人のオタクにそそのかされて「賭け」に乗ってしまい、「ロンドン地下鉄全267駅を1日ですべて回りきる」という勝負に出るというもの。結婚式を行うパリへのユーロスター列車の切符や新婚旅行のチケットなど、一切合財を友人に預け、それらを地下鉄のあちこちの駅を回りながら回収しなければならない。すなわちそれはフィアンセとの「結婚」そのものを賭けてしまったことになる。そしてこの「賭け」については、フィアンセの彼女にはまったく伝えぬまま・・・果たして主人公は深夜発のパリ行きユーロスターにフィアンセとともに無事乗れるのか? という話。
で、そうやって大事な結婚式を前にバカな賭けをやりながら、ひょんなことで出会った浮浪者のおじさんと行動を共にすることとなり、いろいろな局面であらためて自分の人生において大事なものはなにかを主人公はあれこれ自問していき・・・っていうのがもうひとつの読みどころ。

期待通り、ロンドン好きにはたまらないお話で。
小説を読みながら、いつの間にか「ロンドン地下鉄トリビア」にも詳しくなっていくのがまたオツ。
かねがね思うのだけど、電車マニアって、うらやましい。この小説の主人公たちも、相当頭がおかしいぐらいの地下鉄マニアであるのだが、マニアならではの視点で描かれるロンドン地下鉄は、また別の世界観で構築されている。これを読むと、なおさらまた地下鉄に乗りたくなるし、なにげなく利用している交通手段の裏側にひそむ歴史や英知といったものに思いをはせてしまいたくなるだろう。

おかげで、日本の地下鉄すらもうっかり好きになりかかっている。

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Comments

ようこそ、地下鉄の世界へ(笑)
まずは奈良へも乗り入れている、大阪市営地下鉄から攻めてみてください。

私鉄と共有しているのって結構珍しいのでは?と思うんだけど。(知らないだけ?)

Posted by: りえぞ~ | 2009.06.17 01:08

バスと同様に24時間運行するNY地下鉄も捨てがたいけれど、
ストックホルムのtunnelbanaが一番かな…。
岩盤くりぬきの駅までの長いエスカレーターは、
地下世界に向かうと冒険心をかき立て、
着いた各駅のポップさにクラクラします(笑)
パリの地下鉄も面白かったなぁ…。

Posted by: T氏 | 2009.06.17 03:04

りえぞー>驚きました、地下鉄とそこまでかかわりが深かったとは。ちなみに京都市営地下鉄も、近鉄と乗り入れていることになりますよね。近鉄なにげにすごい。

T氏>tunnelbanaを検索してみました。たしかにすごそう。

Posted by: HOWE | 2009.06.18 22:51

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