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2009.08.18

『マン・オン・ワイヤー』

Manonwire


映画『マン・オン・ワイヤー』をみた。
この映画をとおして考えさせられたのは、「一人の人が思い描く夢をめぐって、周りにいた人が巻き込まれていくことの、ステキな点や困っちゃう点」についてであった。

綱渡り師プティの思い描いた夢は、世界貿易センターのツインタワーの屋上に(こっそり)ワイヤーをはって、その間を綱渡りするというもの。
ツインタワーに忍び込んでワイヤーを張ることは違法行為だと分かっていながら、友人たちはどうやってワイヤーを通していくか必死に考え、議論をし続けていく。そのプロセスにも当然ながら意見の対立やいざこざが生じるわけだが、そういった葛藤に加えて、プティが無事に綱渡りをできるように管理をしなくてはいけないという、つまり友人を絶対に死なせないぞという悲壮な決意もまた、このプロジェクトの進行にある種の葛藤をもたらしていくのだ。

この作品をドキュメンタリー映画として観終わったときに、どうもすっきりしない、落ち着きのない作品になったなぁという印象があったのだが、上記の文章を書きながらその原因に気付いた。このドキュメンタリー映画はプティ本人よりも、プティを支えた友人たちを主軸に展開していったほうが、もっとよかったのではないかということだ。

そう思うと、まさにあの闇夜のツインタワーにおける、片方から片方のビルへと打ち込まれたワイヤーの切れ端を必死にたぐりよせ、結び付けあう作業も、じつは「友情」や「愛情」のありかたを示唆しているようではないか、と思った。このプロジェクトにおける回想でも特に感傷的に語られていたあの作業プロセスは、まさに「綱渡り」を通して導かれた、友情や愛情の物語でもあったのだ。

まぁ、そういう大げさな論評もさておき、「計画を実行に移すためにどんな準備をしたか」という観点において、素朴に楽しめるエピソードがいくつも語られた。ビルの屋上付近の模型を作ってはあれこれワイヤーの設置計画を練ってみたり、実際に何度も足しげくビルに通ったり、果てはニセの新聞記者を装って工事中の屋上の写真を撮りまくったり・・・などなど。その涙ぐましい努力と執念を「今だからこそ語れます」的ノリで熱弁するプティのはしゃぎっぷりが可愛らしい。そういう老人になってみたいとすら思う。

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