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2009.12.30

DIY映画『大脱走』

テレビで映画『大脱走』をやっていた。大昔に見たことがあったはずなのだが、ほとんど内容を覚えていなかった。ドイツ軍の捕虜収容所から大量の捕虜が脱走したという史実を映画化した1963年の映画なのだが、「ほとんどが脱走に失敗したか殺された」という結末すら覚えていなかった。

オトナになってから観ると、またちょっと違うポイントで感じ入るところもある。たとえば映画の途中で陽気なシーンとして描かれる「アメリカ独立記念日を祝うシーン」について、よく考えてみたらイギリス兵とアメリカ兵が一緒になって手づくりの酒を飲んで祝いあっているじゃないか、というのが妙に印象的だったり。
あとウィキペディアで調べると、当時においては捕虜が脱走を仕掛けることによって、相手の戦力を出来る限り混乱に陥れることが大事な務めだった、ということも書かれていて、なるほどそういう観点で脱走劇を見ていなかったなぁ、と勉強になった。

しかし何より、この国籍や身分も異なる捕虜たちが協力して、ただひたすら脱走のために周到な計画を秘密裏に練って、それを着々と実行に移していくプロセスがすごい。おそらくほとんどが史実に基づいて描かれているのだろうけれど、トンネル掘削作業の音をかき消すために「合唱団」が組織されてひたすら地面のうえで歌い続けるとか、トンネルを掘ったときに発生する土の色が濃いので、それを感付かれないように捨てるためにみんなで工夫してズボンの裾から少しずつばらまいて地面をならしていくなど、その緻密な創意工夫には驚かされる。限られた資源を駆使して、いかにこの不自由な環境のなかで工夫してトンネルを掘っていくか、というのはまさに「命がけのDIY精神」ではないか、と思った。なのでこれは『アポロ13』と並ぶ「DIY精神を考える映画」でもあったのだ。

映画の前半はそうした脱出計画を実行するスリリング、そして後半は脱走したあとのそれぞれの登場人物の多種多様な逃走劇のスリリングを描いているのだが、もはや前半部分の脱出計画が実行されたことにより、これは「自由でありたいと願う人間の心が生み出す創造力は不屈だ」というDIY精神を讃えている作品であるといえる。

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