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2010.02.09

「空と海をこえて」

昔、一晩だけ放送されたドラマがあって、
そのことをなぜかずっと覚えていて、
ふとネットで調べたら、
僕と同じようにずっと覚えている人がたくさんいて、うれしくなった。

それは1989年(僕は小学校6年生)に放送された、『空と海をこえて』という題名のドラマであった。
主な登場人物が後藤久美子と加藤茶、っていうこの組み合わせもすごいものがある。

そしてこのドラマのテーマは、「パソコン通信」である。インターネットがでる以前の時代のことなので、もはやその頃のことを思い出すのは少し困難を覚えるほどであるが、幸い私はその番組の7年後に大学生になったとき、かろうじてニフティ・サーブのパソコン通信を楽しむことができたから、ギリギリ「パソコン通信」という文字情報主体の、電話回線を利用したなんとも牧歌的な(今思えば、ね)世界を知っている。

このドラマについてウィキペディアでは(こちら)。参考になったブログは(こちら)がある。

ストーリーもここでくわしく紹介されているが、簡単にいえば、無人島でキャンプ旅行をしていた子どもたち(後藤久美子)が集団食中毒にかかり、島の電話機が故障し、パソコン通信しか外界との連絡手段が残されていなくて(言うまでもないが、携帯電話もない時代だから)、それを頼りにまったく知らない人(加藤茶や、その他たくさんの大人たち)へSOSを送ったら、怪しまれたりもするけれどもなんとか信用をとりつけ、そこから最終的にはフランスのパスツール研究所(!)から日本まで特殊な血清を運び込んでもらうまでも、すべてパソコン通信による「顔見知りじゃない人同士の助け合いのリレー」によって解決されていくという話だった。

「パソコン通信ってすごい」と、子どもながらに思った。
と同時に、はじめてパソコンを電話でつないで以来、今に至るまで、何らかのテキストメッセージのやりとりをパソコンでおこなうその行為の奥底には、あのドラマの存在がちらついていたのも確かである。

きっとそう思った人がたくさんいたんだろうと思う。その結果、いまのネット時代のおかげで、こうしていろんな人の当時のリアクションが散見できるわけで、それもまたすごい時代になったなぁという気分を改めて感じさせたりもする・・・たった一晩だけ放送された特番のドラマなのに、このインパクトの大きさは興味深い。

ラストシーンも印象的であった。無事に食中毒の被害から助かった後藤久美子が、その後、街中で人混みのなかを歩きながら「結局わたしたちを助けてくれた人たちのことは分からないままだ」みたいなことを思っていて、そのすぐ目の前を、たまたま加藤茶が何事もなく通り過ぎていく、というシーンで終わっていくのである。まさにパソコン通信ならではの匿名性みたいなものがあってはじめて成立するシーンだ。今思えば、ここからコミュニケーション文化におけるある種の時代の変容がはじまったことが示唆されていたのであろう。ベルリンの壁もこの年に壊れたことを思うと、またなんともいえない妙味を覚える。

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Comments

憶えてる!
わたしもそれ見てました。

あのドラマを見てパソコン通信やってみたい!と思ったもんね。
あれから、時が過ぎて今は動画まで見るんだもんねぇ。技術進歩は早い!

Posted by: りえぞ~ | 2010.02.10 00:34

僕もはっきり憶えていますよ
世界ふしぎ発見の枠でなぜか特別ドラマだった
ので、なんだろうとぼんやり見ていたら
最後まで見入ってしまった記憶があります
自分も小学生ながらにこういうことが
してみたいと思いましたね~

Posted by: アサガオポン | 2010.02.10 00:53

りえぞー・アサガオポン>なんと、2名も覚えていましたか!うれしいです。やー、やっぱりインパクトありましたよねぇ。たった一夜のドラマなのに、ここまで残るというのは、やはり名作ですね。

Posted by: HOWE | 2010.02.11 00:04

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