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2010.02.05

学術的ドキュメンタリーはもっとキャッチーであってもいいはずだ。

今日、人類学者によるドキュメンタリー映像作品を観る機会があった。
ドキュメンタリー映画というのは、客観性を保ちつつも、でも結局は作る人の思いやメッセージが反映されることになる。
そして一方、文化人類学というのは、複雑で答えの出ない部分をひたすら考え悩む営みでもある。
この両方の事情はよくわかる。
でも、だからといって「映画をきれいにまとめるのは、芸術家にまかせておけばいい」と言い切る意見にたいして、それもなんだかちょっと違うような気もして、そのことをずっと考えながらこうしてブログを書いている。

お客さんがたくさん見込めるテレビ番組や商業映画は、たしかに最近あまりにも「わかりやすい構図」でしか作られないような気もする。もっとわかりにくい微妙な問題を取り上げて、考え悩むことも必要だろうというぐらい、善悪・白黒はっきりしすぎているきらいがある。
でも逆に、ドキュメンタリーだったり学術的トピックスというのは、むしろもっとキャッチーでポップで「わかりやすい」ものであっていいんじゃないのか。というのも、わかりにくい問題をわかりにくいまま悩むドキュメンタリー映画なんていったい何人の人が好きこのんで観たがるか? ということだ。
ドキュメンタリーや学術資料は、ただでさえ幅広いオーディエンスを獲得するのが難しいのだ。
だから、学術的な視点ですぐに「作り手のポジショニングがどうのこうの」とか「視点の恣意性がどうの」とか「見る/見られる人の立場性がどうの」とか、そういうことを「すぐに」議論として持ち出すと、それこそ若い人にとって文化人類学とか硬派なドキュメンタリー映画とかが急速につまらなく思えてきたりするんじゃないか、なぜ入り口の時点でそんな面倒くさくて難しい本質的議論にすぐにもっていきたがるのか、それって回り回って損な話じゃないか、とか思うわけだ。

なので、むしろ「わかりやすいノリで、作り手の恣意的なディレクションにより思想的にも偏った、とてもキャッチーで親しみやすい学術的ドキュメンタリー」を目指して、ツッコミどころをたくさん備えていたほうが、そのぶんそこで議論がわきおこり、よっぽど有意義じゃないかと思う。論文と違って、映像を「作品」として作る以上、あえて開き直ってツッコミどころを満載にして作っていくことが何らかの突破口になるんじゃないか、そう思った。通常のパターンで消費される映像作品とは異なり、学術的なドキュメンタリー映画はとにかく「なるべくたくさんの、幅広い立場の人に見てもらい」かつそのうえで「議論のネタをたくさん提供する」ことができるかどうかでその価値が見いだされると思うからだ。

それこそいつも私が自戒を込めて考えていることだが、「表現しないよりかは、何らかの表現を、たとえ拙くても生み出すことのほうが、1ミリでも世の中にとって多様性をもたらす以上、やはりアウトプットはやったほうがいい」ということ、だ。二項対立的で迷うところでもあるが、どちらかといえばそっちの側に賭けたいのだ。「学術的なものだから、中立的で客観的なものをちゃんと作らなきゃ」といって初発の思いを押し殺して映像作品を作ったところで、どのみちその目標は幻想でしかないはずだから、どうせならどんどん好きなようにたくさん作ってみたらよろしーやないの、っていう気分なのである。

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Comments

言葉の用法には疑問がありますが、言わんとすることは
良くわかります(苦笑)

現状でいうと、どの分野の映像の制作者よりも
対象との向き合い方が「まじめ」なのです。
この議論の最先端にいるのが映像人類学者です。
他の分野の人達が驚くぐらいに…。

Posted by: T氏@KTM | 2010.02.07 at 00:16

T氏>そう、そうなんです、マジメなんですよね。ただしそのマジメさを押し通して突き抜けてしまっていくことで、実は損してしまうというか、失ってしまうところもあるんじゃないかなと思ったりもしますね。

Posted by: HOWE | 2010.02.07 at 21:36

さんせーい。
学術書ももっとポップでキャッチーであっていいはず。
いくら制作費をけずるためっていっても、ぎゅうぎゅうの組版して、ださい装丁にするから学生が買わなくなる気がする。

ブログもあたらしいの作ったので読んでください。

Posted by: こけし | 2010.02.08 at 11:59

こけし>コメントありがとう。ブログとは別個で、かなりいろいろお伺いしたいことが満載なんですが(笑)、ともあれ近々HOWEも送ります! ブログ再開を喜んでいます!!

Posted by: HOWE | 2010.02.08 at 23:10

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