教える子どもはまだいないけれども
清水義範の『わが子に教える作文教室』(講談社現代新書)が、すばらしい本だった。
いまこんなふうにほぼ毎日ブログを書き、フリーペーパーづくりを『趣味です』と言い切ってしまうようなヤツになってしまった私は、それでも小学校のとき、作文が嫌いだった。
ついでにいうと、本を読むのも嫌いだったはずだ。
でもこの本を読むと、その理由も分かる気がした。
長年小学生を相手に作文を教えていた清水義範は、「とにかく楽しく書く」ことが大切だと説く。そして「なんでも好きなことを書いて良い」というポリシーで子どもたちを指導してきたようだ。つまり子どもが作文のなかでネガティブなことだったり反社会的なことを書いたとしても、そこで「道徳」の授業をするのではなく、あくまでも「作文」の指導として、「どうしてそう思ったのか、もっと説明してごらん」という対応をとることを選ぶ。
そして特に、誰しもが経験のある「読書感想文」を書かせることは、「百害あって一利無し」と言い切る。あとで何かの意見を求められると思いながら本を読んだってまったく面白くないし、そしてどうしても先生(大人)の目を気にして、「本についてホメなくてはならない」という意識も働く。したがって、これは「読書嫌い」および「作文嫌い」を養成してしまうことになるのではないか、と。
なので「ほめて、ほめて、ほめまくって、親子で一緒に楽しんで作文(あるいは家庭内新聞だったり、手紙など)を書いていく」といったスタンスを大切にしていこうと清水氏はいう。そういう温かい目で見守られてのびのびと文章を綴ることの楽しさを知った子どもたちが書いた作文の実例をみると、「うぉぉぉー、小学生って、こんなことを書くんだ!」と、読んでいて楽しい気分にさせられる。
そして208ページの挿絵が、ちょっと涙が出そうなほど味わい深かったりする。
「子どもの書いた作文を、たまには手作り冊子にしてみたりして、公に発表してみましょう」というくだりに添えられたイラストなのだが、寝ている子どもの傍らでお父さんががんばって小冊子のコピーを綴じる作業にいそしんでいる図である。ガラにもなくグッときた。でもそれは、「あ、これはいつか自分がやることかもしれない」とリアルに思えたからだ。つまり自分には「フリペづくり」みたいなどうしようもない趣味しか残っていなくても、ある面での子どもの成長に寄与できるかもしれない可能性がそこで描かれていたのである。
自分が子どもを持ったとしたら、なんとかがんばって、この本のことを思い出して、一緒に文章を書きまくって遊べたらいいな、と素直に思った。やー、本当に気持ち悪いぐらいタテーシはスナオな気分になったよ今回のこの本には!(笑)
なのでぜひお子様をお持ちの方は、ぜひ読んでみてほしい。そして出来る限り実践してあげてほしい。何を書いても許してあげて、新しい作文を心待ちにしてあげてほしい。
そしてひいては、文章を楽しく綴るその姿勢は、オトナの僕らにとっても非常に、とっても、大事になってくるはずだ。
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Comments
清水氏の作文指導に関する主張は、分かりやすくて共感が持てるのでボクも好きです。
Posted by: あんとら | 2010.06.08 23:43
あんとら>さっそくのコメント、サンキウ。バリバリの現役の方(?)からそう言われると、我が意を得たりという感じです。
Posted by: HOWE | 2010.06.08 23:52