『おいしいハンバーガーのこわい話』
パッとみて、中身を読まなくても、だいたいあなたの想像通り、これはファストフード(とくにマクド)の批判本である。主に未成年の読者を対象にした、平易な文章で書かれている。
ハンバーガーは身体に悪い・・・という、だいたいの想像通りの内容なのだが、とりあえず古本屋で出会ってしまった以上、ちょっくら読んでおくかと思って目を通したわけだが、それでもやはり新しい視点を得ることができてよかったと思う。
この本ではハンバーガーだけじゃなくて、むしろポテト(マクドのポテトは、なぜあんなに旨いのか、という疑問も含めて)のほうにもかなりのブラックな背景を抱えていることだったり、あと清涼飲料水を飲み過ぎることの問題についてもかなりのページが割かれている。(あと、書名が『ハンバーガー・・・』とあるけれど、わりとKFCのチキンとかについても、それなりに、ええ・・・)
ファストフードのとりすぎで太りすぎた子どもたちに胃のバイパス手術をするようになったとある病院もまた、ファストフードチェーンのような事業展開をしているという皮肉なども、読んでいて切なくなってくる。
そしてこの本では、利益追求の末にいかに牛肉やじゃがいもや鶏肉をスピーディーに大規模に育てて出荷させるかという点を推し進めすぎたがゆえに、その周辺でどれぐらいリスクの高い深刻な事態を招いているかということも、非常にわかりやすく説明しているところを評価したい。
思えば、ちょっと前に上映されていたドキュメンタリー映画『いのちの食べかた』でも牛肉の加工工場における解体シーンがでてきて、鮮烈なショックを受けたわけだが、あの取材対象となった工場はたぶんヨーロッパのどこかであって、アメリカなのかどうかはちょっと今調べてもはっきりしていないのだが、ともあれこの本が報告するように、ラテンアメリカからの移民を雇って稼働させているアメリカの牛肉解体工場の事例(鶏と異なり、牛の大きさは一定じゃないため、機械で切り刻むのではなく、すべて手作業で行われるとのこと・・・そうすると、どうしたってヒューマンエラーは多発することになるし、猛スピードで回転しなくてはならない工場のラインにおいて、結果的に何が起こるかは、想像するだけで恐怖なのだが)などは、「これで本当に我々は『食べものを食べている』と言えるんかい?」と思えるほどの惨状であったりする。映画『いのちの食べかた』で出てきた牛肉加工工場などは、たぶんまったく問題ないレベルの工場かもしれず(まぁ、映画のために撮影を許可してくれるぐらいだから、なおさら問題ない工場なんだろう)、ファストフード向けの食肉加工工場がどうなのかは、果たしていったい・・・と思ってしまう。
そして、日本でも僕ら世代からたぶん10歳ぐらい上の範囲は、歴史上はじめて幼少期からファストフードの影響を過分に受けて生き続けていた最初の世代にあたるわけで、健康上のリスクがどのようなものなのか、その「実験結果」みたいなことがどんどん語られうるんじゃないかと想像してしまうわけで。
最終章は「きみたちにできること」というテーマで、要約すればひとこと「ファストフードを食うな!」という至極当たり前のこと(笑)を主張しているだけなのだが、それにプラスして私が提案したいのは、この本でしばしば取り上げられているように、「大規模なファストフードのチェーン店が、あらゆる地域に進出する以前の地域社会における食のありかた」という状況に思いを馳せる機会を増やすこと、そこに対する想像力を失わないでいること、歴史的な視野をもって食文化を見つめ直すこと、ではないかと。まぁ、その問題意識が今日のロハスだったり、マクロビオティックだったり、スローフード/ライフへの揺り戻しになっていっているのは言うまでもないけれども。
ちなみに、もう5年前になるのだけど、このブログに書いた私からのマクドナルド批判「ファストフードを『ファーストフード』と自分たちで勝手に言い換えるなバカ野郎!!」な記事のリンクをあらためて貼り付けておきたい→(こちら)。自分でもひさしぶりに読んで、あらためて怒りがこみあげてきたり。
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Comments
この手の問題はいつも頭悩ませるんだよね…
わかってはいるし危惧もしてる。「いのちの食べ方」ももれなく見ましたよw
しかし子供を持つと、時間や懐具合、そしてなにより子供の所望(CMのばか〜!ハッピーセットのバカ〜!)により選択せざるを得ない機会が増えるわけで。
もちろんジャンクフードは極力控えたいというのが親心なのですがね。
ただ私がミクシーで入ってるコミュ「知らなきゃいけないこと」で学んだことだけど、じゃあスローライフ、ロハス、有機農法の選択などが本当に自然なのか?本当に無駄な殺生をしないことや脱機械的生産ラインに繋がるのか?ということもまた、学んで行かなければならないことだということも認識する必要があると思います。
あ、論点がもし違ってたらごめんなさいね。派生した話題、ということで勘弁。
この本探してみようかな〜
Posted by: Yuri Meine | 2010.09.15 10:16
Yuri Meine>まさに重要な論点をありがとうございます。CMやおもちゃのチカラには抗えませんよね・・・そして自然的なるもの、についてもたとえばマクロビオティックというのは、そこまで厳格にいくとかえって不自然なんじゃないかとすら思えてきたりしますよね。むずかしい・・・
Posted by: HOWE | 2010.09.15 23:06
おひさしぶりです。
アメリカに引っ越して1ヶ月、最近ようやく落ち着いて、久々にじっくりブログを読ませていただきました。
ファストフード元祖の国に住んで思うのが、外食でファストフードを避けるのが難しい!マクドやケンタッキー以外にもそのテのファストフードが山のようにあるし、ベーカリーカフェのサンドイッチだって、このハム、大丈夫かいな…?と疑ってかかってしまう。日本は最近、ROHASとか有機とか意識する人が増えてきたけど、こっちはそんなに多くなさそうです。
そう、マクド批判といえば、Super Size Meという映画見たことある?1ヶ月マクドだけで生活したらどうなるか?というドキュメンタリーなんだけど、けっこう面白いよ。
Posted by: yokoro | 2010.09.16 09:04
yokoro>おおお!!ご無沙汰です。また連絡先を教えてくださいHOWE送付させていただきます。『スーパーサイズミー!』は、僕も観たのですが、確かにあれを観て以来、極力マクドには行っていませんね。そういう意味ではすごい影響を受けたドキュメンタリー映画かもしれず・・・
Posted by: HOWE | 2010.09.16 21:51
学生時代はマクドでバイト、メニューのほとんどを、さんざん食べまくりましたが・・。
ここ数年で、パッタリ食べなくなったな~。
年齢のせいか、ポテトが完食できない・・笑
胃が受け付けない様になりました。
外食も、マクロビっぽい物が好きになったり。
肉より野菜が旨い~って思うこの頃。
でも、マックカフェにはたまに行くかな。
マックフルーリーはやばい。はまるわ笑
Posted by: tomo | 2010.09.21 09:35
tomo>マックフルーリーって初めて知りました。そういうのがあるんですな。そして結局呪縛からは逃れられない、と(笑)
Posted by: HOWE | 2010.09.21 22:17