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2011.01.23

『エリックを探して』

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ケン・ローチ監督の映画『エリックを探して』を観る。
マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるエリック・カントナも本人役で登場するこの映画、「テーマは自己啓発なんで観てください」とサッカーファンで映画好きのFくんからも薦められていた。

私がイングランドのサッカーを熱心に観るようになった頃にはすでにカントナは引退していた。カントナはその後サッカー選手のキャリアとしては異例ともいえる俳優業に進出して活躍しており、この映画もかなりのシーンで登場し、荒廃した家庭問題に悩むマンチェスターの郵便局員の男を叱咤激励する「幻の導師(?)」としてフィルムのなかでも現役時代と変わらぬ存在感を放っている(ちょうど『夢をかなえるゾウ』のガネーシャの役がエリック・カントナだという設定なわけである。そう思うとますますこの映画は構想段階から尋常じゃない感じが増してくるな)。

映画そのものは、社会派で知られるケン・ローチ監督ならではのアプローチで現代イギリス社会におけるさまざまな「暗部」を示しつつも、最終的なオチが「サッカーファンの情熱的な結束力(というかほとんどハタ迷惑なフーリガン的文化)」みたいなノリでガツンと締めくくっていくあたりが痛快である。正真正銘の「フットボールへの愛ゆえに作られた映画」であり、要するに「愛すべきバカっぽさが最後には勝つ」というストーリーなのである。あぁ、イングランド・フットボールはやっぱりいいなぁ、っていう。

カントナは「美しいパスからすべてがはじまる」とか「仲間を信じろ」とか「いつも観客に『贈り物』がしたかった」など、サッカーを通した人生訓を述べていく。ひょっとしたらカントナはフットボーラーとして、そして俳優として、そのセリフを言うために生まれてきたかのようだ。あのカントナだからこそそういうことを格好つけて言える権利があるような気がするからだ(笑)。

そしてサッカーファンの観点からいうと、物語の本筋とは関係ないところでFCユナイテッド・オブ・マンチェスター(FCUM)について触れられていたことが印象的である。これは現実の世界で、2005年にマンチェスター・ユナイテッドがアメリカ人実業家によって買収されることに反対したサポーターたちが、自分たちで新しく結成したクラブチームのことである。FCUMは現在、7部リーグ相当で活動している小さな小さなサッカークラブであるが、私も最近になってその存在を知った次第で、チェルシーファンでありながらもちょっと心情的に応援したくなっているほどだ。コアなサッカーファンのなかでも、FCUMのユニフォームをこの映画で初めて観たという人がほとんどであろう。そして映画のなかでもパブでマンチェスターユナイテッドの試合をテレビで観戦するサポーターと、試合を観に来ているが「心はFCUM」のサポーターが口論になって、このシーンでは近年のサッカークラブをめぐる金満主義的傾向が批判されていく。まぁ、それでも口論していた両チームのサポーター氏も「結局はマンチェスターが好きということでは一致団結」みたいなノリで、しまいには仲直りしていくわけで、このあたりは映画監督のサッカーファンに対するある種の期待感みたいな気持ちがでている気がする。

そうしてクライマックスの「カントナ作戦」は、それまでの陰鬱な展開を「フットボールとユーモア」という2つの武器で蹴り飛ばしていく、忘れがたいインパクトと笑いをもたらしてくれるシーンであった。
でも全体的にこの映画をふりかえると、どれを切り取っても「青少年の健全育成」にはそぐわない内容だということに気づく。「決してマネしないでください」っていう行為のオンパレードだ。
サッカーのスタジアムで騒いだあとに、ふと我に返ったときの気恥ずかしさみたいなものだ。

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Comments

ビッグイシューにもレビューが掲載されてましたね。
興味あったんだけど、関西でも上映しているのか。

Posted by: MSK | 2011.01.24 at 23:25

MSK>たしかにビッグイシュー的なテーマを扱っていますね。もうまもなく公開終了かもしれません。

Posted by: HOWE | 2011.01.26 at 22:21

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