とっさの有名人対応力(TYT)について
父親が、私に対する子育てにおいて未だに後悔していることとして、こんなエピソードを挙げてくれた。
私が小学生のとき、しばしば大阪の京橋にある松下電器の「ツイン21」というビルへ遊びに行っていたのだが、あるときそのビルのなかで、晩年の松下幸之助が車いすに乗って、付き人とともに移動している現場に出くわしたのである。
松下幸之助を尊敬していた父親は本人を目の当たりにして緊張したらしく、ついぞ自分の子どもに向かって、指を差して「あれが松下幸之助だ!よく見ておけ!」とかなんとか、そういうことが言えなかったらしい。(そして実際、私が記憶しているのは松下幸之助の姿ではなく、なんだかえらくテンションが高かった父親のおぼろげな印象だ)
「あの場ではそういうことがはばかられたが、お前にちゃんと松下幸之助の存在を認識させておきたかったなぁと後悔している」というのが、この30数年間における最大の後悔だった・・・というわけで、「そ、そうなのか・・・」と思ってしまうわけだが。
こういうのを「とっさの有名人対応力(略してTYT)」とでも呼べそうである。
別にいちいち対応しなくてもいいはずなんだろうが、でもやはりどこかでこのチカラを向上させておくことが、こうした後悔を生まずに済む。
ちなみに私の好きな小説『ジェネレーションX』では、こういうときに「あなたのアルバムは全部持っています」と(どんなジャンルの有名人であれ)言っておいたらいいんだよと登場人物の口から語られていたことを思い出すわけだが・・・さすがに松下幸之助に向かっては言えないな。
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