G大阪×甲府にしびれる
このあいだは、ガンバ大阪×ヴァンフォーレ甲府の試合を万博で観ていたのである。まさか残留争いまっただなかの甲府がガンバをアウェイで0-2で下すとは予想だにしなかった。
ヴァンフォーレを観たかったのは、今をときめくハーフナー・マイクの高さっぷりを拝む目的もあったが、なにより市川や伊東輝悦といった、清水から移籍したベテランたちを観たいのもあった。
で、0-1でリードした残り10分あたりで、伊東輝悦が交代出場した。つまり指揮官は「1点を守りきれ」というメッセージを送った。
ようやくお目当ての伊東テルがピッチに登場したので、必死に守備をつづけるヴァンフォーレのなかにあって、守備的ボランチとして残り10分間伊東テルがどういうプレーを見せるのか、最後までずっと彼の動きを中心に見つめていた。
「インド人を右に!」
で、これはおそらく、まともに11人制サッカーをやったことのある人だったら当たり前のことなのかもしれないが、私はあの日、伊東テルの動きをひたすら見続けたことで、守備に専念するボランチがどういう仕事量をこなしているかをはじめて理解した気がする。
彼はとにかく、前線の相手フォワードの位置を何度も振り向いて確認をとりながら、中盤でボールを持っている相手選手から簡単な縦のパスがフォワードに渡らないよう、その間のスペースを消すような場所にポジションを取り続けていた。まさに職人ワザとも言える、その小刻みな修正力に、グッと魅了されっぱなしであった。地味なプレイなので歓声は上げられないが、伊東テルが後ろを振り返って、すかさず数歩自分の立ち位置をずらしながら、そして自分の目の前の相手選手にボールが渡るとスッと前に進んでプレスをかけ、そしてまたボールがほかのサイドに流れると、ふたたび相手のボール保持者と、前線の相手フォワードとの間の空間を埋めるべく微調整を繰り返す・・・そして機を見てパスカットも試みるのだが、これは集中して相手のポジショニングやボールの位置をずっと追いかけていたからこそできることなのだろう。そうこうして守備がガッチリはまった甲府は、そこからカウンターでさらに終了間際に追加点を挙げることに成功した。
や、こんなことはサッカーを普通にプレイしたことのある人にとっては当たり前のことかもしれないが、いずれにせよテレビで観ているとどうしてもボールの動きを中心にカメラワークが動いてしまうので、今回のように、「特定の選手が数歩だけポジションを調整したことの意図」というものを、一定の基準線のうえで観察できるのは、やはりスタジアムで生観戦するからこそなのであろう。そうやって少しずつ、生で観戦することの面白さに気づいていくのであった。
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