バーミンガム、ウエストブロム、そしてウォルバーハンプトンでダビド・ルイスに会う
早朝、会長とtoyottiが帰国の途につき、みんなそろってヴィクトリア駅の宿を出て、これにて「現地集合して合宿」の日々が終わる。4人部屋をずっと使わせてもらっていて、部屋でいつものノリでしゃべったあとに一階に下りてドアを開けるとそこはロンドンなので、我々はこの宿の入り口を「どこでもドア」と呼んでいた。そういう思い出ができていた。
そうして私はふたたび一人になり、ユーストン駅から長距離列車に乗って、バーミンガムへむかった。
バーミンガムは中心となるニューストリート駅周辺の中心街が迷路のように入り組んでいて分かりにくい。
いったんホテルに向かって荷物を預かってもらい、こんどはスノー・ヒル駅まで歩く。ここから「ミッドランド・メトロ」というトラム列車のこじんまりした線が通っているのだが、この線こそが、バーミンガムと、今日の目的地であるウォルバーハンプトンを結んでおり、しかもその線の途中には、別のサッカークラブ「ウエストブロムウィッチ・アルビオンFC」(WBA)のスタジアム最寄り駅があるのだった。この線の存在を知ったときには、これこそ自分が使うべき線だと確信した。1日乗り放題のチケットを車掌さんから購入すれば、乗り降りも自由。
そうしてWBAのスタジアム「ザ・ホーソンズ」に向かってみた。
駅のホームから一般道に出ると、すぐにスタジアムが見える。そのほかには何もなく人もほとんど歩いていない、そういう街であった。クルマの交通量だけが多い印象。
スタジアムでの買い物の楽しみのひとつは、こうしたチーム独自の買い物袋をゲットすることにもある。WBAのこれは、とても良いデザインだと思う。思わずもう1枚追加でもらって帰った。「エクストラで“ドギーバッグ”ください」と言えば通じることを経験から学んだ。
で、一通りスタジアムの外観をぐるっと回って眺めたあと、帰り道を探そうと駐車場の片隅に目をやると、こういう場所があったのだ。
なんだろうと思って近づいてみると、ここはなんと墓場であった。そう、サポーターとおぼしき故人がたくさん眠っていたのである。
お墓にはそれぞれがチームのグッズや色をあしらったり、「墓石」にクラブのエンブレムやユニフォームのデザインを刻むなど、その根性というか、気合いの入りっぷりに、ただひたすら敬服した。
「そうだよな、そういうことなんだよな」と思った。
フットボールは限りなく、この人たちにとっては宗教の領域に近いのである。
クラブという存在が、サッカーチームというだけでなく、何らかの信仰の対象みたいなものになっているのである。
(と同時に、WBAというクラブもこの場所でスタジアムを運営しつづけるという「決意」がないと、こういうものが作れないであろうし)
あぁ、すごいものを観てしまったと思い、また閑散としたミッドランド・メトロに乗り込んで、のどかな列車旅行が続く。バーミンガムからだいたい30分ぐらいの距離で、終点のウォルバーハンプトンに到着。
たしかに賑わいのある街中ではあったが、やはりここもサッカーがなければ絶対に来ないであろう場所である。
ウォルバーハンプトン・ワンダラーズFC、通称「ウルブズ」が、この日チェルシーと試合を行う。
ウルブズも、そして先述のWBAも、じつはイングランドで世界最古のサッカーのリーグ戦が行われた1888年シーズンにおいて、最初に参加した12クラブのメンバーである。120年前のことだ。
チェルシーみたいな20世紀にできたチームとは歴史の重みが違うのである(笑)
ショップも試合の日は混雑する。
キツネのイラストのエンブレムが、イングランドのクラブにしては珍しく「シンプルすぎるデザイン」なので、好みが分かれるところだ。
海外から予約したチケットは、今回については現地のこういうボックスオフィスで受け取りになった。
チケットがちゃんと確保されているのか、いつだってヒヤヒヤする。
今回はチェルシーの側ではなく、ホームのウルブズ側のチケットを確保した。はじめてイングランドで「ゴール裏の上段席」にトライしてみた。やはりサッカー専用スタジアムは、ゴール裏でもじゅうぶん楽しめる。
試合のほうは、1-0でチェルシーが勝つかと思っていた終了間際に同点にされ「うひゃー、1分け1敗のチェルシーを確認する旅行になるのか」と思いきや、さらにその数分後にフランク・ランパードの勝ち越し弾で辛くも勝ち点3をゲットした、という感じだった。
で、試合のあとに、せっかくなのでアウェイのチェルシー用のバスの近くで「出待ち」をしてみた。
ほとんどの選手はそのままバスに乗り込むのだが、ごくたまにバスを取り囲む我々のほうへ顔を見せてくれる選手がいたり。
試合終了後40分ぐらいの時点で、わりとバスのなかに入っていく選手が多くなる。
すると、こともあろうに私が今シーズンでもっともチェルシーで注目している選手、ダビド・ルイスがわざわざみんなのところに来てくれてサインをしてくれた!
もちろん人だかりで殺到するわけで、最初は自分の差し出したメモ帳もスルーされてしまった。
(そしてそのすぐ近くで、同じブラジル人のラミレスもサインをするべく僕らのほうにやってきてくれていた)
しかし、とにかく自分としてはダビド・ルイスに声をかけたいので、すかさずさらに場所を先回りして待ちかまえて、無事にメモ帳にサインをいただくことができた。
そして「あんたを観るために日本から来たんやでー!!」ということを伝えたら、「ジャパン? ウワーオ」と返してくれた。
2012年、最初に僕の言動に驚いてくれた人物は、現役ブラジル代表ディフェンダーのダビド・ルイスさんになりました! わー。
いやはや、ほんと、ウォルバーハンプトンまで来たかいがあった。
まさかダビド・ルイスと話ができるとは。
チェルシーのホームゲームでは、ファンも多いので「出待ち」をすることはないし、トレーニング場も基本的に一般人の立ち入りができないようになっている。なので選手からサインをもらうのは相当に難しいのだが、こうしてアウェイのときに、場合によってはチャンスがあるのだなということが今回分かった。
こうしてフットボールをミーハーかつマニアックに追いかける旅は、まだ続く・・・。
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