最近いただいたZine/フリーペーパーについて
この一ヶ月間ぐらいのあいだ、なぜだか不思議にいろいろな方々からZineやフリーペーパーをいただく機会が多かった。
「朕朕朕」というユニットによる『2011 ニーゼロイチイチ』。メンバーの1人であるTさんからいただく。関西を中心にした50人のキーパーソン(友人知人)に「2011年、この町で印象的だったことを5つ教えてください」と投げかけた、その記録集。震災のあった一年のなかで、そのなかでも一人一人がつかみとっていく日常のなかで、こんなにも多様で楽しいイベントや出来事があったのだ、ということを教えてくれる。そしてこれを読んで「あぁ行っておけばよかった」と後悔するイベントも多し。民博のウメサオタダオ展とか。
『SOBSTORY no.9』 by Andrew Martin Scott。代官山にできたらしい「オトナ向けTSUTAYA」ではZineも売られていたようで、Tさんよりお土産でこのZineをいただく。表紙のデザインのレトロな雰囲気にグッとくる。そして中は、赤い紙に印刷された白黒写真集。以前も書いたが、なぜ海外の日常風景を撮影した写真を集めるだけでこんなにグッとくるものが出来るのか。そして色つきの用紙に印刷するというのも、いつか自分もマネしたいと思う。
『Pantry:パンと旅行とときどき工作』。このフリペはこの春卒業を迎えた学生のパン粉さんによるもの。卒業式の日にこの第2号(第2店舗)をいただけて感慨深い。テーマをもった外国旅行をし、その記録を手書きでまとめてフリペにするという、そういう作業のもたらす面白さというのは、作った本人だけでなくそれを読んだ人にも伝播していくと思う。この大学生活で「旅とパン屋めぐりとフリペづくり」の面白さを実践的に知ってしまった以上、ぜひこれからもフリペを作り続けて欲しいと願う。
猫町存美さんの『自分毒』最新号。冒頭に「日々心に浮かびあがったことなどを、言う相手も少ないし、言うほどでもないし、じゃあ忘れてしまえばいいのにできなくて、どうしていいか分からず書き留めました」とあり、そしてそこに付け加えるとすれば「その文章を印刷して、ホッチキスで綴じて、いろいろなところに配って、そしてそれをあなたが今、読んでいる」ということ。「なぜフリーペーパーをつくるのか」という、そこの「なぜ」の部分には、いろいろな「行ったり来たり」だったり「迷い」みたいなものがあって、でも「書かずにはいられない、印刷せずにはいられない、という側」のほうへ向かっていくベクトルがある。今号でも「別れは大便のにおい」の一文とか、凄みを感じさせる。
におい、といえば先日お会いしたオーストラリア人アクティビストのBさんからお土産でいただいた日本のZine、『においの街角』、entangled text and confused texture(E.T.C.T.)発行。これは「匂い」をテーマにかなり突っ込んだ取材と広範囲のアンテナで創り上げられた内容で素直に感心した。「生活者にとっての匂いの記憶」は、そのままその街の歴史を浮かび上がらせていくことにもなる。そういえば以前仕事でお招きした歴史家アラン・コルバン先生の著作に『においの歴史』ってあったなぁと思い出す(読んでませんが)。まさに匂いは歴史的資料、感性による資料になりうる。
『雲のうえのしたで』。これは北九州の情報誌『雲のうえ』を応援するファンクラブ会報誌としてつくられた。北九州市にはまだ行ったことがないけれど、私もファンクラブに入った(笑)。とにかく「雲のうえのしたで」というネーミングが秀逸だと感じ入った。既存の雑誌のファンによる、もうひとつの別の紙メディアという構造も興味深い。主となるメディアの「サブストーリー」だったり「背景」みたいなものを魅力的に後方支援で伝えていくという、フリーペーパー/Zineが果たし得る機能の可能性を感じさせてくれる。
自分もいただいてばっかりではなく、できるだけはやく次の『HOWE』がお届けできるように努めます、ハイ。
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