深夜営業の美術館があったら
深夜営業の美術館があってもいいと思うのだ。
これは「夜間も特別開館しています」的な意味での「夜営業」ではなく(そういうのは近年増えているけれども)、とにかく「深夜営業」に特化した美術館というものだ。
そもそもすでに音楽や映画などは、深夜に味わえる機会がそこかしこにあるわけだ。
それだったら美術品だって深夜に味わえる場所があってもいいではないか。
絵画や写真、彫刻とか陶器とか生け花とか書とかキルトとか、真夜中に鑑賞することでまた違った味わいになったりするはずである。
そしてむしろ、深夜だからこそ、味わいたくなる絵画だったり生け花があったりするかもしれないのだ。
眠い目をこすりながら、「あぁ、この枝の向きがいいねぇ、グゥー」とかいうのはアリだと思うのだ。作品タイトルが「ウトウト」だったりとか。
都市には美術館がたくさんある。それがこうして一律同じような営業時間であっていいのだろうか。
ひとつやふたつぐらい、居酒屋と似たような営業時間で運営されている、へそ曲がりな美術館があってもいいだろう。京都駅ビル伊勢丹に併設の「美術館『えき』」は、駅を名乗るぐらいなら、せめて終電の時間ぐらいまで開館しろよ。
たとえば美術愛好家は、旅行先で美術館めぐりをするわけだが、そういう深夜営業美術館があれば、旅先での夜は確実に立ち寄るであろう。
それに朝まで開いている美術館なんてあったら最高である。「カラオケでオール」とは違った選択肢が増えるのである。「ダリ展でオール」なんて、シュールの極みである。世界中のダリファンが集まるかもしれないぐらいの。
なにより、バーのあとにゆっくり夜の美術館めぐりなんて、それこそ都会のデートコースに最適ではないか。ほんと、誰かやらないか、深夜営業美術館。もう日本の都市部にこれ以上コンビニなんて要らないんだから、そのあたり文化事業に雇用を生み出していってほしいものだ。
まぁ、きっと、美術館が深夜営業に踏み切れないことの理由のひとつは、儲からないうえに「酔っ払いが来場するリスク」があるからだろう。館内でイビキをかいて横たわって「鑑賞」するスタイルが多発する。あるいはひとりで絵画にむかってつぶやきながら「気どってんじゃねぇよ!」って言ってからんだり。そこの問題をクリアすれば、たとえば朝焼けに照らされたイエス・キリストの彫刻が味わえたりして、ひたすら神秘的じゃないか。
そして美術館めぐりのお楽しみ、ミュージアム・ショップではマクラを売ってみよう。きっと、デパートよりもよく売れる。「シャガールの絵画の柄のマクラ」とか、欲しくなってきませんか。
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