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2013.12.24

名古屋と浜松の旅のこと@AmaZING

12月21日、ついにZINGの主宰するAmaZINGにお邪魔する日がやってきた。

そして浜松にいく直前、どうしても名古屋に立ち寄りたかった。

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名古屋市美術館での会期が終わりかけだった「ハイレッド・センター:直接行動の軌跡展」。これは絶対に行かねばならないと思っていて、このタイミングで見られてよかった。どうしてこの展覧会が関西の美術館でどこも行われないのか、残念でならない。橋下改革下の大阪なんかでこそ、このアートによる攻撃的ユーモア&パンク精神に学ぶことは多いはずなのに。

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私がいちばん好きなのはこの「首都圏清掃整理促進運動」だ。東京五輪前の銀座で勝手に「清掃中」の看板をたて、不必要なまでに道路を清掃する白衣の集団・・・まさに歴史は繰り返されていて、いま再び東京オリンピックが決定してしまった時代状況を思うと、このゲリラ・パフォーマンスが示唆するメッセージが急激にリアルなものになっている。なにより私の個人的興味においてこれは文字通り「グラフィティの裏返し」のように見える。つまり「公共空間を舞台にした、意味のない暴力的な清掃作業」である。

美術館をあとにして、そのあと本山駅にむかい、シマウマ書房さんへ。
「ぱんとたまねぎ」ハヤシさんの『パン語辞典』(誠文堂新光社)出版を記念した原画展があり、この日たまたまハヤシさんが「パンはんこ」ワークショップを行うべくお店にいたのであった。実に久しぶりにお会いでき、しかも以前トークイベントをご一緒させていただいたシマウマ書房さんでの再会は感慨深いものがあった。

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用意されたハンコ。これを使うと、誰しもが「ぱんとたまねぎ」テイストのイラストが描ける。

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自分の作品。

『パン語辞典』は、リアルにパンをめぐる用語辞典でもあるが、なかには「パンナム航空」とか「パンってついているだけやん!」と思える項目まで律儀にイラスト付きで書きまくっている。かなりのイラストを描いたようで、労作である。

ハヤシさんは常々、「いつかパンについての辞書を作りたいんです」という、一見よくわからない夢を語っていたが、それから数年後、そこには本当に『パン語辞典』なる書籍が平積みになっているわけである。そんなわけだから、「夢を語り続けると、本当にかなうこと」を現実化させたハヤシさんを讃えようと訪れたのだが、当の本人からは「そんなこと言ってましたっけ?」と言われてちょっとガクッとなる(笑)。「夢のパン列車」のときもそうかもしれないが、ハヤシさんはマイペースに活動を続けるなかで、ひょんなことから自分の思い描いていた世界を、パンの発酵のように? 気づけばじんわりと「人生になじませて」叶えてきている気がする。必ずしも鼻息荒く突き進むだけが人生じゃない、っていうことを教えられている。

そしてシマウマ書房の鈴木さんからは、今年実施された『岐阜マン』の原画展の話など、興味深い話を聞かせていただく。また、私のロンドン好き欲望を刺激するような、ちょっとレトロなロンドン地図をみせてくれて、思わず衝動買い。たまにしかお会いしないのに、絶妙な「古書コンシェルジュ」ぶりを鈴木さんは発揮されていた。

こうしてわずかな滞在時間だったが、名古屋をあとにして、はじめての浜松へ。

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ずっとネットでZINGの活動を拝見していたが、やはり現場に来るとなると、新しい緊張感みたいなものがやってきていたのだろう。いま振り返ると、私はこの日にZINGの入り口および中の写真をほとんど撮影していないのであった。「写真を撮り忘れるほどの状況だった」、ということだ。

入るなり、ZINGの吉田さんがそこにいたので自己紹介をする。自分がネットの写真だけで見ていた感覚以上にZINGの作業部屋は広く、いろいろなものがあって・・・こうやってブログを書きながら「いろいろなものがあって」なんていう文章表現しか思いつかない自分にちょっと辟易してしまいそうなぐらいに、とにかく「いろいろなものがあって」、そしてその空間にたいして「すげぇー!」としか言っていなかった記憶がある。

そしてまた吉田さんご自身のキャラクターや活動もとても興味深く、そのあとやってきた友野さんにも初めて対面し(実はもともと友野さんのお姉さんとは知り合いだったのだが、それを知らずにZINGを通してタテイシに連絡があったという面白い奇縁)、そんなZINGのお二人に加えてサポートスタッフで来ていた学生のYさんが、以前書いたという「DIY女子」についてのレポートを持ってきていて、それを読ませてもらったら、自分がかねてから課題としていた「DIYの歴史的背景」についてガッツリ調査していたりして「そこにいる人も、場所も、みんな『すげぇー!』となってしまうしかない状態」になり、それに加えてこの夢のような「いろいろなものがある部屋」の持つチカラに圧倒されて、冷静さを保てない状態のまま、予定のトークイベントの時間を迎えたのであった。

そしてこの日来場していただいた方々のほとんどが、じつは『DIY TRIP』のZINEを読んでくれていたようで、イベントに来ていただいたことも含めて本当に感謝、感謝であった。
ZINEやDIY精神のこと、いままで作ったZINEの話やこれから作りたいことの話などをさせていただく。

そしてイベント後半は、ZINGの2人がポートランドやニューヨークにおいてZINEをめぐる一連の旅を行ったときの写真を紹介しながら話をしてくれて、私も横で見ながらコメントをつけさせていただいた。私が2007年にいったときとは異なる場所にインディペンデント・パブリッシング・リソース・センタ―はあり、その内部をじっくり写真つきで紹介していただく。再びポートランドにいきたくなる。

そしてZINGのお二人が向かうところに、素敵な出会いがあって、それがさらに旅を豊かなものにしていた。「二人組だったから、突然訪れてみた印刷会社の見学もできたのかもしれない」というのは、なるほどその通りだなーと思った。

「写真を見てその場でコメントを差し挟む」というスタイルでトークイベントに臨むのは初めてだったが、これがとても楽しくて、その後もついつい私も調子にのって喋りすぎてしまい、質疑応答の時間があまり取れずに申し訳なかった。その後も打ち上げの会場でいろいろとお話をさせていただき、「ちかいうちに長野県松本市に行かねば!」と思わせる貴重なお話など、いろいろと。そして海辺ならではの美味しい魚料理を楽しませていただく。

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明けて翌日、午前中にZINGで行われたワークショップを見学させてもらう。このときは浜松で実施されている「こどもアートスタジオ」の一環として、ZINGを舞台とした製本体験を子どもたちにしてもらうというもの。「星」と「木」についての本を作るというテーマのもと、2時間ぐらいのセッション。

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ワークショップのディレクターをされているホシノさんの(ドレッドヘアをなびかせるお父さん、といった見た目のインパクトも含めた)ファンキーで朗らかなファシリテーションのもと、ZINGの二人によるガイダンスにひっぱられ、子どもたちが私の想像を越えて手を動かしコトバを操り、各々の作品を創り上げていく。

とくにホシノさんと子どもたちの対話状況が面白くて、子どもってこんなに自分のコトバで喋れるのか!? というのが本当に正直な驚きなのであった。これは創作的な環境がそうさせるのか、それとももともと子どもに備わっている能力なのか? そのことに驚きつつ、「ひょっとしたら大きくなるにつれて人間は、自分の思っていることを自由にコトバにのせて話しにくくなりがちなのか?」といったことをボンヤリと考えさせられたり。

そうして子どもたちと実によい距離感で丁々発止のやりとりを展開するホシノさんはポツッと、「たまには、子どもにたいして訳の分からないこと(難しいこと)を言ってみたりする」と教えてくださったのが印象的。そうやって子どもに対話のなかで考えさせたり引っかかりを誘発させることがポイントなのだろう。こういうオトナが立ちはだかれば、そりゃあ頭フル回転でコトバも駆使するし、そして目の前の道具を使っていろいろなアートを生み出して、それをもって立ち向かっていきたくなるよなぁ、と。

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そしてコーディネーターの青木さんはじめ、サポート役に回っていた静岡文化芸術大学の快活で素敵な学生さんたちも、子どもと一緒に何かを創り上げることを楽しんでいて、飽きさせない雰囲気が維持されていた。2時間っていうのは子どもにとってはかなり集中力やエネルギーを要するのではないだろうかと思われるが、一度勢いがつくとどんどんと子どもたちは作品を仕上げていく。最初はどういう展開になるかまったく予測ができなかったが、とても素敵な作品を各々が仕上げ、人数分をコピーして(ZINGの二人が大変そうだった)、無事に終了。

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ちょうど前日の夜は私がZINEづくりについて語らせてもらっていたその空間は、この朝に、子どもたちによるプリミティブな衝動による冊子づくりの「嵐」が舞い上がる現場となっていて、そういう多彩な時空間を共有できるこの場所が、さらにいっそう魅力的に感じた。

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ワークショップ後、ここを立ち去る時間が近づいてきて、わずか数時間の滞在ながら、名残惜しい気分が強まった。

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「ここに残って、自分ももっといろいろなものを創ってみたい」という気持ちと、そして都合上、この空間が2月末にはなくなっていくことへの、切なさみたいな気持ちが混ざっていたように思う。

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そしてトークイベントに来ていただいた人々や、一緒にワークショップをともにした人々、そしてなによりこの素晴らしい空間を勇気を持って作ってきたZINGの二人への、リスペクトや感謝の気持ちもこみ上げてきて。

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こうしてブログを書きながらも、どこかでまだ自分はこの空間に佇んでいるような気分になっていたり。

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そう、もちろん、このAmaZINGの空間が将来的にどうなるかはともあれ、ZINEを創ったりDIY精神を発揮したり、人と人が協働していくことそのものは、どこにいても何をしていてもずっと続いていくことであるし、そうして僕らはまたいつかどこかで面白い時間を過ごせることを期待していきたいと切に思う。

本当に、ありがとうございました。

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