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2013.12.19

映画『世界一美しい本を作る男:シュタイデルとの旅』@京都みなみ会館

『世界一美しい本を作る男:シュタイデルとの旅』

Steidl

ドキュメンタリー映画として、そこまで抑揚がある内容でもなかったので、とても淡々とした時間が過ぎていったのだけど、とにかく「ドイツの職人気質」は徹底的に味わえた気がする。こうやってあらゆる工程をひとつの会社・工場で作っていく本づくりっていうのは、絶滅危惧種ばりに珍しいものになっていくのだろうし、ますますこの様子をみると「未来の書籍は工芸品扱いになるのだろうか」という想いも確信しつつ。

で、このシュタイデルさんは、作業部屋でこもりっきりになるだけでなく、作家(おおくは写真家)やクライアントと直接会って打ち合わせをこなしていくことを大切にする主義のようで、カメラは世界中を飛び回るシュタイデル氏を追いかけていく。そうして、シュタイデル氏は一癖二癖あるアーティストたちと直接向き合って、同じ紙を触りつつ、インクや色調をめぐる議論を重ねたり、カタールの広大な砂漠でクライアントと打ち合わせをしながら、そこにあった石や草の葉の色に触れて「この色調で装丁を作りましょう」と提案したりする、この文字通りの「現場主義」なところが強く印象に残った。

ちょっと話が変わるが、最近の学生さんの動きをみてドキッとさせられるのは、イベントの準備などの打ち合わせ・ミーティングにおいて、忙しいメンバーたちが集まる時間が取れないからといって、LINEやフェイスブックやグーグルなんたらとかで作業をどんどん進めていくわけで、もちろんこれからもそういう流れは止めようが無く、積極的に活用して効率化を図るべきなのもわかるのだが、生身の人間を集めるためのイベント準備作業が、そうしたバーチャル空間の電子処理だけで本当に達成できるのかどうか、それで本当に満足のいくものが作れているのか、古い世代(?)の私はとても警戒感を抱いてしまうのである。そしてまた、そういう世代が未来の市民社会を運営していくことに、なんとなくナナメ後ろからコソッと「げ、現場主義でいこうぜ・・・」と言いたくもなる、そういう状況だっただけに、なおさらこのシュタイデル氏の本づくりをめぐるドキュメンタリーが、地味ながらも、そして淡々としながらも、おおらかな共感をもって眺めることができた。

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映画館で『サヴァイヴィング・ザ・ポリス』のチラシが入手できたので来て良かった。これと同じポスターが廊下に貼ってあって、販売して欲しいぐらい。京都だとみなみ会館で1月18日から一週間しか上映しないらしいので、なんとかして行きたいところ。
スチュワート・コープランドが、ドラマーの目線でバンドの姿を8ミリカメラで撮り続けていた映像を中心に構成したユニークなドキュメンタリー映画『インサイド・アウト』が数年前に上映されて、今度はアンディ・サマーズ目線から同じバンドの歴史秘話が語られるわけで、こういうロックバンドの「振り返られ方」って、なんだか唯一無二な気がする。

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