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2014.01.25

「メンバー同士の仲が悪かった」だけじゃないバンドとしてのザ・ポリスを想う:ドキュメンタリー映画『サヴァイヴィング・ザ・ポリス』

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ザ・ポリスというバンドにおいて、アンディ・サマーズは、はっきり言って「地味」だ。
ギタリストだけど、地味。
それは単に他の2人がスタイルがシュッとしていて、ダイナミックでキラキラしたプレイを披露していただけではなく、売れれば売れるほどそのギターサウンドが「空間系」なものへとシフトしていったことも影響していたかもしれない。世界を極めたロックバンドのなかで、ここまで「存在感に乏しいギタリスト」は他にあまり思いつかない。

そしてこのドキュメンタリー映画『サヴァイヴィング・ザ・ポリス』は、そんなアンディ・サマーズの視点から構成された、かつてのポリスの存在、そして近年行われた再結成ライヴのときの「いまの3人」を捉えた映画だった。

「あぁそうか、このバンドは、アンディ・サマーズの目線から語ったほうが断然面白いのか」と、気づかされた。
一番地味で、控え目に映るけど、じつはバンドのなかでもっとも年長者だったりする、そんなアンディ・サマーズ独特の視点から語られる、ザ・ポリスの日々。

映画の最初はアンディの「ポリス以前」の話が語られ、その苦闘の日々や、支えてくれたパートナーとのことなど、「遅咲きも遅咲き」なアンディ・サマーズというギタリストの一代記が描かれている。

パンクの終わり、ニューウェーブの到来、MTVの開始など、実はザ・ポリスが世に出るうえではこの時代的タイミングが絶妙に、それこそ「シンクロニシティ」的に動いていったことが改めて痛感される。本人たちはパンクバンドのはずだったのに、遅咲きの彼らはキャリアの長さゆえに、パンクバンドとしては致命的なほど「演奏が上手すぎた」わけで、「アメリカでは『礼儀正しいパンクバンド』と見なされていた」という証言に膝を打つ思いだ。

そうして音楽シーンの劇的な変動のなかでヒットを連発し、一時代における成功をおさめていった3人の結束が、次第に崩壊していくこともまた、このバンドのある種の「持ち味」としても機能していったわけだが、近年の「再結成ライヴ」のときのリハーサルでも3人は意見を戦わせていたりして、そういうシーンと、かつてのスタジオでの険悪なムードの映像とが交互に混ざり合うことで、「実はこの3人はずっとこうしてバンドとして機能してきたのだ」というふうにも受け止めることができる。実際に映画のなかで「俺たちにプロデューサーはいらない。誰の指図もいらない。なぜなら3人のプロデューサーがいるからだ」といった当時の証言があった。そりゃあ、まとまるものも、まとまらない。

そしてこの映画を観てはじめて知ったのは、アンディ・サマーズは写真を撮るという趣味をはじめることで、バンドがもたらす精神的苦痛や危機を乗り越えた、ということだった。ドラマーのスチュワートが8ミリカメラを手にしてバンドを内側から記録し続けた(そしてドキュメンタリー映画『インサイド・アウト』が作られるのだが)ことと同様、アンディもまた「記録魔」として、文字通りの「バンドの光と影」をフィルムに刻み続けてきたわけである。

しかもそのモノクロ写真がことごとく味わいがあって、そして実際に写真家としてのキャリアも続いていくことになるのだが、このバンドにおける「2人の記録係」が、こうして後年それぞれの立場から自分の残した記録とともにバンドを振り返ることになるというのも面白い。メンバーそれぞれ、感情をぶつけあいながらも、活動記録はせっせとマメに積み重ねてきたっていう、このなんともいえなさ。だからポリスは愛されるのだ。

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公式サイトでもアップされているこの写真なんかも、「バンドの姿を雄弁に語りうる写真」としての凄みがある。スティングを写しているようで、実は鏡に反射するアンディ自身の姿にピントをあわせた作品。撮影時期は自分には分からないが、「スティングという絶対的な存在にたいする不安や疑念」が、このアンディの表情からうかがえたり。

だからといってこういう緊張感のある写真だけじゃなく、アンディは自然体のメンバーの表情を捉えた写真もたくさん残していて、そうした作品たちが後年写真集にもなっているようなのだが、映画のなかで紹介されていたそれらの写真をみるにつけ、「もし本当にメンバーのことを互いに憎み合っていたら、こんな写真は撮り続けなかったのではないか」という思いもまた浮かんでくるわけである。メンバーだからこそ撮影できる距離で、これらの写真を撮り続けたアンディの、バンドの2人にたいする、そして音楽にたいする心からの愛情もまた、うかがえるのであった。


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Comments

プログレのふたりがスティングにむりやりパンクに引きずり込まれた結果の奇跡がポリスなんじゃ(笑)

Posted by: isaac | 2014.01.28 at 08:47

isaac>それがどうも、なんとなく偶然に3人でプレイする機会があって、そこで意気投合した感じだったようで。でも確かに残り2名はプログレ人脈ですよね。
場合によってはソーニャがこの3人をバックにボーカルとっていてもおかしくなかったんでしょうけど(笑)

Posted by: N.Tateishi | 2014.01.28 at 21:56

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