焚火をみつめるような生き方:どいちなつ・著 『焚火かこんで、ごはんかこんで』
焚火の好きな人は、好きだ。
ここ数年、「焚火やりたい欲」が高まっている。
とはいえそもそも自分はアウトドア趣味から完全にほど遠い生活をしており、憧れだけを口にしては行動に移さないタイプに留まっている。むぅ。
そんな欲求をかきたてたきっかけは、古本屋で見つけた『焚火パーティへようこそ』という、各界の著名人が「いかに焚火が好きか」を延々と書き連ねていくエッセイ集を読んでしまったことである。
昔はそこらへんの空き地で行われていたという、完全にインディーズ路上ライヴ的な活動としての焚火。もはや平成の都市生活者にとっては非日常となってしまった焚火について、なぜ子どものときにもっとこういうことをしてこなかったのかと悔やみつつ「焚火、いいなぁ」と思いながら読んでいた。そして焚火経験を嬉々として語る面々にたいしても、なんだか妙な親近感を覚えたのである。なので、私にとっては「焚火の好きな人」というのは、きっと自分にとってものすごく親しみやすい人々かもしれない、と勝手に思い込んでいる。
そんななか、友人のオオタさんが編集した『焚火かこんで、ごはんかこんで』(どいちなつ・著、サウダージ・ブックス・刊)という本を読ませていただく。「焚火」と「ごはん」をテーマにしているとあれば、「焚火やりたい症候群」の私にとってはこれ以上ない本ではないか。
そして読んでいくうちに、この本は、面白い意味で私の期待を裏切ってくれたのである。
どいちなつさんは料理家として淡路島に移住し、自然に根ざした健康的で素朴な料理を探求されている。そして海辺で焚火をかこんで、家族や仲間とごはんを食べたり語らったり、という生活を送っている。
そこで紹介されていく、どいさんの生き方やお気に入りのもの、そしておいしそうな料理たち。
この本は、焚火の好きな料理家が、透明で暗い空を遠くにいだきつつ、焚火の揺れる姿を見つめ続けるように日々の暮らしを味わい、そして焚火をするかのように注意深く、丁寧に時間をすごしていくなかで作られていく素朴でシンプルな料理の説明を、押しつけがましくなく、それこそ焚火の熱にあたるようにパチパチと、ぽかぽかと、提示している本だった。この「押しつけがましさのなさ」が自分にとっては「意外」だったのである。つい、どうしても、「どうですか、これが焚火の醍醐味ですよ、そしてこれが焚火で作る料理ですよ!」的なものを期待していたのであった。そういう傾向を想定しがちな自分のなかの「慣習」みたいなものの存在に気づかされた次第である。
焚火をみつめるように生きていく人、の姿がそこにある。
だから、決して物理的な焚火をせずとも、「焚火を見つめていくような生活」はおおいに可能である、そういうメッセージを受け取れた本だった。
Comments
焚火いいですよね。
私も好きです。
あまり関係ないかもしれませんが、茶道に「炭点前」というのがあって、火を起こしてそこで湯を沸かすのですが、そのとき、茶室に「パチパチ」と燃える音が響くのも風情があって好きです。
あと私の友人で自給自足の生活をしているアーティストがいるのですが、彼女はいつも七輪で料理をしていて、それがまたよかったり・・・。
火っていいですよね。
ちなみに私は登山の際、夜、テントの中でランタンを灯すのが楽しみです。
Posted by: naho | 2014.04.06 23:09
naho>ご無沙汰してます! 「焚火いいですよねー」って言えないぐらい、焚火経験ほぼゼロです(笑)山登りをされているのがうらやましいです。「炭点前」って良い言葉ですね。火の存在を直接言わないというか。でもそこには火を感じる言葉で。
Posted by: N.Tateishi | 2014.04.06 23:39