« いまさらだが神戸開催がもうすぐ終わる「ターナー展」がとてもよいのである。 | Main | 雑誌『ニュートン』の特集「パラレル宇宙論」になんだか癒されたり励まされたりする気分 »

2014.04.04

アップルのカスタマーサポートは、電話を向こうからかけてきてくれたのであった

他人の持っている、あるアップル製品の設定方法がうまくいかないとのことで、ひょんなことで一緒になって解決しようと苦闘していた。

しかしどうしても先に進まず、仕方ないのであまり期待せずにネットでアップルのカスタマーサービスのページをみたら、「アップル側から電話をかけてくれるサービス」があることを初めて知った。ユーザー登録者とかは関係なく、誰でも利用できるようだ。もしかしたらアップル以外の会社でも同様のサービスがあるのかもしれないのだが、「そんなものがあるのか」と驚いて、半ば好奇心によってそのサービスを利用してみることにした。

で、「待ち時間は2分です」と表示されていて、「本当かよ」と思って申込みをクリックしたら、実際に電話がかかってきたので、ちょっとびっくりした。まるでレスキュー隊員のように(会ったことないけど)、「どうしましたか?」と問いかけてきてくれた。

電話の向こうのスタッフに、いまの状況や分からない点をいろいろと説明しながら、機器を操作していく。結果的にはこちら側で見落としていた点があることが分かり、電話でわざわざスタッフさんに尋ねなくてもすぐに解決する類の小さいミスであったわけで、わざわざ電話してスイマセン、という気分であった。

しかし私が感じたのは、そうやって「人間の生の声でのやりとり」がもたらす安心感だったりが、目の前の問題解決へ向き合ううえでプラスになったのかもしれないということだ。

そしてアップルは「宗教」みたいなものであり、私はその宗教とは距離を置こうとしているわけだが、今回のような状況を味わうと、宗教の勧誘の手口としては効果的でもある。「うむ、やるな、アップル」と思わずにはいられなかったわけである。

ところで「人間の生の声でのやりとりの重要性」で思い出すのは、はじめて父親をロンドンに連れて行ったときの帰りの飛行機が、急きょストライキで欠航になったときのことだ。

父親の手前、こちらは平静を装いつつも、長蛇の列がつづく航空会社のカウンターで私は内心不安でいっぱいになっていて、果たして無事に帰れるのかどうか(次の日には仕事があるってのに)、ちょっと取り乱しており、不安を鎮めるために旅行保険会社の日本のオフィスに国際電話をかけたのである。そこで分かったのは、私はつい保険料をケチったがために、よりによって「航空機の遅延に対する保険」をかけていなかったことだった。

「あぁ、こういうときのための保険だったのか、遅延の保険ってやつは!」とひたすら激しく後悔し、そしてこういう状況には当然ながら不慣れなので、私はそのとき電話の向こうの保険会社のスタッフに「ストライキの場合、これからどういう状況が起こりうると予想されるのか教えてくれないか」と尋ねた。航空会社のカウンターにたどり着けば当然何かが分かるのは判っていたけれども、なにぶん長蛇の列なので、これからどのぐらいの時間をかけて列に並ばないといけないのか検討がつかないため、そうした状況下での「心構え」みたいなものを求めていたのである(代わりのフライトを航空会社が手配してくれるかどうかも、この時点ではまったく分かっていなかった)。

しかし、私が「航空機遅延」の保険料を払っていなかったこともあったのか、そのときのスタッフからは「何とも言えません」の一点張りで話が終わってしまった。

あのとき私は、「正しい情報を与えてくれるかどうか」ではなく、「先のことは分からないですが、とにかく落ち着いて状況に対処してください」といったような言葉を聞きたかったのである。心がこもっていなくてもいいから、とにかく誰かに日本語で「落ち着け」と言って欲しかったのである。そりゃあ、延滞の保険をケチるような顧客であったかもしれないが、それ以外の保険料を支払っているぶんぐらいの「生の声の応援」ぐらいはあってもいいんじゃないかと強く思いながら受話器を握っていたことを、昨日アップルのカスタマーセンターからの電話を受けたあとに久しぶりに思い出したりした。


|

« いまさらだが神戸開催がもうすぐ終わる「ターナー展」がとてもよいのである。 | Main | 雑誌『ニュートン』の特集「パラレル宇宙論」になんだか癒されたり励まされたりする気分 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference アップルのカスタマーサポートは、電話を向こうからかけてきてくれたのであった:

« いまさらだが神戸開催がもうすぐ終わる「ターナー展」がとてもよいのである。 | Main | 雑誌『ニュートン』の特集「パラレル宇宙論」になんだか癒されたり励まされたりする気分 »