映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』をみにいく
平日休みをとって朝から京都シネマで『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』を観る。
想像以上に実務的な部分までカメラで捉えていたりする長いドキュメンタリー映画だったが、絵画の修復作業に携わる人の語りが印象的だった。今の時代における修復の考え方として、「(物質的に)新しいものにする」のではなく、「現時点でのこの絵画におけるベストの状態はどういうものか」という解釈をもとに現物の状態を保護するなり修復するわけで、そうして次の時代にまた修復作業が行われる際は、現在の作業結果はいったんリセット(洗浄)されることになるという。現在の修復作業員が施している、ひたすら緻密で気の遠くなるような修復作業の成果も、将来的にはふたたび「なかったこと」とされてしまう宿命を帯びているとのことで、そういう気概で、絵画作品を次世代にバトンタッチしていく仕事なのかと思い知らされた。
あと、随所に紹介される、学芸員による来場者へのレクチャーの様子が印象的だった。子どもからお年寄り、そしてさまざまな国の人を相手に、絵画作品の背景を説明したり、美術鑑賞の面白さを伝えていくプロフェッショナルの人々の語りには、ものすごい「熱さ」がこもっていて、英語が分からなくても、その好奇心や情熱に圧倒される思いがした。話している内容も興味深かったが、とにかく「語りのパワー」におけるエンターテイメント性、いかにお客さんの集中を切らさずに、効果的に目の前の絵画作品への興味関心をかき立てる語りをするか、という点で興味深かった。今後もロンドンに滞在するときはナショナル・ギャラリーに何度も行くことになるのだろうけど、訪れるたびにしばしば出くわす学芸員さんのレクチャーの話しっぷりというのも、また見どころの一つになるなぁ、という新たな楽しみ方を発見した気分。
ちなみに劇場パンフで知ったのだが、今年の夏にはターナーの伝記映画『ターナー、光に愛を求めて』が日本で公開されるとのこと。つい先日もふと去年のターナー展のことを思い出して、ちょっと心がほっこりしていたところだったので、これは楽しみ。
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