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2015.03.14

大型書店がZINEを取り扱うことについて

 先日、とある大きな書店の関係者からメールをいただいた。都心に新しく大きな書店をつくるにあたり、「ZINEコーナー」なるものを新設するとのことで、私のつくったZINE『FOOTBALL ACTIVIST』をそこで取扱いさせてもらえないか、という申し出だった。

 全国展開する大型書店(までも)がZINEのためのスペースを設けるということに時代的な変化を感じ、そういうオファーをいただくのは素直に嬉しいことでもあるが、しかし私は「ある懸念」を覚えたので、二つ返事でオッケーしたくなるのをとどまり、以下の点について念のため確認をさせてもらったのである。

 ・私がこれまで作ったZINEは(申し訳ないことに)「定期刊行物(雑誌)」のようなものではなく、不定期だったり単発で出版しているものであるけれども、そういうものでも差し支えないか

 ・私が作ったZINE、とくに『FOOTBALL ACTIVIST』はページ数も少なく、書店の新刊書に並べて売るにはあまりにも「本らしくない」のだが、そういうものでも差し支えないか

 ・そもそもどうして『FOOTBALL ACTIVIST』を書店の商品として取り扱おうと思われたのか。実際に読んでくださったのかどうか

 数日後その担当者から返事があり、「今回はある程度定期刊行されるZINEを探しており、こちらの理解不足でした。お詫びします」ということだった。そして私のZINEについても現物を読んでいたわけではなく「京都の書店で見かけてタイトルを覚えていただけだった」ということも正直に伝えてくれた。

 メールを受けた当初に感じた懸念は、やはり妥当な直感だった。急いで付け加えるが、この担当者について私は別に不満を感じているわけではない。忙しい書店員さんが棚をつくるうえで、すべての販売物にしっかり目を通しているわけではないのは当然である。
(むしろ、私のZINEのタイトルを記憶してくれていたことに握手したい気分ですらある)

もし私がホイホイと今回の申し出を引き受けていたら、お互いにとってちょっとマズい状況になっていたわけで、今後おそらく似たような出来事は、書店業界とZINE文化をとりまく中で頻発しそうなことかもしれないと思うと、これはわりと大事な教訓を含む出来事になった、ということだ。「ZINE」という言葉の捉え方はどうしたって人それぞれで、それゆえに、こうした行き違いは起こりやすくなる。


で、これは私のきわめて個人的な意見として述べさせていただく。

 果たして「定期刊行物」としてZINEを作っている事例は、全体に比してどのくらいの割合であるのだろうか。

 そして少なくとも私は、「定期的に作らないといけない」といった、あらゆる「条件づけ」から、できる限り徹底的に自由にありたい、と思うからこそ「ZINEを作る」という行為を選んでいるつもりだ。

 もちろん読者の側からすれば、お気に入りのZINEが定期的に刊行されることは望ましい。それはもう、じゅうじゅうジュージュー百も承知で、「そのうえで」いいかげんなスケジュール管理のなかで、気まぐれな作業の果てに、雑なやり方もいとわず、この日常生活の隙間をぬって何かを作ろうとしていて、そういう情動とかに基づく視点から私はZINEを捉えていたい。そういうことである。

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