「上司の故郷に一人で勝手に行ってみる旅」をしてきた(その1)
私の上司のSさんはとても地元愛の強い人で、生まれ育った愛知県・豊川や豊橋の話をよくする。とくに出身高校に強いこだわりを見せるので、私はSさんが高校時代にお世話になった、珍しい名字の「朧気(おぼろぎ)先生」という数学教師のフルネームだって暗記できてしまっているほどだ。高校を出た後、郷里を離れて京都の大学にきて、そのまま40年ちかく関西で暮らしてきたSさんにとっては、豊川で過ごした高校時代というのがきっと輝かしいノスタルジックな思い出になっているのであろう。
しかしSさんにとって幸か不幸か、そういう郷土の美しい思い出を語っている相手としてのタテーシが、これがまったく郷土愛のかけらもない、むしろ地元のことを嫌っているフシもあり(ほぼ「せんとくん」のせい)、かつ、「旅に出たくなるネタ」を日々追いかけているような輩であることだった。こうして職場で日々Sさんから発信される豊川・豊橋をはじめとする東三河関連の情報に接するうちに、当初は(自らの郷土愛の薄さゆえに)その熱い地元推しのスタンスそのものを面白がっていたのが、Sさんの思い出話における固有名詞に慣れてくると、これらの地域に対する妙な親近感が芽生え、「これは実際に行ってみないと」となったわけである。
なにより、この地方で伝統的に行われている「手筒花火」のお祭りがかなりファンキーでダイナミックな様相を見せており、どうせならその時期に合わせて行こうと考え、ようやく今年の7月末、まさにSさんの地元の国府(こう)にある大社(おおやしろ)神社での手筒花火の日にあわせて訪問することとなったのである。
まず新幹線で豊橋駅に降りる。
豊橋市のマスコットキャラクター「トヨッキー」の出迎えにもあまり驚かないのは、すでにSさんから何度も見せられているからであろう。
「トヨッキーにたいして言いたいこと」はいくつかあるが、それは職場でSさんに伝えておけばいいだろうと思い、何も書かずにやり過ごす。
さて、まず向かったのは豊橋駅からすぐのところにある「玉川うどん本店」である。開店直後におじゃましたがすでに賑わっていた。ここでは近年豊橋でプッシュされている「豊橋カレーうどん」がいただけるのだ。
見た目はふつうのカレーうどんであるが、知らない方のために紹介すると、こういうことなのである。
この大胆なコンセプト、これは一度は食べておきたいと思っていたので、あえて朝食を軽めにして出向いたのである。
そもそもただでさえカレーうどんというのは気を遣いながら食べるものだが、この豊橋カレーうどんはさらに「お箸で底をかきまぜないように」という、いつも以上にシビアな動作が求められるのであった。
そのせいか、麺をお箸でひっぱろうとしても、器の底から何らかの「フォース」みたいなパワーが働いているような手応えを感じ(笑)、ゆっくり、慎重な箸さばきを意識しながら食べていくことに。
最終的には付属のスプーンに持ち替えて、お米部分をリゾット風にしてカレーのルーを綺麗に最後までいただくこととなる。なにより、とろろの食感がカレーのダシをまろやかにしてくれるので、「もはやすべてのカレーうどんはこの方式で食べたくなる!!」と思えた。つまりこれは「変わったカレーうどん」なんかではなく「新しいカレーうどんのスタンダード」という可能性を提案しているのである。
このお店だけでなく豊橋エリア一帯のあちこちでこの豊橋カレーうどんは食べられるみたいなので、ぜひこの新食感を味わっていただきたい。
うどんを食べたあと、近くに聞き慣れた名前の書店があった。
これもSさんの会話にたまにでてくる名前、「精文館書店」だった。最近はZINEの特設コーナーもあったとかで、そういう話もしていたなぁと思いつつ店内にはいると・・・
でかい。
とってもデカイ。
そして建物が入り組んでいて、よくわからない構造。
なかに眼科・コンタクトレンズ店だったり、最上階はいまどきのカードゲームが楽しめるコーナーが作られていて、そのすぐ横にはパソコン書コーナーがあったり・・・
よくよくみたら、何かとサブカルチャー系の本棚が異様に充実していたり。
「こういう大型書店、ありそうでないよな・・・」と、いまどきの書店にしてはかなりがんばっている雰囲気だった。
なにより感銘を受けたのは、ワンフロアがぜんぶ文房具類の売り場になっていて、その豊富な品揃えには「これは、東急ハンズやロフトよりもレベル高いのでは!?」と素直に思えたことである。気がつけばガッツリと歩き回って日常的な買い物をしてしまったほどだ。
それに、ここで初めてお目にかかったグッズがあって、輸入雑貨なのだが、
これはつまり、マグネットの力を利用してこの器具ではさみ、ホッチキスの上側をあてがって、いくらでも好きな場所で「中綴じ」ができる、その補助具である。これは今まで見たことがなかった・・・中綴じ冊子を作るぶんにはコクヨの名機「ホッチクル」があれば事足りることが多いのだが、場合によってはA3サイズの冊子なんかを作る機会だってこの先あるかもしれないし、そのときにこの器具があればとても便利であろうと思い買った。
そんなわけで、かなり広範囲にさまざまな商品を揃えた文具店で、正直これは地元にはないクオリティだったのでうらやましかった。そしてよく考えてみたら、上司のSさんは日頃から文房具にこだわりのある人で、ひょっとしてそのルーツは子ども時代からこのような店が生活圏内にあったからかもしれない、ということに思い至ったりした。
こうして、豊橋に到着して2時間もしないうちに、カレーうどんを食べ、いろいろ文房具を観て回り、買い物をし、書店の各フロアをあれこれ観て回り、もはや当初の目的が何だったか分からない様相をさっそく示しているが、続きはまた後日。
↑ 精文館書店の階段エリアのフロア表示がレトロモダンな感じでかっこいい。
あるいは「AC/DC」のロゴみたいな。 でもよくみたら餃子の王将のガラスコップみたいにも見えたり。
■■■■
Comments