F1メカニック対抗いかだボートレース、そして過去の不思議な縁について
かつてF1を熱心に追っていた頃、「カナダGPが行われる場所はセントローレンス川の中州なので、各チームのメカニックによる手作りいかだボートのレースが毎年行われている」というのを本だか雑誌だかを読んで知り、世界中をサーカスのように回るF1関係者たちのつかの間の娯楽として、その光景を想像しては微笑ましい気分になっていた。
それがどういうイベントなのかあくまで想像するしかなかったのだが、こうして数十年たつとYouTubeみたいなものが出てきたわけで、ふと思い立って調べると、やはりそのボートレースの様子もいくつかアップされていた。いつものことながら、こうして過去に自分が知りたかった物事が映像として観ることができることに、あらためて驚異を覚える(そうやって過去の想い出ばかりに浸って、現在のテレビをますます観なくなるという症状もあるのだが)。
で、最近の様子は(こちらの動画)で確認できるが、どうやらレッドブルがスポンサー?みたいな感じになって、いかだの作り方ももしかしたらルールが設定されていて、そしてチームだけでなくFIA(国際自動車連盟)の関係者も参加していたり、イベントとしてオフィシャル感があったりする。レッドブルは何にでもお金出すのねぇ、と(笑)。
そして約30年前、1990年に行われたレースの様子も確認できる。(こちらの動画)より・・・こちらはかなりフリーダムでカオスな世界が展開されていて、たぶん長らくはこういうノリでやっていたんだろうと想像される。フェラーリは資金と技術力を投じてガチなモーターボート状態のマシンを作り込んで参加していて「それは、いかだじゃないだろう!」とツッコミを入れたくなるし、逆にお金のなさそうなチームは本当にありあわせの材料だけでいかだを作っていて果敢に川に漕ぎ出していて、その対比がなんとも哀愁を誘う。なまじF1マシンのメカニックたちだからそのへんの廃材を組み合わせて船を作るなんて朝飯前のようで、それぞれに工夫?が見られるのも興味深い。なにより半分冗談みたいなノリが大らかでいいなぁと思う。
ちなみに、なぜ急にそのいかだレースのことを思い出したかというと、ネルソン・ピケという往年の名レーサーについてウィキペディアで見たことがきっかけである。実はピケは、このお遊びのいかだレースのために優勝トロフィーを用意したらしく、それからは「ネルソン・ピケ杯」という名称でいかだレースが行われていたとのこと。牧歌的な時代の空気を感じるなぁ。
そしてなぜウィキペディアでネルソン・ピケについて調べたかというと、昔のピケが、他の周回遅れのマシンのミスで追突されてリタイアし、腹が立って相手のドライバーに殴りかかった動画を久しぶりに見たからである。これは大昔から「世界のスポーツ珍プレー」みたいなテレビ番組で必ず紹介されていたようなシーンなので、子供の頃から記憶に強く残っていた。(この映像)である。時代は1982年で、私がF1ファンになるだいぶ前の時代の話なので、リアルタイムではもちろん体験していないシーンだ。
で、よく考えたら私はこのとき殴られた側の、マイナーなチームのマイナーなドライバーのことを知らないままだった。この人はエリセオ・サラザールという、今に至るまでチリ出身では唯一のF1出場経験のあるレーサーとのこと。そしてサラザールについてウィキペディアで調べると、驚きの事実が分かった。彼にとってレーサーとしてチャンスを掴んだ転換期ともいえる偶然の出来事があって、1979年にイギリスでF3レースを観たあとにヒッチハイクで帰ろうとして、そのときにたまたま拾ってもらったのが、当時ブラジル人出身の若手有望F1レーサーとして頭角を現しつつあったネルソン・ピケだったとのこと。同じ南米出身ということもあったのか、ピケがサラザールをレース関係者に紹介して、そうしてサラザールはやがてF1にステップアップしていった・・・そんな不思議なご縁で、あのような「珍事」があったのかと思うと、より味わい深い。人生ってそういうことがあるのねぇと、こういうエピソードに触れるとテンションが上がるので、このブログでついつい書き残したくなった次第である。
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