愛と葛藤の無印良品週間
「無印良品週間」といえば、いつ実施されるか予測ができない、ちょっとしたゲリラ的バーゲンセールである。あらゆるものが10%オフで購入できるので、無印良品ファンはその日がくるのを待ち構えつつ、普段から「次の『週間』に何を買うかリスト」なんかをメモっておいて準備しているはず・・・してますよね。するよね。
あと、たまたま買い物のついでに無印良品ストアに足を踏み入れちゃったりすると、「今度の『週間』で買おうと思っているものの現物をあらかじめ確認したり、最近出た新商品をチェックしておく」っていうことも・・・やりますよね。するよね。
で、「週間」が近づいてきたら、店内にも「●月●日から無印良品週間がはじまる」という案内が掲示されていたりするわけで、あらためて「うん、始まるな『週間』、よしよし・・・」と思いながら満足げに店内をウロウロしたりするわけで・・・するよね、うん。
で、そんな「週間」を近日中に控えた直前のときでも、たくさんのお客さんがレジに並んでいる光景を目にするわけである。
そのときに、私は葛藤を覚える。
うむ、たしかに、レジにたくさんのお客さんがいることは、間違いなく(株)良品計画にとっていいことであるには間違いない。
でも、でも、
「週間」が、あと数日で始まるんですよぉ!?
その買い物、もうちょっとガマンしたら、来週には10パー引きですよっ!?
あなたが、その、今まさにレジに持っていこうとしている「重なるラタン角形バスケット・大 3,990円」は、本当に今日ここで買っておかないといけないものなんですかぁ!?
お店にめったに行けないっていっても、「良品週間」はネットストアでも割引きになりますよー!?
・・・と、そこに並ぶ一人一人に語りかけたくなる。
普段そんなに無印に興味関心がないのであれば仕方がない。でも今日ここにきて、あちこちに貼られている「●月●日から無印良品週間10パーセント引き」のインフォメーションは目に入っていないのだろうか。今日の買い物をガマンしておいて、ちょっと時間をとって会員登録して(無料だ)、スマホにアプリでも入れておけば、「週間」の時期に10%引きクーポンが表示されるっていうのに。
そして店内スタッフも、あえて「無印良品週間」をことさらにアッピールしてこないのである。考えようによっては、会員登録を増やす良いきっかけともなりそうなものだが、そこに執心するわけでもなく、「知っている人には割引きますが、まぁ、そうでなくても普段からお客さんはやってきますし、通常価格で買ってくれてありがたいですね~」っていうノリである。むぅ。
これと似た葛藤は、実際に「週間」に突入して、ここぞとばかりに買い物をしてレジに並ぶときにも感じてしまう。
当然ながら「週間」は、無印フリークにとっての祭典として、どうしてもレジは通常以上に混む。普段あまり買い物をしてこなかったことを後ろめたく感じつつも、我々はこの「週間」でのレジの長蛇っぷりを甘んじて引き受け、覚悟をもって並んでいるわけである。
で、レジに並んでいるときに、つい私は暇つぶしを兼ねて「どれだけのお客さんが、レジでのお会計のときに『週間』の割引きクーポンを提示しているか」を、まるで良品計画のマーケティング担当部門の社員かよというぐらいにしっかり観察してしまうのである。
そこでのだいたいの印象では、「思っているほど『週間』のことは知られていないっぽい」ということである。レジの店員さんがクーポンやアプリはお持ちですかと尋ねるも、何も持っていないので別にいいです、というお客さんはめっぽう多いのだ。混雑したレジ前で並んでいる間に、もし店内のお知らせをみて気づいたら、その場でアプリをダウンロードして会員登録して、クーポンを用意する時間的な余裕は十分にあるというのに・・・キミはレジにたどり着くまでに何をボヤボヤしとるんや!? と、お節介オッサンはひとり買い物カゴを持ったまま問いただしたくなる気分にかられる。
つまりそういうお客さんは、よりによって無印ファンが押しかけていつも以上にレジが長蛇の列になって混雑するっていう時期に、割引で購入する意志もないまま、わざわざ買い物に来てしまっているということになる。
割引きにもならないわ、そしていつも以上に長蛇の列で並ぶことになり時間を失うわ、そしてお会計のときに無印アプリの入ったスマホをスタッフに提示しているかどうかを私みたいなヤツにジーッと観察されるハメになっているわで、まったく、いいことがない。
ただ、すべてを大きな視点から捉えると、そんな10パーセントのためにあくせくと動くような私みたいな輩よりも、いつでも値段を気にせずフラッとやってきては買っていく、そういう人たちが本当の意味で良品計画を応援して支えているのかもしれない・・・と、こうして「葛藤」は終わることがないのであった。
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