第2回「奈良マラソン」が行われた。いつもお世話になっているデルニエの店長さんが出場するというので、市民マラソンをはじめて観に行ってみようと思った。
そしてちょうど毎年この時期にM・フィオリオ氏とは地元の蕎麦屋で年越しそばをいただいて、ひたすらしゃべりまくるのが恒例行事になっているというのもあり、フィオリオ氏にも来てもらって沿道でマラソンランナーに声援を送ることとなった。
そこで私は、衝撃的な事実を目の当たりにしたのである。
私はいままで、こうした市民マラソンについて、認識を欠いていた部分があったのだ。
市民マラソンの参加者のなかには、ユニークな仮装やコスプレをして走る人がいる。それはよく分かる。
で、その他に「普通の格好をして走る人々」というのは、総じて「ランニングウェア」を普通に着こなしている人が「ほとんど」であると思っていた。
ところが、そうではなかった。
かなりの割合で、サッカーユニフォームを着て走る人が多いのである。
このことに、私はいたく驚いた。
そして思った。「サッカーファンとして、サッカーファンを応援しよう」と。
特に、海外サッカーのユニフォームよりも、意外なほどに、おそらくその人自身がサポートしているであろうJリーグクラブのユニフォームの着用者が多かったのである。
Jリーグの理念からいえば、「あらゆるスポーツの振興のために、できることをやっていく」というのがあるわけなので、フィオリオ氏の協力も仰ぎ、サッカーユニフォームを着て走る人には、普段のサッカーの応援と同じように「チーム名をコールする」という応援スタイルを実施することとなった。
で、フルマラソンコースの残り5kmあたりの地点にいた我々は、終盤の苦しい時間帯を走っているランナーのなかで、ひたすらサッカーユニフォーム姿のランナーに注目しつづけた。
かなり前のほうのグループで、いきなりサンフレッチェ広島のユニフォームを着たランナーがいて、サンフレッチェのファンであるフィオリオ氏も驚いていた。
私はカメラを写しながら「サーンフレッチェ!! サーンフレッチェ!」とコールし、フィオリオ氏が手拍子であおってくれた。
手をあげて反応してくれた! うれしい。
サッカーのサポーターは、日頃は自分たちがスタジアムで選手に向かってチーム名をコールしている。
それが、こうした市民マラソンの現場において、「自分が逆にコールされる側」になるのである。
これはおもしろい、と思った。
なので、どんどんコールをしていった。
決して恥ずかしがってはいけない。彼らのがんばりに感化され、私も真剣にチーム名をコールした。
ウラーワ・レッズ! 背番号は24、原口だった。たしかに足速そう。
よ、横浜FCが来たー! と驚いた。本人もすごく反応してくれて、いっしょに手拍子をしながら走っていった。
でもその直後に、さらに驚いたのは
松本山雅!!JFLです。ちょうどこの日に大事な試合を闘っていたはず。来シーズンからJ2に参入が決定してよかったよかった、と。松田直樹のことも含めて、もうテンションあがりまくってしまう。
ジュビロ磐田-!
で、海外ナショナルチームとか海外クラブチームのユニフォームの人々は、あえてあまりコールをしなかったのだが、この人は全身バイエルン・ミュンヘンの格好をだったので「バイエルンがんばれー!」と声をかけたらとても良いリアクションをしてくれた。背番号は14で宇佐美ファンだった(走り去るまで、背番号が確認できないので、選手名で声をかけるのは難しいのである)。
あと、ナショナルチームだとアルゼンチンやイタリア、ブラジルや日本代表がほとんどだったのであるが、そんな中アイルランド代表ユニフォームの人がいたので、そんな熱いサッカーファンにはつい声をはりあげてしまう(笑)。よくみたらシューズもユニフォームの色にあわせていて、さすが。
そして、意外なほどに関西のJリーグクラブのユニフォームがいないなぁ、と思っていたのだが、時間がたつにつれて徐々にその数が増えていった。
セレッソおーさかぁー! このほかにも清武13番ユニが何人かいました。
ガンバおーさかー!・・って、コールしにくい名前だとはじめて気づく。「ガンバ・オレー!」のほうがよかったんだっけ? と迷いつつ。そしてこのご本人も控えめなリアクションで走り去っていく。
ガンバでは、退任する監督の名前入りのこんなユニフォームを着たかなりコアな方も。
このガンバサポーターのおじさん、すごくリアクションが良くて一緒に手拍子をして走っていった。で、背中をみたら「8 佐々木」ってかなり渋いセレクトなので、ぜったいこの人本気のファンだと思った。
本気度でいえばこのおじさん、ヴィッセル神戸のユニフォーム、しかも全身イエローで「ゴールキーパー・バージョン」のユニフォームなんですな。走ってくるランナーのなかで、「どこのユニフォームか?」を一瞬で判断しないといけない局面で、よくぞヴィッセル神戸だと判別できたな自分、と思った。自分もかなり本気で観ていたわけである。
そして、「なぜか京都サンガがいないな・・・」という思いが募っていたのだが、その不安をよそに、後半あたりで数名ががんばって走っていましたよ! キョ~トサンガァー!ドドンドドンドン。
祝・J2優勝のFC東京サポーターも参戦。しっかりと我々のコールに反応してくれて嬉しい。
こちらも祝・J1優勝、そしていままさにクラブW杯を闘う柏レイソル。体がきつそうで、歩いていたのだが「かしーわ・レイソル!」とコールをしていたら、「もう走れません~!」と応えてくれた。本来ならここで何かコトバを返したかったが、そのときは良いセリフが思いつかなかった。今ならさしずめ「リーグ終盤戦の追い上げを思い出せよ!」とか「今夜も大事な試合があるんだからがんばれ!」とか言ったらよかったと思う。でもいずれにせよ、沿道からコールをすることによって、見ず知らずのランナーが「もう走れない」という重要なインフォメーションを我々に伝えてくれるわけで、サッカーユニフォーム着用ランナーの人々は、我々のコールによって「仲間意識」を抱いてくれるのである。
私としても、普段はやらない「チーム名のコール」を、しかも公共空間で大声で、しかもいろんなチーム名で叫べるというのが、楽しくて仕方なかった。
なので、結果的に我々は沿道に4時間ちかく立ち続け、つぎつぎと通り過ぎていくランナーに「がんばろー」とか「あともう少し-」とか声をかけつつ、サッカーユニフォーム姿をくまなくチェックしては、チーム名を叫んで健闘を称え続けたわけだ。
そして、サッカーユニフォームを探し続けながらも、デルニエの店長さんの到着もひたすら待ち続けていて、でもそろそろレース開始6時間が近づいてきていて、果たして時間内に初マラソンを完走できるのかどうか・・・? と思っていたら
すげーー!! 完走しているー!!
と、この日一番の感動を覚えた次第である(記録は5時間31分!すごい!!)。
店長さんの力走を見届けた後、たまたま南にちょっと移動したら、奈良教育大学前の道路で6時間のリミットでカウントダウンが始まり、道が一気に封鎖されて、たどり着けなかったランナーたちがバスに収容される場面にも立ち会って、ドラマをみる思いであった。
というわけで奈良マラソン、とっても充実した時間を過ごした。
そして最近ほかの都市でも実施されている市民マラソンでもサッカーユニフォームのランナーを応援しまくるのは楽しいのではないかという気持ちになってきつつある。
うっかり、新しい「サッカー的楽しみ」を見つけた気がする。
<追記>その後も市民マラソン大会でサッカーユニフォームのランナーさんを応援する企画を実施しております。別ブログ「FOOTBALL ACTIVIST」の記事カテゴリー「サッカー的生活」の記事一覧もごらんいただければ幸いです(こちら)
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