カテゴリー「foods」の記事

2024.03.26

ホームベーカリーを手に入れて、食パンを作りまくっている

ひさしぶりにラジオ「Harukana Show」でお話をさせていただきました。
このブログで報告するよりも先に、今回のラジオでは私にとって最近の大きなトピックスである「ホームベーカリーを手に入れて食パンを作りまくっている話」をさせてもらいました。
どうしてそういうことになったのか、詳細はぜひラジオを聞いてやってください。ポッドキャストの記事は(こちら)。
(次週は、ZINEについても語っています)

ポッドキャストの記事のために描いたイラストをここでもアップさせていただきます。

Bakery


ちなみにホームベーカリーについていた説明書には、推奨される材料として、イーストについては「サフ」というフランスのメーカーのドライイーストが定番品のように紹介されていたもんだから、そういうのを売っているのは近所だと成城石井ぐらいだろうと思って行ったら確かに売ってあって、それを迷わず買ってきたわけですよ。それが(これ)なんですが、初心者だから何も分からなくて、500グラム入りのを買ったわけですが、家に帰って説明書をよく読むと毎回2.5グラムぐらいしか使わないらしく、おかげでどんなにパンを作りまくってもイーストはなかなか減らないんですな(笑)。しかもパンを焼く人のブログをみていると生き物のように扱わないといけないとか書いてあって、毎回冷蔵庫で丁寧に保存しているものの、たぶん保存可能期間内には使い切れないであろうとハナから諦めつつあるのだけれど、果たして。

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2024.02.04

突然、バーガーキングが流行ってきている気がする

Birkin__

正月休みのとき、だいぶ前に録画したままだったヒストリーチャンネルのドキュメンタリー番組、「ザ・フード~アメリカやみつきスナック」の「30億個のハンバーガー」編を観たのである。

この番組ではマクドナルドの誕生から発展までを主軸に話が展開していったのだが、最初期にマクドナルド兄弟が「スピーディー・システム」として、ファストフードの「原典」ともいえる効率的な作業を志向した厨房の設計レイアウトを考案し、それを商品化して講習会を開いたという逸話が興味深かった。というのもその現場には、のちにマクドナルドのフランチャイズ権を得て世界企業に押し上げたレイ・クロックだけでなく、タコベルの創業者だったり、バーガー・キングの創業者も参加していたとのことで、特にバーガーキングとはその後マクドナルドにとっての最大のライバルとなって、「バーガー戦争」ともいえる展開をみせていくわけである。そんな運命を担う人々が、ひとつの場所に集ってファストフード宗教の原典を共有していたという、これが歴史のアヤというものか。

で、この番組を観ながら「よく考えたら、自分はバーガーキングには一度も行ったことがないな・・・」ということに思い至った。

そもそもバーガーキングは日本において、マクドナルドほどに店舗がない。
調べたら京都市内だと3店舗しかない(しかもそのうちの1店舗は京都競馬場の中にある)。
思った以上にバーガーキングは身近に存在していないのである。

そうなると、どうしても気になって食べてみたくなるわけで、ふらっと寺町通りにある店舗まで行ってみた。

寺町京極店は、ランチタイムの時間帯を外してもさすが正月休みだけあって店内は満席だった。席の確保はあきらめて、でもハンバーガーを食べるのはあきらめたくなかったので、テイクアウトして鴨川で食べようと決めた。

初めてだったので直接店員さんに話してオーダーをした。タッチパネルの端末が複数台あったが、なんだか気後れして最初はひとまず店員さんに頼んだほうが無難な気がした。
で、人生はじめてのバーガーキングでは、何を頼んだか正確には覚えていない。こうしてブログの記事にすることなんて想定もしていなかったので、記憶があいまいなのであった。たぶんオーソドックスなタイプの「ワッパー」だったとは思う。件の番組でも、創業当時から「ワッパー」の名称でボリューム感のあるサイズで展開していて、それに対抗するべくマクドナルドが新商品として考案したのが「ビッグマック」だったというエピソードが紹介されていた。

というわけで「おお、自分もあのワッパーを食べるぞ、ワッパ~ワッパ~」という気持ちでそのまま河原町通りを抜けて鴨川ぞいに降り、どこか座れる場所がないかを探し歩いた。

歩きながら、袋の中をまさぐってストローを取り出し、紙袋に入ったままの状態でコーラを飲もうと思い、指でフタの穴を確かめてストローを差そうとしたが、これがなぜか入らない。歩きながらで、しかも袋のなかに入れて運んでいるので、よくわからないのである。

あきらめて袋の中のコーラをよくみると、お持ち帰り用の仕様なのか、ご丁寧にプラスチックのフタは2枚重ねられており、その上からしっかりテープで止められていた。ただし2枚のフタの穴の位置まではそろっていなかったので、そりゃあストローが入らないわけだ。おかげでフタは2枚とも変な力が加わった影響でボコボコしてゆるんでしまい、もはやフタ無しでコーラを飲むしかなかった。

そうしてようやく座れそうな場所をみつけたが、ちょっとした道標みたいな石だったのでお尻を乗せることしかできず、買ってきた商品を置くスペースはない。しかたなく袋を持ったまま、ハタからみると「寒いなか2つの紙袋に顔を突っ込んでハンバーガーとポテトを口に運び、コーラをやたら慎重に飲む人」になっていた。天気だけは良かった。

多くの皆さんはすでにバーガーキングを食べたことがあるかもしれないので、とくにあらためて私のほうから細かい論評はしないが、マクドナルドが鉄板で肉を焼くのにたいして、バーガーキングは直火焼きグリルで肉を調理することをウリにしてきたのをあのドキュメンタリー番組によって知ったので、「たしかに肉の味わいは違っていて、モスバーガーに近い」という印象である。

そして鴨川ぞいで食事をするという状況においては、かつてトビに2回連続してパンを奪われたというマヌケで苦々しい思い出がアタマにこびりついていたので、手元の袋に顔をつっこんでモグモグしては、顔をあげてキョロキョロと上空を警戒する。自分のほうが鳥みたいだ。
なので人生で初めてのバーガーキングは、「あまり食べた気がしない」という結果に終わったのである。コーラの入っていた紙袋はベシャベシャになっていた。

その日から一週間ぐらいしか経っていなかったと思うのだが、今度は仕事帰りに京都駅前ヨドバシカメラの1階に入っているバーガーキングに行ってみた(頻繁にヨドバシカメラに来ているのに、なぜ今までバーガーキングを利用しなかったのかが不思議でならない)。

 このときすでに私は事前にバーガーキングの公式アプリをスマホにインストールしていた。無料のアプリなのにやたらお得なクーポンが表示されるので、それでアボカド入りのワッパーを注文しようと決めていた。で、今度はがんばって端末機を操作してオーダーを試みるも、やたら操作につまづいてしまった。そしてこのときもスタッフは多忙を極めており、次々と番号札が呼ばれては待ち構える客がカウンターにやってきて、ごったがえしていた。

 おそらくマクドナルドの場合だと私のように端末機を前にモタモタしている客がいたらスタッフが声をかけてフォローするかもしれないが、そのあたりバーガーキングはほったらかしのままで、私もそのほうが気分的にありがたいのだが、単純にスタッフはそこまで気を回す余裕がないだけかもしれない。そしてどうやら私以外の客もこの端末機に苦労していて、物によっては故障しているような気配であった。そんなドライな状況だったので「なんだか外国っぽいな」と感じた。

この日の店内では、かろうじて座席を確保できたので、あらためて落ち着いてワッパーを食すことができた。ただ、この時点でもブログに書くネタにすることまでは意識しておらず、単純に「ちょっとした秘かなマイブーム」というノリでそのまま食べておしまい、である。

で、状況が変わってきたのはこの直後ぐらいだった。

マクドナルドが値上げをするというニュースが報じられ、ツイッター(X)では「バーガーキングのほうはアプリの割引クーポンが充実しているのでマクドナルドに行くよりも良い」とかいう話が一気に広まり、にわかに「バーガーキングのブーム」が沸き起こっているような雰囲気を感じたのである。よりによって私がはじめてバーガーキングのアプリで割引クーポンを使った直後だっただけに、この流れにはインパクトを覚えた。

ほどなく、これまた仕事帰りにヨドバシカメラで買い物をするついでに3回目のバーガーキングに向かった。そしてこのときはスマホのアプリから「モバイルオーダー」を試してみたくなったのである。というのもその数日前に仕事で同僚のタスク氏とともに新幹線に乗って出張する機会があり、タスク氏がスターバックスのコーヒーをごちそうしてくれるというので、彼は京都駅に向かう道すがらスタバのアプリからモバイルオーダーを利用したのである。いざ京都駅に着いて新幹線乗り場のコンコースにあるスタバの店に出向くと、ものの数秒で我々のコーヒーが店員さんからタスク氏に手渡され、その様子を見て「なるほど、これがモバイルオーダーというものか・・・」と、世情に疎い私は感銘を受けたわけである。

Task

そんなわけで、ヨドバシカメラの店内を歩いている途中、わざとらしく頃合いを見計らってスマホからバーガーキングのアプリを立ち上げて、ワッパーのセットを注文してみた。ただしこの場合はクレジットカードの登録が必要となり、ヨドバシの店内で突然立ち止まって財布からカードを取り出して番号を確認するという挙動不審の客となってしまったのは反省点である。

そして買い物のあとに頃合いを見計らってバーガーキングに向かい、呼び出し番号の掲示板をみると相当なオーダーが詰まっており、私の番号はまだまだ先だということが分かった。店内は混雑しており、「やはりバーガーキングはブームなのかもしれない」と思えてきた。

そしてこのときは寒気が強かった時期で、店の外に設置してあるテーブル席はさすがに空いていたので、そこに留まってレジの様子を眺め、自分の番号が表示されるのを待ってみた。

いちよ「テイクアウト」でオーダーしていたので、商品を受け取ったら帰宅するつもりだったが、なんだか冷めたハンバーガーを食べるぐらいなら、寒くてもこの空いている外の席で今すぐ食べてしまおうという気になり、風が吹きすさぶなかでワッパーをいただいた。で、図らずもこの状況に身を置いていると「やはりここは外国っぽい」と改めて思わせた。つまり海外旅行のときは「とにかく食事を済ませることを優先し、それ以外の不便な状況は受け入れてやり過ごすモード」になりがちだと思うわけだが、それに通じるものを感じたわけである。ましてや京都駅前なので、スーツケースを持った外国人観光客が大勢うろうろしていて、なおさら異国感がある。

Burger

そんなわけで今年は年明けから「ドライ感があってなんとなく海外旅行っぽさが味わえる」というバーガーキングに注目をしてきたわけだが、こんなキャンペーンが始まることを先日知った。

「バーガーキングをふやそう」(リンク
Fuyaso

つまり新規出店を検討するうえでのコストを抑えるべく、お客さんに空き店舗を探してもらうという逆転の発想である。これは作戦として興味深いし、今後他の業界でも追随するやり方かもしれない。

おかげでこのごろは、出歩くときに「空き店舗」になっている場所をなんとなく探してしまう。

そんなわけでバーガーキングの日本法人、今後も「何かを仕掛けてくる」ニオイがプンプンただよってきている。
そしてそんなマーケティング戦略にすっかりカモにされている自分が非常にくやしいが。

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2020.07.05

ウイリアム王子は「シードル男」だった

 前にこのブログでも紹介したが、イギリスのウイリアム王子はホームレス体験を率先して行ったことだったり(この記事)、2011年の結婚直前のときは仲間と公園でサッカーを楽しんだことだったり(この記事)、何かと親しみを覚える人物である。

 でも個人的に親しみを覚える大きな理由は、私より年下なんだけど、私と同じように頭髪環境が非常に寂しいところにある。もし実際に会って話をする機会があれば、「ハゲトーク」で分かり合えて仲良くなれる自信がある。そもそも王室の人間なんだから、本当だったらカツラでも植毛でも何でもし放題だったはずなのに、頭髪を自然のままにさらすメンタリティにも大いに敬意を表したくなる。ウイリアム王子がそういうスタンスなので、私も自らの頭髪環境はナチュラルさを保とうと誓っている。

・・・って、何の話なんだ(笑)

 それはそうと、先日のニュースで、そんなウイリアム王子がロックダウン解除を前に、とあるパブを訪問したことが報じられた(こちら)。
 王子であれ庶民であれ、パブでお酒を飲んだり誰かと語らう時間はイギリス人としての欠かせない人生の楽しみのひとつなんだろう。
 その報道のなかで感じ入ったのは、ウイリアム王子は自らを「シードル男」と称していて、このとき注文したのは800円ほどのシードルとのこと。

 私は普段あまりお酒を飲まないのだが、梅酒とかシードルはだんだん美味しく感じられるようになってきた。確かに飲み屋さんのメニューでシードルが置いてあるとそれを頼みたくなる。
 うむ、ウイリアムもシードル派なのか。ますます親近感がわくじゃないか。今日から私も「シードル男」と名乗ろうかとすら思う。

 ちなみにウイリアム王子がこの日頼んだシードルは、アスポールというメーカーのものらしい。自分は今まで見たことがない。通販で仕入れたくなってきた。

<追記>そのあと7月4日にイギリスでは「パブとかレストランとか、営業再開!」となったとたん、街中にみんな押しかけて、すごい浮かれっぷりになっている様子が伝えられていて、ちょっと心配にすらなってくる(例えばこちらの動画)。でもまぁ、こうなっちゃうよなぁとも思う。

 

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2020.06.18

最近は腸活をがんばっている

 春先に同僚のA氏が、「花粉症対策で毎日ヨーグルト食べてるんスよー」と言うので、そんなキャラだとは思ってなかったのでなんだか妙に面白く感じ、その流れで自分でもヨーグルトについて調べてみたら、なるほどたしかに「腸活」とはよく言ったもので、毎日食べ続けることで免疫力が上がるのなら、自分も心がけてみようとなった。折しもそのタイミングで新型コロナウイルスの蔓延もあり、もはや義務感のようにここのところずっと朝晩の2回、ハチミツをかけてヨーグルトを食べ続けているタテーシであった。

 ネットで「朝と夜で違うメーカーのヨーグルトを食べると良い」というお医者さんの記事を見つけて(こちら)、同じ種類の菌ばかりが腸に残ると、菌が「なまける」らしく、適度に違う種類の菌を入れた方が活性化するとのことで、それはすごく人間臭くて面白いなぁと思ったので、私もそれに従っている。朝は、どこでも入手容易なブルガリアヨーグルトに固定し、夜は数週間ごとに別のブランドのヨーグルトを試しているところである。当然、ここのところおかげさまで体調も良く、お通じも素晴らしい状態をキープしている。逆にいうと以前の私はそのあたりが極端なリズムによって動いていたような気もする。そういうわけで、「腸内環境を育てていく」感じをそれとなく楽しんでいる部分もある。

 買ってきたヨーグルト400gを1日100gずつ食べていくわけだが、記憶力が悪いのでたまに「これ何日目だ? いつ開封したっけ」となって、残量から判断するにしてもいまいち確信がもてずにモヤモヤしてしまうことも多く、先日からはキッチンに油性ペンを常備しておいて、開封時にフタに日付を書き入れるようにした。理由が情けないので「工夫してます」という感じに思えないのが切ないが。ちなみに森永のビヒダスはパッケージ外面に100gずつの目盛りが書いてあって、こういうのはありがたい。

 

 ただ、毎回ハチミツをかけてヨーグルトを食べているうちに、自分はもしかして単にハチミツを味わう口実としてヨーグルトを利用しているのではないかと思うようになった。プーさんか。そして本当であれば、もっとハチミツにお金をかけたいところでもある。どうしても「本物のはちみつ」を人生のどこかで一度でも味わってしまうと、近所のスーパーで簡単に手に入る他のハチミツにたいして心のどこかで白々しい気分になってしまうわけで、このあたりの葛藤を抱えつつも毎回ハチミツの味を堪能させてもらっている。

 奇しくも最近読んだ本に「ハチはなぜ大量死したのか」というルポルタージュがあって、ミツバチの健康被害が世界的に蔓延して、その数がどんどん減っているという報告に心を痛めているがゆえに、なおさら私はハチミツにたいする思いが強くなりつつある。

 それで思い出したが、15年ほど前ぐらいに『HOWE』のネタになるかなという期待を込めて、愛知県に住んでいる、観光客にミツバチについて語ってくれる養蜂家のおじさんのところまでわざわざ行ったことがあった。なぜかそのことをフリーペーパーにできなかったのは当時の私の力不足に他ならないのだが、とにかく養蜂の現場に触れたことはとてもいい経験になり、自分にもし土地があったら、ぜひ養蜂を趣味にしたいと思い続けている(案外都会の真ん中でも養蜂はできるみたいである)。そのとき話をしてくれた養蜂家のおじさんは、たしか脱サラして養蜂を始めたとかで、「ハチを見ていると、サラリーマンのようにがんばって働き続けるその姿に愛しいものを感じる」と語っていたのが懐かしい。

 

ヨーグルトの話だけ書くつもりがハチミツの話になったが、そんなこんなで私はおかげさまで最近とても健康ではあります、はい。

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2018.12.31

今年最後の読書は、パン職人の自叙伝。

 今年は結局フリーペーパーも書かず、ZINEづくりに向けた作業もまったくはかどらずに終わっていく。
 ただ、インプットの面において久しぶりに読書欲が旺盛な周期に入ってきたのか、今年はめっぽういろんなジャンルの本を読んできたように思う。ただし今年最後の読書のきっかけは意外なところからやってきて、つい先日顔を合わせた旧友のM・フィオリオ氏が「これを読め!」と(強引に)貸してきた、ドミニク・ドゥーセ氏の自叙伝『ドミニクドゥーセ、リスタート!』(伊勢新聞社、2014年)となった。


 ドミニク・ドゥーセって、誰? となるのも無理はない。我々にとってその名前が特別なのは、90年代の初めに我々がF1マニアだった頃、鈴鹿サーキットで出店していたパン・お菓子屋のフランス人オーナーシェフとしてこの名前を深く記憶に留めていたからだ。特にフィオリオ氏がこのお店のお菓子を気に入り、彼が買った缶入りのお菓子に添えられていたリーフレットもなんとなく印象的だった。それで私もずっとドミニク・ドゥーセという名前を、聖地としての鈴鹿サーキットのこととセットで想い出のなかにしまっている。

 ただそれから25年ぐらいたって、お互いF1ファンではなくなっている今の状況において、フィオリオ氏がこの本を私にどうしても読ませたかったのは、我々はドミニク・ドゥーセが当時どういう想いでフランスから来日して、三重県の国際レーシングサーキットに店を構えて、その後どういうことがあったかということをまったく知らないまま生きていたからである。別にそんなことを知らないままでも、それはそれで問題はないのだろうが、この本を読むと「そんなことがあったのか、ドミニク!!」と、まるで遠い親戚のおじさんの知られざる驚きの過去をこそっと告白されたかのような、その数奇な人生の浮き沈みがなんとも驚きの連続だったからである。

 そもそもドミニク・ドゥーセは、87年に鈴鹿でF1日本GPを誘致するにあたって海外からの選手や客に対応できる良質の料理人の必要性が検討されたことで、サーキットの運営母体であるホンダから熱心なオファーを受けて日本に来ることになったそうだ。そこからの日本社会への適応に関する苦闘ぶりを読むにつれ、結局この人は日本のバブル期における「ノウハウがなくても金で解決すればいい」的なありかたに翻弄された人のようにも思えてくる。苦労して母国でパン職人になり、腹をくくって日本に来たからにはフランスの味をたくさんの人に伝えようという使命感をもって頑張り続けるも、遠くに住む家族との問題や、サーキットから独立してお店を展開するも、あやしい事業提携話にひっかかって悲惨な目にあったりと、幾多の困難を経て「ドミニク・ドゥーセの店」のブランドを守り抜き、今は原点である鈴鹿に本店を構えて「リスタート」をきっているドミニク氏の職人魂を思うと、今すぐにでもお店に出向いて、パンやカヌレを食べたい気持ちになってくる。

 「鈴鹿に行けばドミニクのパンが食べられる」ということでファンも多かったという幾多のF1ドライバーたちとの交流もまた、彼のパン職人としての来歴を語るうえでは欠かせない部分であるが、「私も、彼らとは違ったレースを、必死で走っていた」という一文がすごく、光っている。

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2018.10.09

小文:「ダメといわない」発想、台風における人間の闇、カプチーノの想い出

 このあいだ、ひさしぶりに大阪は高槻の「乾物屋スモール」を訪れ、のんびりとした時間を過ごさせてもらった(もう2周年になる)。店主のまぁこさんが、最近依頼をうけるようになったという、調味料をテーマとしたレクチャーにおいて、彼女なりに工夫したタイトルとして「ダメと言わない調味料のはなし」というのがあって、この考え方やセンスが相変わらず素敵であった。ついついこの手の話はトーンが教条的になり、「いかに化学調味料が体に悪いか」「これが正解で、あれはダメ!」という観点に陥りがちになり、「良いことができていない自分」へのぼんやりとした罪悪感なり自己否定的な雰囲気なりが出てしまう。
 お客さんもダメ出しをされるために話を聞きにきたわけではないし、その時間を楽しく有意義に過ごすためにも、「体に良いものを作っている生産者さんを応援する楽しさ」を伝える方向性に持って行きたいという、まぁこさんのその姿勢はすばらしいと思うし、多くの人に共有されていってほしいと感じる。
 「良いものと悪いもの」の知識はそれとして理解しつつも、「こうしなきゃいけない」というプレッシャーをかけるのではなく、ましてや押しつけがましくなるのでもなく、「こういう製品をこういう人たちが作っているんですよ」という部分を出発点として、我々が普段使っているもの、食べているものに(楽しみながら)注目していくこと。この発想はいろいろな分野で活かせそうな気がする。

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 最近ツイッターで知って戦慄を覚えた・・・というと大げさなのかもしれないが、なぜ台風災害のときに、しばしば「風雨のなか田畑の様子を見に行って、用水路などにはまって死ぬ人」が必ずといっていいほど出てくるのだろうかという、長年ずっと思っていた疑問の答えのひとつが(ここ)で紹介されていた。

 それによると、台風や大雨のときは、自分のところの田畑に排水されないように「見張る」というのが必要で、結局「見張りに来なかった人の田畑に向けて、みんなが水を逃がそうとする」という事情があるというのだ。もちろんいろんな地域があってそれは一概には言えないのだろうけど、でもおそらくそれは実態として大いにありえるのだろうし、人間の真実がそこにある気がする。そしてそれは「防災」なんかとは無関係の秩序なのである。そのことを知らずに私はいままで「なんでこんな危ない日に外へ出るのか?」とばかり思っていて、大地とともに生きている人たちのリアルな切実さにまったく思い至っていなかったことを痛感した。

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 あまりコーヒーにたいしてこだわりがないのだが、カフェでの注文時だったり、ファミレスのドリンクバーに「カプチーノ」があると、ついそのボタンを押してしまう。3年前にイタリアを旅したときに、ジェノバの古い建物の最上階にあった家族経営の宿に一泊したのだが、主人のオヤジさんが朝食を自ら準備してくれて、飲み物を何にするかを聞いてくる段階になって・・・カプチーノ? ・・・カプチーノ? カプチーノッ!!と、まるで

「もうオマエはカプチーノでいいよなっ!?」

と言わんばかりの勢いで、一方的にカプチーノを入れて持ってきた。それ以来「カプチーノ」という言葉に触れるたびにあのオヤジさんのまくしたてるような勢いを想起しては、憧憬の念を込めつつカプチーノを頼まないといけない気分になるのだった。

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▲「カプチーノ事件」の食堂。ジェノバまた行きたい。
そういえば吉田戦車の『伝染るんです』のなかに、男子学生が中華料理店に入ったら何も頼んでないのにチャーハンが置かれて「だってお客さんチャーハン顔だもん!」って言われて納得してパクパク食べる、っていう漫画があったが、なんとなくそのノリに近い感触。

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2018.03.18

おはぎのあらたな想い出

最近のあれこれ。

遠位型ミオパチーという難病支援のチャリティーコンサート「Suite Night Classic」に友人K氏ご夫妻とともに参加。かれこれ通算で33回目の実施で、まる10年続けている。そしてこれからも続くのだろうと思う。この難病をめぐる深刻な状況をシェアしつつ、そして僕らができることは日々を楽しく過ごそうという意欲を失わないことだという話になり、音楽を楽しみ、終わったあとの会場カフェで宇治川の流れの速さを目で楽しみつつ、主催の林くんとお母様がそれぞれに作り合ってきたおはぎをおいしくいただく。これからの人生でおはぎを食べるたびに想い出す光景がまたひとつ増えた。

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この日のトークでも触れられていたが、先日スティーブン・ホーキング博士が亡くなった。そのニュースの直後ツイッターで「ディスカバリーチャンネル」が書いていた、生前のホーキング博士の言葉にグッときた。「今度、失敗をして誰かに文句を言われたら教えてあげてください、『宇宙が完璧なら人類は生まれなかったんだ』とね」

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このあいだはロフトプラスワンWESTにて「『日本のZINEについて知ってることすべて』刊行記念トーク:関西アンダーグラウンド編」、こちらはナセルホフ氏と参加。本では伝え切れていなかったとされる関西独自のZINE文化の系譜について、その一端を垣間見せていただく。本当に「垣間」なのかもしれないけど、自分も生きていた時代とはいえ、どうしても捉え切れていない「80年代の空気感」をお裾分けしていただいた感じ。いろいろなものが何回転もして今に至っていると思うわけだが、果たして自分たちはこんな時代において何を残せていけるのだろうかと、わりと真剣に考えさせられた。

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前からあったのだろうけど、最近「明治屋」ではじめて知ってジャケ買いしたお菓子、「HOPJES」というオランダのコーヒーキャンディ。外観からはまったくコーヒーの匂いがしないだけに、なおさらこれはデザインの妙味が光る。

ラドマーカー コーヒーキャンディー 90g 原産国:オランダ

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2017.04.23

大阪・難波でクラフトビールが楽しめるお店「Craft Beer GULP」

この春に訪れたお店で、もう一軒紹介したいお店が。

14年ぐらい前に出会ったJくんが、独立して店長となった「Craft Beer GULP」。

クラフトビールの専門店。大阪ミナミ・難波駅から本当にすぐ近くにある。

Jくんと同窓の、「2011/2012 ロンドン年越し企画」のメンツでお邪魔した。

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普段はビールを飲まないのだけど、いろいろと自分の飲みやすそうなビールをJくんがリコメンドしてくれて、確かにすごくフィットする味わいだった(名前メモるの忘れた)。そうか、クラフトビールってすごく美味いのかと、当たり前のことを知る(笑)。
ビールが苦手だと思い込んでいた自分が、市販のよくある缶ビールと「たまたましっくりこなかった」だけかもしれない、と思った。なにより「クラフト」って言葉に弱いからなー。

料理もすごくビールにあう美味しさで、とくにソーセージが絶品だった。

とにかく場所がすごく駅に近いので、難波で飲みたい人はぜひここへー! とオススメしたいです。
フェイスブックページは(こちら)!

Gulp

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2017.04.17

フランスの地方料理と移民料理(時々、旅する朝食)の ビストロ「ベルヴィル」が素敵なお店でした(そしてシェフはアトレティコ・マドリーのファンとのこと)

このあいだ、ひょんなことから(きっかけは、『ぱんとたまねぎ』のハヤシさん経由)長らく私の書いているものを愛読してくださっているK氏にお誘いを受け、京都市役所の北側の路地にある雑居ビルに赴いた。
や、正確にはビストロのレストランである。でも見た目は雑居ビルのそれなのである。
しかし上にあがると、それはそれはよく出来たインテリアに、グッとくる色合いの壁紙が印象的なお店があったのだ。

「フランスの地方料理と移民料理 ベルヴィル」と、「タイ料理&ベトナム料理 トルビアック」。この二つのお店(というか、ビルのなかの独立したそれぞれの部屋)が、中央の厨房を挟んで同時に存在しているという、不思議な佇まい。

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今回はベルヴィルのほうでお食事をいただいた。いかにもなフランス料理ではなく、あくまで移民の人々の生活感のなかで生まれてきた料理が提供されている。

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丁寧にじっくりと創られていく珠玉の料理の数々。じっくり味わい、ゆっくり語らい、珍しいビールなどを飲みつつ。

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普段あまりビールは飲まないのだけど、あまりに珍しいのとラベルのデザインが良かったので、フルーティーなベルギーのビールを堪能。出されるコップのレトロ感とかたまらない。

もうひとつ隣の部屋も、鮮烈な配色が印象的でオシャレ。

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12月にオープンしたばかりとのことで、文字通りの隠れ家的なお店。K氏のおかげでとても良いお店を教えていただく。

ホームページは(こちら)。

以前から、ブルーグレーの壁の色の室内にすごく憧れがあって、まさにこのベルヴィルがそんな感じ。すごく落ち着く場所。


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2016.12.26

乾物屋スモール(大阪・高槻)に行ってみよう

以前も紹介した『スロウダウン』というフリーペーパーをつくっていた大学時代の後輩のまぁこ嬢が、旦那さんとともに高槻に古民家を買い取り、そこを改造して乾物屋「スモール」を10月にオープンさせた。
出来上がる直前、1日だけ自分もお店の壁の漆喰塗りを手伝わせてもらった。「こんなシロートが漆喰塗って大丈夫ですか」と思ったが、やってみると楽しくて、こうしていろんな人の手でDIY的にお店が出来上がることが面白くもあった。

オープン直後に訪れた写真がこちら。

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『スロウダウン』のなかでも、食べ物を大切にこだわって作っているさまざまな生産者の人への詳細なインタビューやレポートが書かれているが、そうしたつながりのなかで出会ってきた人々との関わりがこんどはお店の形になって、こうして我々が実際に購入できる場を作ったのであった。

お店のホームページは(こちら)。

そしてお店の場所が確かに分かりにくい。
ホームページではJR高槻駅からのバス利用の行き方が紹介されている。
JR高槻駅北乗り場②塚脇・下の口行きに乗車し、「塚脇」下車。約15分。
 バス停を降りたら、道路を反対側に渡って、バスの進行方向と逆にしばらく歩く。
 田んぼを左側に見ながら、その田んぼが終わったところを左折。
 右手に小さな坂道(服部連塚の表示があるところ)をしばらく登っていく。
 服部連塚の矢印の方(右折)に進み、つき当たりの白い家のところを左折。
 右手の角の家がスモールです。
 ぐるっと回ると入り口があります。

とのことで、「服部連塚」というのは小さい古墳のこと(こちら)。
そこで私なりにグーグルマップで文字を追加した地図はこちら。

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(クリックしたら大きくなります)

で、当初は私はここよりもちょっと西側の路地に迷い込んだのだが、かなり独特の面白い雰囲気をただよわせているエリアだったので、むしろ「さんざん迷ったほうが面白いぞ!」とオススメしたい気分であった。

営業時間11:00-18:00
日・祝・月 定休とのこと。

いろんなワークショップやイベントも実施されているので、自分もいつかここで何かやってみたい。

ここを訪れるお客さんには、まさに雰囲気はスモールだけど志のおおきい、ポジティブなエネルギーに満ちたまぁこ嬢と、食の安全やいろんなお話を楽しんで欲しいと思う!


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